Research

Research

by nicoxz

横浜港にデータセンター集結、洋上型と発電所併設型

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

横浜港の臨海エリアで、データセンターの整備計画が相次いでいます。日本郵船は海の上にデータセンターを浮かべる「洋上浮体型」を、JERAは火力発電所の構内にデータセンターを併設する「発電所併設型」を計画しています。

AI需要の爆発的な拡大に伴い、日本のデータセンター市場は急成長を続けています。しかし、データセンターは大量の電力を消費する施設であり、脱炭素との両立が大きな課題です。本記事では、横浜港で進む2つの革新的なデータセンター計画の詳細と、その背景にある課題を解説します。

日本郵船の洋上浮体型データセンター

大さん橋に浮かぶグリーンデータセンター

2025年3月、日本郵船、NTTファシリティーズ、ユーラスエナジーホールディングス、三菱UFJ銀行、横浜市の5者が、洋上浮体型グリーンデータセンターの実証実験に関する覚書を締結しました。

実証実験の舞台は、横浜港大さん橋ふ頭に設置されている幅25メートル、長さ80メートルのミニフロート(浮体式係船施設)です。もともと災害対策として設置されたこの浮体の上に、コンテナ型データセンターと太陽光発電設備、蓄電池設備を搭載します。再生可能エネルギー100%で稼働するデータセンターの実現を目指しています。

洋上型が注目される理由

洋上浮体型データセンターには、陸上型にはない複数のメリットがあります。まず、海水を活用した冷却が可能で、データセンターの大きなコスト要因である空調エネルギーを大幅に削減できます。

また、陸上のデータセンター建設で深刻化している用地不足や建設業者の確保難、工期の長期化といった課題を回避できる点も魅力です。将来的には洋上風力発電所の近くに設置することで、送電網を介さずに再生可能エネルギーを直接利用する構想も描かれています。

実証実験の建設工事は2025年秋に開始される計画で、都市部の大消費地に近い場所で低遅延のサービスを提供しつつ、脱炭素も実現するという新たなモデルの確立が期待されています。

JERAの火力発電所内データセンター

横浜火力発電所の敷地を活用

2025年10月、JERAと横浜市は、横浜港臨港地区に立地するJERA火力発電所構内でのデータセンター事業に関する覚書を締結しました。対象となるのは、横浜火力発電所(LNG火力、総出力3,016メガワット)と南横浜火力発電所(総出力1,150メガワット)の2施設です。

発電所構内にデータセンターを設置する最大のメリットは、長距離の送電網を新たに整備する必要がない点です。発電所から直接電力を供給する「ワット・ビット連携」と呼ばれるこの手法により、送電ロスの削減やインフラ整備コストの圧縮が可能になります。

さくらインターネットとの協業

JERAは2025年6月、国内大手クラウド事業者のさくらインターネットとも、発電所構内のデータセンター新設に向けた基本合意書を締結しています。LNG火力発電で電力をまかない、AI活用の需要に応えることを目指しています。

注目すべきは、LNGの温度がマイナス162度という極低温である点を活かした冷熱供給の構想です。データセンターの冷却にLNGの冷熱を利用できれば、冷却コストの大幅削減と省エネルギーの両立が期待できます。具体的なデータセンターの建設時期や場所については検討中ですが、東京湾周辺が候補地として挙がっています。

データセンター急増と電力消費の課題

3倍に膨らむ電力需要

日本のデータセンターサービス市場は2022年に約2兆円規模でしたが、2027年には約4兆2,000億円に達すると予測されています。AI処理の急増が主な要因で、電力消費量も2024年の19テラワット時から2034年には57~66テラワット時へと約3倍に増加する見通しです。

世界的にも状況は同様で、IEA(国際エネルギー機関)の試算では、世界のデータセンターの電力消費量が2026年には2022年比で2倍以上に増加するとされています。ガートナーも2025年の電力需要が前年比16%増加し、2030年までに倍増すると予測しています。

脱炭素と安定供給の両立

データセンター事業者の多くはRE100などの国際イニシアティブに参画しており、再生可能エネルギーによる電力調達を志向しています。しかし、データセンターに求められる電力は「安定性」「大規模」「脱炭素」の3要件を同時に満たす必要があり、太陽光発電だけでは発電時間帯が昼間に限定されるため、安定供給の観点で課題が残ります。

政府も対策に乗り出しており、経済産業省は脱炭素電力を100%使用する工場やデータセンターへの投資を最大で半額補助する制度を創設し、2026年度から5年間で2,100億円を充てることを決定しました。

注意点・今後の展望

横浜港のデータセンター計画は、いずれも革新的なアプローチですが、実用化にはいくつかの課題があります。洋上型は海上環境での機器の耐久性や塩害対策、メンテナンスの難しさが懸念されます。発電所併設型は、LNG火力に依存する限り脱炭素の目標との矛盾を指摘される可能性があります。

横浜市にとっても、臨海エリアの土地利用をめぐる調整が重要です。データセンターの誘致は経済効果が期待できる一方、港湾物流機能の維持や周辺住民との共生にも配慮が求められます。

今後、洋上風力発電との連携や水素・アンモニア発電への転換が進めば、横浜港は脱炭素と経済成長を両立するデータセンター集積地のモデルケースとなる可能性を秘めています。

まとめ

横浜港では、日本郵船による洋上浮体型とJERAによる火力発電所併設型という、2つの革新的なデータセンター計画が同時に進行しています。いずれも大消費地に近い立地を活かしつつ、従来のデータセンター建設が直面する用地不足や送電インフラの課題に新たな解決策を提示するものです。

AI時代のデータセンター需要の急増に対応しながら、脱炭素をどう両立するかは日本全体の課題です。横浜港の取り組みは、その答えを探る先進的な実験として注目に値します。

参考資料:

関連記事

最新ニュース