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by nicoxz

円安が日本経済を蝕む、経済学者の74%が問題視

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はじめに

2026年は年初から円安と長期金利の上昇が日本の金融市場を揺らしています。1ドル=150円台後半の円安が続く中、長期金利は約27年ぶりの高水準に達しました。日本経済研究センターと日本経済新聞が共同で実施する学者向け調査「エコノミクスパネル」では、現在の円安が日本経済にとって「マイナス」だとの回答が過半を占めました。

かつては「円安は輸出企業に有利」とされてきましたが、現在は輸入物価の上昇によるインフレの加速、住宅価格の高騰、そして人材の海外流出まで懸念されています。この記事では、円安が日本経済に及ぼす多面的な影響と今後の見通しについて解説します。

円安と長期金利上昇の現状

金利が上がっても円安が止まらない異常事態

通常、金利が上昇すれば通貨は買われます。しかし、2026年1月の日本では長期金利が2.185%と27年ぶりの高水準に達しているにもかかわらず、円ドルレートは158円台まで円安が進行しました。「金利上昇→通貨高」という教科書的なロジックが通用しない状況です。

超長期債にも金利上昇圧力がかかっており、20年債利回りは一時3.25%、30年債利回りは一時3.585%に達しています。日銀は2025年12月に政策金利を0.75%に引き上げましたが、円安の流れを止めるには至っていません。

財政不安が円安を招く構図

第一生命経済研究所の熊野英生氏は、日本のインフレリスクや財政不安が、日米金利差の縮小効果を上回って円安圧力として作用していると指摘しています。高市政権の積極的な財政出動が潜在的なインフレ圧力となり、通貨価値の減価につながっているとの見方です。

補正予算が17兆円規模になると報じられた際には長期金利が上昇するなど、財政拡大と金利上昇の連動が市場で意識されています。みずほ銀行の唐鎌大輔氏は、「ドル安下での円安」という珍しい現象が新常態になるかどうか、2026年が見極めの年になると述べています。

円安がもたらす構造的な問題

住宅価格の高騰

円安は住宅価格の上昇にも影響を与えています。建築資材の多くを輸入に頼る日本では、円安が建築コストの上昇に直結します。ウクライナ情勢に加え、円安による輸入コストの増大が複合的に作用し、建築資材価格は高止まりが続いています。

東京23区の新築マンション平均価格はすでに1億円を超えています。円安によって日本の不動産が海外投資家にとって割安になったことで、外国人投資家の購入が増加しています。2025年1〜6月に東京23区の新築マンションを海外居住者が取得した割合は3.5%、都心6区に限ると7.5%に達しています。

結果として、都心マンションの購入には世帯年収2,000万〜3,000万円が必要とされ、一般的な共働き世帯では手が届かない水準にまで高騰しています。

人材の海外流出

円安と低賃金の「二重苦」は、日本からの人材流出を加速させています。海外永住者の数は過去最高の55万7,000人を超え、20年連続で増加しています。10年前と比べて14万人以上増えました。

日本の最低賃金は平均1,004円で、米国やオーストラリアの約半額です。平均年収もG7の中で最下位に位置しています。テクノロジーや金融、バイオテクノロジーなどの分野では、より良い待遇を求めて海外に目を向ける人が増えています。

さらに、外国人労働者の「日本離れ」も進んでいます。マイナビグローバルの2025年調査では、日本で働きたくない理由として「円安」が35.5%、「給料が低い」が26.3%を占めています。賃金水準の高いオーストラリアやカナダ、韓国、台湾に人材が流れる傾向が強まっています。

輸入物価の上昇とインフレ

円安の最も直接的な影響は、輸入物価の上昇を通じたインフレの加速です。エネルギーや食料品の多くを輸入に頼る日本にとって、円安は生活コストの上昇に直結します。中小企業は輸入コストの高騰を価格に転嫁しにくく、利益率の悪化と賃金の伸び悩みにつながっています。

注意点・展望

円安収束の3つの条件

円安が収束に向かうためには、主に3つの条件が必要とされています。第一に、米国経済が減速して金利が低下すること。第二に、日銀が継続的な利上げを実施すること。第三に、日本政府の財政運営に対する市場の不安が和らぐことです。

日銀の中立金利は1.5〜2.0%と推定されており、現在の0.75%からさらに3〜5回の利上げが必要になる可能性があります。ただし、急激な利上げは景気への悪影響が懸念されるため、日銀は慎重な姿勢を続けるとみられています。

2026年の為替見通し

みずほリサーチ&テクノロジーズは、2026年前半は1ドル=150円台前半を中心に推移し、年後半にかけて150円台後半に円安が進むと予想しています。リスクシナリオとして、米国のインフレ再燃による利上げ観測の高まりや、日本の財政に対する懸念の一段の強まりが挙げられています。

元日銀理事の門間一夫氏は、2026年の消費者物価上昇率は2%程度に落ち着き、実質賃金はプラス0.5%程度になるとの見通しを示しています。ただし、トランプ関税や日中関係の悪化、円相場の急落などの下振れリスクも残っています。

まとめ

経済学者の74%が問題視するように、現在の円安は日本経済にとってマイナス面が大きくなっています。かつての「円安=輸出に有利」という構図は、輸入物価の上昇、住宅価格の高騰、人材の海外流出といった構造的な問題に取って代わられています。

金利上昇にもかかわらず円安が止まらないという異常事態は、日本の財政に対する市場の不信感を映し出しています。円安の是正には金融政策だけでなく、財政運営の信頼回復と、国際的な賃金競争力の向上が不可欠です。2026年は、円安がもたらす構造変化に日本がどう対応するかが問われる年になるでしょう。

参考資料:

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