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by nicoxz

円急騰153円台、米レートチェックが示す日米連携

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はじめに

2026年1月26日、東京外国為替市場で円相場が一時1ドル=153円台まで上昇し、約2カ月半ぶりの円高水準となりました。この急激な円高の背景には、前週末23日に米金融当局が「レートチェック」を実施したとの観測があります。

レートチェックとは、中央銀行が市場の為替レートを確認する行為で、為替介入の前段階とされています。通常、日本の財務省・日銀が単独で行うものですが、今回は米国当局が実施したという点で極めて異例です。これは日米両国が連携して過度な円安を抑制する姿勢を示したと市場では受け止められています。

本記事では、今回のレートチェックの詳細と背景、そして今後の為替市場への影響について解説します。

レートチェックとは何か

為替介入の前触れ

レートチェックとは、中央銀行が主要銀行に対して現在の為替レートを確認する行為です。単にレートを聞くだけの行為ですが、市場参加者にとっては重要なシグナルとなります。なぜなら、実際の為替介入を行う前に、当局がどの程度のレートで介入する用意があるかを市場に示唆する効果があるためです。

日本では財務省が日銀を通じてレートチェックを行いますが、これまで米国当局が円に関してレートチェックを行うことは極めて稀でした。ニューヨーク連邦準備銀行のウェブサイトによると、米国が為替市場に介入したのは1996年以降でわずか3回のみで、直近では2011年の東日本大震災後にG7と協調して円売り介入を行ったのが最後です。

今回のレートチェックの経緯

ロイター通信によると、1月23日(米東部時間)にニューヨーク連銀が主要ディーラーに対してドル円レートを確認したとのことです。この情報が市場に広まると、ドル売り・円買いが加速し、円は一時155円60銭近辺まで急騰しました。これは8月以来最大の一日の変動幅となりました。

その後も円買い圧力は続き、26日には153円台後半まで上昇しています。2日間で約3%の円高となり、2カ月以上ぶりの高値水準です。

米国がレートチェックに踏み切った背景

日本国債利回り上昇の波及懸念

今回、米財務省のベッセント長官がレートチェックを決断した背景には、日本の長期金利上昇が米国債市場に波及することへの懸念があるとされています。

1月20日、日本の30年国債など超長期債の利回りが急上昇し、価格が急落しました。この動きが米国債利回りの上昇を招き、米10年債利回りは4.2%を突破して一時4.3%台に達しました。ベッセント長官は「日本からのスピルオーバー(波及)効果を分離することは難しい」と懸念を表明しています。

円安が進めば日銀は金融引き締めを加速させる可能性があり、それが日本の金利上昇、ひいては米国金利への上昇圧力となります。米国としても過度な円安を放置することは、自国の金利環境に悪影響を及ぼすリスクがあったのです。

日米の政策協調

1月14日に行われた日米財務相会談では、ベッセント長官は日本の為替介入に一定の理解を示しつつも、円安是正には日銀の金融政策正常化の継続がより重要だとの認識を示したとされています。

日本の片山財務相は為替市場を「緊張感を持って注視」し、日米共同声明に沿って対応すると述べています。木原官房長官はレートチェックについて「回答を控える」としながらも、米国と連携して適切に対応すると発言しました。

市場への影響と今後の展望

円売りポジションの巻き戻し

今回のレートチェック観測を受け、市場では円売りポジションの巻き戻しが進んでいます。これまで日本の財務省による単独介入は市場に軽視される傾向がありましたが、米国当局が動いた点が決定的に異なります。

野村證券のG10為替戦略責任者ドミニク・バニング氏は「財務省とニューヨーク連銀の両方がドル円の上値を抑えようとしているなら、より強力な原動力となる」と指摘しています。

介入の可能性

BMOキャピタル・マーケッツのビパン・ライ氏は「過去のレートチェックが必ずしも介入が差し迫っていることを意味したわけではない」としながらも、「ニューヨーク連銀が確認しているという事実は、ドル円への介入が一方的なものにはならないことを示唆している」と述べています。

ただし、大規模な日米協調介入については懐疑的な見方もあります。ドル安を誘導すれば米国内のインフレを刺激する可能性があるためです。現時点では、実弾介入よりも口先介入やレートチェックによる牽制で円安を抑制する戦略が取られているとみられます。

当面の相場見通し

三井住友DSアセットマネジメントは、今回の円急騰がレートチェックによるものであれば今後為替介入が行われる公算が大きいと分析しています。また、日米当局が歩調を合わせたとの思惑から、当面は円安方向への動きは抑制されると見込まれています。

野村證券は、介入単独で円相場のトレンドを変えることは難しいとしながらも、目先はドル円が上値を試す動きは沈静化しやすいと予想しています。

注意点と今後の見通し

日銀の金融政策が鍵

為替介入はあくまで一時的な効果しかなく、中長期的なトレンドを決めるのは日米の金融政策です。日銀が金融政策正常化を継続し、利上げを進めれば、日米金利差の縮小により円高圧力が強まります。逆に、日銀が慎重姿勢を維持すれば、再び円安に振れる可能性もあります。

1月23日の日銀金融政策決定会合後、植田総裁は追加利上げの可能性を示唆しました。これも円高を後押しする要因となっています。

米国の経済指標にも注目

米国側では、FOMCの金融政策決定や経済指標の動向が為替に影響します。米国の利下げペースが加速すれば、日米金利差は縮小し円高要因となります。一方、インフレが再燃すれば利下げが遅れ、ドル高圧力が強まる可能性があります。

政治的要因

トランプ政権の通商政策も為替に影響を与える可能性があります。日本を含む各国への関税政策の動向次第では、為替市場に新たな不確実性をもたらす可能性があります。

まとめ

今回の米当局によるレートチェックは、日米が連携して過度な円安を容認しないという明確なメッセージを市場に送ったものと解釈されています。これまで日本単独の為替介入は効果が限定的とされてきましたが、米国が動いたことで市場の警戒感は一気に高まりました。

153円台という約2カ月半ぶりの円高水準は、こうした日米連携への期待を反映しています。今後は日銀の金融政策や米国の経済動向を注視しながら、為替相場の方向性を見極める必要があります。個人投資家や企業の為替リスク管理においても、当面は変動性の高い相場が続く可能性を念頭に置いた対応が求められます。

参考資料:

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