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by nicoxz

赤ちゃん用品の値上げが止まらない背景と家計への影響

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はじめに

赤ちゃんを育てるために欠かせない紙おむつや粉ミルクの価格が、じわじわと上がり続けています。日本全体の消費者物価指数(CPI)が前年同月比2%台で推移する中、赤ちゃん関連の品目はその2倍以上の上昇率を記録しています。

この背景には、原材料費や物流コストの高騰だけでなく、少子化による市場縮小という構造的な要因があります。需要が減る中でメーカーが事業を維持するために値上げせざるを得ないという、子育て世帯にとって厳しい循環が生まれています。

本記事では、赤ちゃん用品の価格上昇の実態とその原因、そして家計を守るための具体的な対策について解説します。

「赤ちゃん物価指数」が示す厳しい現実

消費者物価の2倍以上の上昇率

浜銀総合研究所の遠藤裕基氏が独自に作成した「赤ちゃん物価指数」は、総務省が調べる消費者物価指数の中から、粉ミルク・紙おむつ・乳児服・人形・玩具自動車の5品目を抽出して算出したものです。この指数は、消費者物価指数の総合(生鮮食品を除く)が3.2%上昇していた時期に、6.9%もの上昇を記録しました。

品目別に見ると、特に粉ミルクの上昇幅が大きく、17.9ポイントもの上昇を示しています。紙おむつについても、1パックあたりの価格が3割近く上がったとの報告があり、子育て世帯の家計に大きな打撃を与えています。

児童手当の「実質目減り」

遠藤氏は「児童手当はあるが、物価に連動して増えないので実質目減りしている」と指摘しています。政府は児童手当の拡充を進めていますが、赤ちゃん用品の価格上昇がそれを上回るペースで進んでいるため、支援の効果が十分に発揮されていない状況です。

2025年12月時点のCPIでは、赤ちゃん用品関連の指数は17%の上昇を記録しており、一般的な物価上昇率との乖離はさらに拡大しています。

値上げの連鎖:メーカー各社の動き

森永乳業:育児用ミルクを5%以上値上げ

森永乳業は2025年5月1日出荷分から、育児用ミルク「はぐくみ」など15品目の価格改定を実施しました。「はぐくみ 小缶」の希望小売価格は税別1,100円から1,156円に引き上げられ、大缶については出荷価格を5%引き上げています。

値上げの理由として、同社は原材料・包装資材の価格上昇、エネルギーコストの高騰に加え、人手不足の深刻化による人件費や物流費の増大を挙げています。

エリエール(大王製紙):紙おむつ「グーン」も値上げ

大王製紙が展開する紙おむつブランド「グーン」も、2025年4月1日から一部商品の価格改定を実施しました。こちらも原材料費・燃料費の高騰と、輸送コスト・人件費の上昇が理由です。

紙おむつの原料であるパルプの国際価格は高止まりが続いており、石油由来の素材を使う吸収体部分のコストも上昇しています。こうした複合的なコスト増が、製品価格に転嫁されている形です。

値上げは一過性ではない構造的問題

重要なのは、これらの値上げが一時的なものではなく、構造的な問題に根ざしている点です。通常、コスト上昇による値上げは原材料価格が落ち着けば一段落しますが、赤ちゃん用品の場合は少子化による需要減という別の要因が加わっています。

少子化が生む「値上げの悪循環」

出生数66万人台:想定より16年早い少子化

2025年の日本の出生数は約66万5,000人と推計されており、過去最少を更新する見通しです。国立社会保障・人口問題研究所が2023年に公表した将来推計では、出生数が66万人台になるのは2041年と想定されていました。少子化は想定よりおよそ16年も前倒しで進行しています。

2025年上半期(1〜6月)の出生数は33万9,280人で、前年同期比3.1%減。4年連続で上半期40万人を下回り、1969年以降の統計で最少を記録しました。

市場縮小がメーカーを追い詰める

出生数の急減は、紙おむつや粉ミルクの市場規模を直接的に縮小させます。メーカーにとっては、生産設備や研究開発、品質管理にかかる固定費は需要が減っても大きく変わりません。販売量が減れば1個あたりのコストは上がり、価格に転嫁せざるを得なくなります。

これは「少子化→需要減→値上げ→子育てコスト増→さらなる少子化」という悪循環を生む可能性があります。子育ての経済的負担が増すことで、出産をためらう世帯が増えるという指摘もあります。

グローバル市場との対比

一方、世界のベビーケア製品市場は2024年に約2,398億ドルと評価され、2032年には4,194億ドルに成長すると予測されています。特にアジア太平洋地域が32.82%のシェアで最大市場です。日本のメーカーにとって、海外市場への展開が国内の需要減を補う戦略として重要性を増しています。

注意点・展望

2026年以降の見通し

帝国データバンクの調査によると、2026年の食品値上げ品目数は2025年比で3割減の約1.5万品目になる見通しです。しかし、赤ちゃん用品については少子化による市場縮小とコスト上昇の構造的な問題が続くため、価格の高止まりが予想されます。

自治体の支援策に注目

一部の自治体では、おむつ定期便やカタログギフト、子育て支援ポイントなどの独自支援策を導入しています。子育て世帯は、居住地域の自治体が提供する支援制度を積極的に確認することが重要です。

プライベートブランドや海外製品の活用

大手メーカーの製品が値上がりする中、ドラッグストアやスーパーのプライベートブランド(PB)おむつは、比較的手頃な価格を維持しているケースがあります。品質も向上しており、選択肢の一つとして検討する価値があります。

まとめ

赤ちゃん用品の価格上昇は、原材料費やエネルギーコストの高騰と少子化による需要減が重なった構造的な問題です。「赤ちゃん物価指数」が示すように、子育て世帯の負担は一般的な物価上昇以上のペースで増加しています。

対策としては、自治体の子育て支援制度の活用、PB商品の検討、まとめ買いやポイント制度の利用などが考えられます。また、政府には児童手当を物価連動型にするなど、実質的な支援の充実が求められています。少子化対策と子育て支援は表裏一体であり、子育てコストの軽減は最も重要な政策課題の一つです。

参考資料:

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