円急伸の背景にある「レートチェック」とは?日米連携の真意を解説
はじめに
2026年1月26日早朝、東京外国為替市場で円相場が対ドルで154円台に急伸しました。この水準は約1カ月半ぶりとなります。急激な円高の背景には、米金融当局による「レートチェック」の実施報道があります。
レートチェックとは、為替介入の前段階として行われる市場への照会行為です。今回は米国側も動いたとされることから、日米が連携して過度な円安を抑制しようとしているとの見方が広がっています。
本記事では、レートチェックの仕組みから日米連携の意味、そして今後の為替相場の見通しまで詳しく解説します。
レートチェックとは何か
為替介入の準備段階として機能
レートチェックとは、過度な円安・円高局面において、中央銀行が主要な銀行等の金融機関に対して為替取引の相場水準を照会する行為です。通常の為替介入よりも前の段階で行われ、市場へのけん制効果があります。
具体的には、市場参加者に実際の為替介入と同様の注文を出した上で現在の売値や買値を提示させます。その後「ナッシング(注文をキャンセルする)」と伝えることで、実際の取引は行わずに照会のみを行います。この「ナッシング」の代わりに外貨を買ったり売ったりする意思を伝えれば、そこで為替介入が成立します。
市場への心理的効果
レートチェックが入ると、市場では介入警戒感が一気に高まります。トレーダーたちは「当局がこの水準を意識している」と認識し、持ち高を調整する動きが広がりやすくなります。
市場参加者は通貨当局の「防衛ライン」を探るため、照会が入った際の相場水準に特に注目します。今回のケースでは159円台でレートチェックが実施されたとされており、160円が重要な防衛ラインとして意識されています。
今回の動きの経緯と特徴
23日から24日にかけての急変動
2026年1月23日のニューヨーク外国為替市場で、円は対ドルで急騰しました。ドル円相場は159円10銭台から155円60銭近辺まで、わずか数時間で約3円50銭も円高方向に動きました。これは昨年8月以来の大幅な変動となります。
市場関係者によると、ニューヨーク連銀が主要銀行に対し、参考となる為替レートの提示を求めるレートチェックを実施したとのことです。ロイター通信は関係筋の話として、米ニューヨーク連銀が23日正午(現地時間)ごろにレートチェックを実施したと報じています。
日米連携の可能性
今回の動きが注目される理由は、米国当局が動いた点にあります。従来、円安局面での為替介入は日本の財務省・日銀による単独介入が中心でした。市場では「日本の単独介入は効果が限定的」との見方もありました。
しかし今回は、日米が連携して160円に迫る過度な円安は容認しないという明確なラインを引いたとの分析があります。これまでの口先介入や単独介入とは異なる、より強いメッセージとして市場は受け止めています。
日米の為替政策スタンス
片山財務大臣の発言
片山財務大臣は、レートチェック実施の有無について直接の回答を避けています。一方で、1月13日のベッセント米財務長官との会談を受けて、「最近の行き過ぎたファンダメンタルズを反映していない動きについては行き過ぎだという認識を共有した」と発言しています。
また、昨年9月の日米財務相共同声明の合意の中には対応策として「為替介入が含まれている」ことも改めて指摘しました。協調介入の可能性について問われると、「あらゆる手段は排除されないものと考えている」と述べており、日米連携の姿勢を明確にしています。
トランプ政権の姿勢
現在のトランプ政権は、貿易相手国の通貨安に対して否定的な立場をとっています。このため、バイデン前政権と比較して、日米協調介入が実現する可能性は高まっているとの見方があります。
ただし、過去の米国が参加した協調介入は「危機対応」に伴うケースが中心でした。現時点の円安水準が「危機」と見なされるかどうかが、協調介入実現の鍵となりそうです。
為替介入の仕組みと歴史
財務省と日銀の役割分担
日本の為替介入は、財務大臣の権限において実施されます。日本銀行は、財務大臣の代理人として、その指示に基づいて為替介入の実務を遂行します。介入に必要な資金は、財務省所管の外国為替資金特別会計(外為特会)から拠出されます。
為替介入のプロセスは一般的に以下の段階を経てエスカレートします。まず「口先介入」として「過度な変動は望ましくない」等の発言による牽制が行われます。次に「レートチェック」として日銀が銀行に現在の為替レートを照会します。そして最後に「実介入」として、実際に巨額の資金を市場に投入します。
過去の大規模介入事例
2022年9月には、1ドル145円台まで円安が進行したことを受け、政府・日銀は24年ぶりとなるドル売り・円買い介入に踏み切りました。9月から10月にかけて断続的に行われ、介入総額は約9.1兆円に達しました。
さらに2024年4月には、1ドル160円台と34年ぶりの円安水準まで下落したことを受けて、総額約9.7兆円という過去最大規模の介入が実施されました。
今後の見通しと注意点
160円が重要な節目に
今回のレートチェック観測が159円台で流れたことを考えると、ドル円が心理的節目の160円を突破するハードルは一段と高まったと言えます。日米が連携して円安をけん制する姿勢を示したことで、投機的な円売りには歯止めがかかりやすい状況です。
ただし、為替介入によって為替の水準や方向性を持続的に変えることは難しいとされています。為替介入は「時間を買う政策」であり、介入で時間を稼いでいる間に経済ファンダメンタルズが変わるのを待つ、というのが本質です。
日銀の金融政策が鍵
米財務省のベッセント長官は、日本の為替介入に一定の理解を示しつつも、円安是正には日本銀行の金融政策正常化の継続がより重要だとみている可能性があります。1月の日銀会合では政策金利が0.75%程度に据え置かれ、植田総裁は具体的な利上げ時期への言及を避けました。
今後の円相場は、日銀の追加利上げのタイミングや、米国の利下げ動向に大きく左右されそうです。日米金利差が縮小に向かえば、円高への転換が進む可能性があります。
まとめ
今回の円急伸は、米国当局がレートチェックを実施したとの報道をきっかけに、日米連携で円安を抑制する姿勢が示されたことによるものです。レートチェックは為替介入の前段階として機能し、市場に強いけん制効果を与えます。
160円という防衛ラインが意識される中、投機的な円売りには歯止めがかかりやすい状況となっています。ただし、持続的な円安是正には日銀の金融政策正常化が重要とされており、今後の金融政策動向から目が離せません。
為替相場は様々な要因で変動するため、過度な円安・円高いずれの方向にも注意が必要です。
参考資料:
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