円相場が一時152円台に上昇、日米協調介入への警戒広がる
はじめに
2026年1月27日の外国為替市場で、対ドルの円相場が一時1ドル=152円台に上昇しました。152円台をつけるのは2025年11月7日以来、約3カ月ぶりのことです。
この円高進行の背景には、同日オンラインで開催されたG7(主要7カ国)財務相会合後の片山さつき財務相の発言がありました。「米当局と緊密に連携しながら適切な対応をとる」との発言が、日米協調介入への警戒感を高め、円買いにつながったと見られています。
本記事では、円相場上昇の背景、日米為替当局の動向、そして今後の為替相場の見通しについて解説します。
2026年1月の為替相場の動き
急激な円高の進行
2026年1月の為替市場は、円高方向への急激な動きが特徴的でした。1月23日の日銀金融政策決定会合後、植田和男総裁の会見を受けてドル円は一時159円台まで円安が進行していました。しかし、その後は急速に円高へと反転し、数営業日で6円近い円高が進行しました。
27日には152円台にまで円が上昇し、前週と比較して大幅な円高水準となりました。この急速な動きは、市場参加者に為替介入への警戒感を強く意識させる結果となりました。
G7財務相会合後の片山財務相発言
27日にオンラインで開催されたG7財務相会合の後、記者団の取材に応じた片山さつき財務相は「必要に応じて米当局と緊密に連携しながら、適切な対応をとっていく」と発言しました。
この「米当局と緊密に連携」という言葉が、日米協調による為替介入の可能性を市場に意識させました。日本単独の介入ではなく、米国との協調介入となれば、その効果は大幅に高まるとの見方が広がり、投機的な円売りポジションの巻き戻しが加速したと考えられます。
日米為替当局の動向
米国によるレートチェックの衝撃
1月23日には、ニューヨーク連邦準備銀行が主要銀行に対し、参考となる為替レートの提示を求める「レートチェック」を実施したとの報道がありました。レートチェックとは、中央銀行が市場介入に先立って為替レートの水準を確認する行為であり、介入の前触れと受け止められることがあります。
日本の通貨当局によるレートチェックは過去にも行われており、市場にとっては想定内でした。しかし、米国の当局がレートチェックを実施したことは市場にとって「サプライズ」であり、円高への反応が大きくなったとされています。
日米協調介入の歴史と意義
自力での円安阻止が困難となり、米国の協力を得て日米協調ドル売り介入が実現したのは1998年6月のことでした。当時は大手金融機関の経営破綻が相次ぎ、日本の経済危機への懸念が広がる中、日本単独の円買い介入では円安に歯止めがかからない状況でした。
今回、日米協調介入の可能性が浮上した背景には、日本単独での円安阻止が困難になってきた現状があると指摘されています。また、1月26日に実施予定の衆議院選挙を前に、円の急落を回避したいという政治的な思惑も影響している可能性があります。
協調介入の効果
分析によると、日米政府が協調すれば為替介入の効果は日本単独の場合の倍以上になるとされています。1月23日前後の動きを見ると、実際の介入規模は数千億円程度と見られ、2024年に実施された数兆円単位の介入と比較するとき わめて小規模でした。
しかし、その効果は2営業日でドル円を6円近く押し下げるなど非常に大きなものでした。これは米当局によるレートチェックが「ドル離れ」の動きを加速させたためと分析されています。
G7における為替政策の枠組み
G7為替コミットメント
G7では為替に関して、2017年5月のコミットメントが重要な基準となっています。このコミットメントでは以下の点が確認されています。
- 為替レートは市場において決定されること
- 為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得る
- 競争力のために為替レートを目標にはしない
このコミットメントの下では、各国が競争的な通貨切り下げを行うことは認められませんが、「過度の変動や無秩序な動き」に対しては対応の余地が残されています。日本政府は、投機的な動きによる急激な円安を「過度の変動」として介入の正当性を主張してきました。
2026年1月のG7財務相会合
2026年1月11〜12日には、米国ワシントンでG7財務相会合が開催されました。この会合では主にレアアース(希土類)のサプライチェーンについて協議されましたが、為替に関しても従来のコミットメントが再確認されたと見られています。
ベッセント米財務長官は、日本の為替介入に一定の理解を示しつつも、円安是正には日本銀行の金融政策正常化の継続がより重要だとの立場を示しているとされています。
円安から円高への転換の背景
片山財務相の円安けん制発言
片山財務相は就任以来、繰り返し円安をけん制する発言を行ってきました。2026年1月14日には「投機的な動きを含めて行き過ぎた動きに対しては、あらゆる手段を排除せずに適切な対応をとる」と述べ、為替相場について「ファンダメンタルズを反映して安定に戻ってもらわないと困る」と発言しています。
また、為替介入について「当然考えられる」と明言するなど、従来の財務大臣と比較して踏み込んだ発言が目立っています。こうした姿勢が市場に対する強い牽制となり、投機的な円売りに歯止めをかける効果を発揮しています。
日米金利差と投機的円売り
足元のドル円は、日米金利差を踏まえるとドル高・円安方向に乖離していると指摘されています。この背景には、拡張的な財政政策と日銀の緩やかな利上げペースを材料とする投機的な円売りが影響していると推測されています。
さらなる円安の進行は、輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力を高めるため、物価高対策を重視する政権にとってリスク要因となります。こうした政治経済的な背景が、為替介入への積極姿勢につながっていると考えられます。
今後の為替相場見通し
専門家の予測
野村證券は2026年末のドル円レートを140円と予想しています。日米金利差の縮小を見込んでおり、円高方向への動きを想定しています。
三井住友DSアセットマネジメントは、ドル円が155円を中心とするレンジ推移から、徐々に150円を中心とするレンジ推移へ移行すると予想しています。年末の着地水準は150円と設定しています。
一方、IG証券は年前半はドル安・円安トレンドが予想され、160円や24年高値の161.95円水準を上限に高値圏での推移が続く可能性を指摘しています。年後半については、利上げを容認すれば円高へ振れ、140円を視野に入れる展開も予想されています。
注目すべきポイント
今後のドル円相場を見る上で注目すべきポイントは以下の通りです。
- 日銀の金融政策: 追加利上げのペースと時期
- 米国の金融政策: FRBの利下げ動向
- 日米当局の姿勢: 協調介入への発展可能性
- 政治動向: 衆議院選挙後の政策運営
特にドル円が160円に再接近する場合、日米政府による協調介入の可能性が引き続き意識されることになります。
まとめ
2026年1月27日の円相場152円台への上昇は、G7財務相会合後の片山財務相の発言が直接的なきっかけとなりました。「米当局と緊密に連携」という言葉が、日米協調介入への警戒感を高め、投機的な円売りポジションの巻き戻しを促しました。
背景には、1月23日に報じられた米国によるレートチェック実施の影響もあります。日本単独ではなく米国との協調姿勢が示されたことで、為替介入の効果への期待が高まり、円高圧力が強まりました。
今後の為替相場は、日米の金融政策や当局の介入姿勢に左右される展開が続くと見られます。専門家の多くは年後半にかけて円高方向への動きを予想していますが、政治経済情勢の変化によっては異なるシナリオも考えられます。投資家は引き続き当局発言や金融政策の動向に注意を払う必要があります。
参考資料:
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