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by nicoxz

グリーンランド問題で米欧亀裂深刻化、ダボス会議の焦点に

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はじめに

2026年1月、スイス・ダボスで開催されている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が、米欧対立の舞台となっています。焦点はトランプ米大統領が野心を示すデンマーク自治領グリーンランドの取得問題です。

欧州首脳らは相次いでトランプ政権を批判し、特にフランスのマクロン大統領は「帝国主義の再来」とまで言及しました。この対立は西側諸国の結束を揺るがし、国際秩序や世界経済に大きな影響を与える可能性があります。

本記事では、グリーンランド問題の背景から、ダボス会議での各国首脳の発言、そして今後の展望まで詳しく解説します。

グリーンランド問題の背景

トランプ大統領のグリーンランド取得構想

トランプ大統領のグリーンランド取得構想は、第1次政権時の2018年に端を発しています。当初は「最優先事項ではない」とされていましたが、対中強硬派の政策担当者らがこの構想を膨らませ、今や「絶対に必要」な重要戦略として位置づけられるようになりました。

グリーンランドはデンマークの自治領であり、面積は約216万平方キロメートルと世界最大の島です。人口は約5万6千人と少ないものの、その戦略的価値は計り知れません。

なぜグリーンランドなのか

トランプ政権がグリーンランドにこだわる理由は主に2つあります。

第一に、安全保障上の重要性です。グリーンランドは北極圏に位置し、米国本土の北方防衛において極めて重要な地政学的位置にあります。実際、米軍は1951年からグリーンランドのチューレ空軍基地を運用しており、北極圏における早期警戒システムの要となっています。

第二に、資源の豊富さです。グリーンランドにはレアアース(希土類)をはじめとする貴重な鉱物資源が眠っているとされています。中国がレアアース市場を支配する中、米国にとってグリーンランドは資源安全保障の観点からも魅力的な存在です。

経済的圧力の行使

トランプ大統領は2026年1月17日、グリーンランド問題でデンマークを支持する欧州8カ国(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、イギリス、オランダ、フィンランド)に対し、2月1日から10%、6月1日からは25%の追加関税を課すと発表しました。

これは、領土問題に関税という経済的手段を用いるという、前例のない手法です。

ダボス会議での欧州首脳の反発

マクロン大統領の痛烈な批判

ダボス会議で最も激しくトランプ政権を批判したのは、フランスのマクロン大統領でした。

マクロン大統領は1月20日の演説で、「関税が領土主権に対する圧力として使用されることは到底受け入れがたい」と述べました。さらに「トランプ政権は最大限の譲歩を要求し、公然とヨーロッパを弱体化させ、従属させようとしている」と批判しました。

また、「この世界において安定が必要だと信じている。私たちは威圧よりも敬意を、残忍さよりも法の支配を選ぶ」と述べ、米国との対決姿勢を鮮明にしました。

EU委員長も強い姿勢

ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長もダボス会議で演説し、「米国は仲間だし同盟国だ。一方では、戦略的にアプローチする必要がある。グリーンランドは、交渉不可である」と明言しました。

EU首脳としても、グリーンランド問題では一歩も引かない姿勢を示したのです。

デンマークの断固たる拒否

当事国であるデンマークの反発は当然ながら最も強いものでした。フレデリクセン首相は「米国に対し、極めて明確に言う必要がある。米国には、デンマーク王国を構成する3カ国のいずれをも併合する権利はない」との声明を発表しました。

また、デンマークの元首相でNATO事務総長を務めたアナス・フォー・ラスムセン氏は、「グリーンランドの人々は米国人になりたいとは思っていない。グリーンランドは売り物ではない」と明言しています。

トランプ大統領の演説と「武力行使しない」発言

ダボスでの演説内容

トランプ大統領は1月21日、ダボス会議で演説を行いました。6年ぶりの対面出席となった今回、グリーンランド問題について自らの立場を説明しました。

「この巨大で防備の整っていない島は、実際には北米大陸の一部であり、西半球の北の国境に位置している。それは我々の領土だ。したがって、グリーンランドは米国の核心的な国家安全保障上の利益である」と主張しました。

武力行使の否定

注目されたのは、武力行使を明確に否定した点です。トランプ大統領は「我々は過度な力を使えば止められないだろうが、私はそうしない」「力を使う必要はない。力を使いたくない。力は使わない」と明言しました。

これまでトランプ大統領は武力行使の可能性を否定してこなかったため、この発言は一定の緊張緩和につながると見られています。

デンマークの反応

デンマークのラルス・ロッケ・ラスムセン外相は、トランプ大統領が武力行使を否定したことを「ポジティブ」と評価しつつも、「それで問題が解決するわけではない。演説後に明らかなのは、大統領の野心が変わっていないということだ」と指摘しました。

G7首脳会議をめぐる動き

マクロン大統領のG7提案

マクロン大統領はトランプ大統領に私的なテキストメッセージを送り、「グリーンランドについて、あなたが今やっていることだけは理解できない。22日午後にパリでG7の会合を設定できる」と提案していました。

しかし、トランプ大統領はこの私的なメッセージを自身のSNSで公開するという異例の対応を取りました。外交上の慣例を無視した行動であり、米仏関係の緊張を物語っています。

G7の結束に亀裂

今回のダボス会議にはG7のうち6カ国のリーダーが集まりましたが、グリーンランド問題をめぐるG7首脳会議の開催は実現しませんでした。同盟国間でありながら、この問題での意見の相違は埋めがたいものとなっています。

注意点・展望

同盟関係への影響

グリーンランド問題は、単なる領土問題にとどまらない重要な意味を持っています。トランプ政権の強硬姿勢は、NATO同盟国との信頼関係を損なうリスクがあります。

実際、デンマークを含む欧州8カ国は対抗措置としてグリーンランドに少数の部隊を派遣して軍事演習を実施しました。これは同盟国間では異例の動きであり、米欧関係の深刻さを示しています。

経済への波及

トランプ政権による関税措置が実施されれば、米欧間の貿易に大きな影響が出ることは避けられません。すでに金融市場ではこの対立を嫌気して、欧州通貨や株式市場に動揺が見られています。

今後の見通し

武力行使を否定したことで、最悪のシナリオは回避されたと見られますが、経済的圧力は続く見込みです。2月1日の関税発動期限に向けて、水面下での交渉が続くと予想されます。

グリーンランド自治政府や住民の意向も重要です。独立志向が高まる中で、デンマークでも米国でもない「第三の選択肢」を模索する動きもあります。

まとめ

トランプ米大統領のグリーンランド取得構想は、ダボス会議を舞台に米欧関係の深刻な亀裂を露呈させました。マクロン仏大統領をはじめとする欧州首脳らは「帝国主義の再来」として強く反発し、G7首脳会議の開催も実現しませんでした。

トランプ大統領は武力行使を否定しましたが、関税による経済的圧力は継続する姿勢です。この問題は西側諸国の結束、ひいては国際秩序のあり方に大きな影響を与える可能性があります。

今後の展開を注視する必要がありますが、グリーンランド問題が短期間で解決する見込みは薄く、米欧関係は当面、緊張状態が続くことが予想されます。

参考資料:

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