銀行リアル店舗が商業施設へ移行する理由と狙い

by nicoxz

はじめに

2026年、銀行業界で大きな変化が起きています。長年続いてきた店舗削減の流れが転換し、商業施設への新規出店が始まりました。駅前の一等地ではなく、ショッピングモールが新たな主戦場となっています。

この記事では、なぜ銀行がリアル店舗戦略を見直しているのか、三菱UFJ銀行の新業態「エムットスクエア」の特徴、そしてデジタルバンクとの連携について詳しく解説します。金利上昇時代における銀行の預金獲得競争の最前線をお伝えします。

銀行店舗戦略の大転換

店舗削減から新規出店へ

低金利時代、銀行は採算改善のために店舗削減を進めてきました。三菱UFJ銀行は2017年度比で店舗数を約4割削減し、メガバンク3行はいずれも400店以下にまで縮小しました。

しかし、2024年以降の金融政策の転換により状況は一変しています。日銀の利上げを受け、預金を集めることの収益性が向上しました。銀行にとって、リアル店舗は再び重要な顧客接点として注目されています。

駅前より商業施設が有利な理由

従来、銀行店舗といえば駅前の一等地が定番でした。しかし、新たな出店先として選ばれているのはショッピングモールです。この背景には、顧客の行動パターンの変化があります。

商業施設には、買い物や食事のついでに立ち寄れるという利点があります。特に休日に家族で訪れる層にアプローチできる点が大きなメリットです。駅前店舗が平日のビジネスパーソン中心だったのに対し、商業施設は幅広い客層にリーチできます。

三菱UFJ銀行の新業態「エムットスクエア」

20年ぶりの新規出店

三菱UFJ銀行は2025年9月、約20年ぶりとなる新規店舗「エムットスクエア高輪」を開業しました。ニュウマン高輪の2階に位置し、従来の銀行店舗とは全く異なるコンセプトを打ち出しています。

最大の特徴は営業時間です。11時から20時まで営業し、土日祝日も開いています。平日9時から15時という従来の銀行窓口の常識を覆す営業スタイルで、仕事帰りや休日にも利用できる利便性を提供しています。

大阪・箕面への展開

2号店は大阪府箕面市の商業施設「みのおキューズモール」に開設予定です。箕面萱野は2024年に北大阪急行が延伸開業し、新たな商業エリアとして発展しています。

三菱UFJ銀行は今後、全国の個人向け店舗のうち3分の1から4分の1程度を「エムットスクエア」型に再構築する計画を掲げています。愛知県内での出店も検討されており、全国展開が加速する見通しです。

従来店舗との違い

エムットスクエアは、従来の銀行窓口とは異なる機能に特化しています。資産運用の相談や住宅ローンの相談など、専門的なアドバイスを求める顧客に対応する場として位置づけられています。

一方、振込や現金の入出金といった定型的な取引は、ATMやデジタルチャネルへの誘導が進んでいます。店舗は「付加価値を提供する場」としての役割に集中する方針です。

デジタルバンクとの融合戦略

2026年度後半に新デジタルバンク開業

三菱UFJフィナンシャル・グループは、2026年度後半を目処に新たなデジタルバンクを開業する予定です。「エムット」というブランド名で、従来のネット専業銀行とは異なるコンセプトを打ち出しています。

このデジタルバンクは、三菱UFJ銀行の店舗網との連携を前提としています。オンラインで口座開設や取引ができる利便性と、必要なときには店舗で専門家に相談できる安心感を両立させる狙いがあります。

デジタルとリアルの「いいとこ取り」

MUFGが目指すのは、デジタルとリアルの「いいとこ取り」です。日常的な取引はスマートフォンで完結し、資産形成や住宅購入といったライフイベントでは対面で相談できる体制を構築しています。

国内約420店舗に約1万7000人の営業員を配置しており、このリアルチャネルの強みをデジタルサービスと組み合わせることで、ネット専業銀行との差別化を図っています。

金利上昇時代の預金獲得競争

メガバンクの金利引き上げ

日銀の利上げを受け、メガバンク3行は2026年2月から普通預金金利を0.2%から0.3%に引き上げると発表しました。定期預金の金利も上昇傾向にあり、預金の魅力が高まっています。

金利上昇は、銀行にとって預金を集めるインセンティブを高めます。預金が増えれば貸出に回せる資金も増え、収益拡大につながります。この「金利のある世界」への回帰が、店舗戦略見直しの背景にあります。

地方銀行・ネット銀行との競争

預金獲得競争は、メガバンクだけでなく地方銀行やネット銀行も巻き込んで激化しています。静岡銀行はインターネット支店を通じて全国から預金を集める施策を展開し、ネット銀行は高金利の定期預金で顧客を獲得しています。

この競争環境の中で、メガバンクは店舗網を活かした対面サービスで差別化を図る戦略を取っています。デジタルだけでは提供できない付加価値を、リアル店舗で実現しようとしています。

他行の動向

三井住友銀行「Olive LOUNGE」

三井住友銀行は2024年から新業態「Olive LOUNGE」を展開しています。すでに8店舗を開設しており、デジタルサービス「Olive」と連動した店舗運営を行っています。

みずほ銀行「みずほのアトリエ」

みずほ銀行も新形態の小型店舗「みずほのアトリエ」を展開しています。限られたスペースで効率的に顧客対応を行う仕組みを構築しています。

注意点と今後の展望

顧客にとってのメリット・デメリット

商業施設への移転は、休日や夜間に利用できるメリットがある一方で、従来の最寄り店舗がなくなる可能性もあります。特に高齢者など、デジタルサービスに不慣れな層への配慮が課題となります。

店舗再編の今後

銀行の店舗戦略は、完全なデジタル化ではなく、デジタルとリアルの最適な組み合わせを模索する方向に進んでいます。2026年以降も、顧客ニーズの変化に合わせた店舗再編が続くとみられます。

まとめ

銀行のリアル店舗戦略は、大きな転換点を迎えています。低金利時代の店舗削減から、金利上昇を見据えた商業施設への新規出店へと方向性が変わりました。

三菱UFJ銀行の「エムットスクエア」に代表される新業態は、従来の銀行窓口の常識を覆すものです。デジタルバンクとの連携により、オンラインとオフラインの両方で顧客にアプローチする戦略が進んでいます。銀行サービスの選択肢が広がる中、自分に合った利用方法を検討することをおすすめします。

参考資料:

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