ボーイング7年ぶり黒字、事業売却益が押し上げ
はじめに
米航空機大手ボーイングが2025年12月期の通期決算を発表し、最終損益が22億3800万ドル(約3400億円)の黒字となりました。前期は118億2900万ドルの巨額赤字を計上しており、黒字転換は2018年以来、実に7年ぶりのことです。
ただし、この黒字の主因はソフトウェア事業の売却益であり、主力の民間機部門と防衛部門は依然として赤字が続いています。本記事では、ボーイングの決算内容を詳しく分析し、同社の回復がどこまで本物なのかを検証します。
決算の全体像:売却益が支えた黒字
売上高は34%増の894億ドル
2025年12月期の売上高は前期比34%増の894億6300万ドルとなりました。これは2018年以来の高水準です。第4四半期だけを見ると、売上高は239億ドルで前年同期比57%の大幅増を記録しています。
売上高の伸びを支えたのは、民間機の納入回復です。年間の納入数は600機に達し、これも2018年以来の最高水準です。第4四半期だけで160機を納入しており、前年同期の57機から大きく回復しました。
デジタル航空事業の売却益96億ドル
決算上の最大のポイントは、デジタル航空ソリューション(Digital Aviation Solutions)事業の売却です。ボーイングはこの事業をプライベートエクイティ大手のトーマ・ブラボーに売却し、96億ドルの売却益を計上しました。
GAAPベースのEPS(1株当たり利益)は10.23ドルですが、この売却益だけでEPSを11.83ドル押し上げています。つまり、売却益を除けば実質的にはまだ赤字という状況です。売却益を除いた年間の営業損失は50億ドル超に上ります。
主力部門の実態:赤字からの脱却は道半ば
民間機部門:売上拡大も71億ドルの営業赤字
民間機部門(Commercial Airplanes)の売上高は415億ドルを記録しました。737 MAXの納入再開が進み、787ドリームライナーの生産も安定してきています。
しかし、営業損失は71億ドルに上ります。生産の立ち上げコストや品質管理体制の強化に伴う費用が重くのしかかっています。2024年のストライキの影響も残っており、生産効率の改善には時間がかかる見通しです。
防衛部門:赤字は大幅縮小
防衛・宇宙・セキュリティ部門(Defense, Space & Security)の売上高は272億ドルでした。営業損失は1億2800万ドルで、前期の54億ドルの赤字から大幅に改善しています。
ただし、KC-46A空中給油機プログラムでの追加費用計上が続いており、完全な黒字化には至っていません。固定価格契約による損失が収益を圧迫する構造は依然として残っています。
キャッシュフローと財務体質
営業キャッシュフローがプラスに転換
営業キャッシュフローは11億ドルのプラスとなり、前期の121億ドルのマイナスから大幅に改善しました。しかし、設備投資を差し引いたフリーキャッシュフローはマイナス19億ドルで、依然として現金を消費している状態です。
540億ドルの有利子負債
有利子負債は541億ドルに達しています。2024年には増資や社債発行で資金を調達しており、債務の圧縮は今後の重要課題です。ジェイ・マラベ新CFOは「2026年にフリーキャッシュフローを10億〜30億ドルのプラスにする」との見通しを示しています。
注意点・展望
回復の実態を見極める必要
7年ぶりの黒字という見出しは前向きな印象を与えますが、その実態は事業売却という一時的な要因に支えられたものです。主力の民間機部門で安定的な利益を出せるようになるまでには、さらなる生産効率の改善が必要です。
ケリー・オートバーグCEOは「2025年に回復に向けた大きな進展を遂げ、今後の勢いを維持する基盤を築いた」と述べています。737 MAXの生産レートの引き上げと、品質問題の再発防止が今後の鍵を握ります。
競合エアバスとの差
欧州のエアバスは安定した受注と納入を続けており、ボーイングとの差は依然として大きい状況です。ボーイングが競争力を取り戻すためには、次世代機の開発と既存機の安定生産の両立が求められます。
まとめ
ボーイングの2025年12月期決算は、7年ぶりの最終黒字という節目を迎えました。しかし、黒字の主因はデジタル航空事業の売却益であり、主力の民間機・防衛部門は依然として赤字です。
納入数の回復やキャッシュフローの改善など、前向きな兆候は確かに見られます。2026年は売却益に頼らない本業での収益改善が問われる年となります。投資家や業界関係者は、生産レートの引き上げと品質管理の安定を注視すべきです。
参考資料:
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