中国が国産要求を強化、レアアース対日規制で外資に岐路

by nicoxz

はじめに

2026年1月、中国政府は政府調達における国産品優遇ルールを施行しました。IT分野ではパソコンに加え、セキュリティの観点からプリンターにも中国製半導体チップの搭載を求める動きが出ています。さらに、軍民両用品の対日輸出規制強化も発表され、レアアース関連製品も対象に含まれる可能性が指摘されています。

これらの動きは、中国ビジネスに依存してきた日本を含む外資企業に対し、根本的な戦略見直しを迫るものです。「ルビコン川」を渡るか、中国市場から撤退するか—厳しい選択を迫られる局面が到来しています。

本記事では、中国の国産化政策の現状、対日レアアース規制の影響、そして外資企業が取るべき対応について解説します。

中国の国産化政策の現状

政府調達からの外資排除

中国政府は、政府調達におけるIT製品の国産化を段階的に推進してきました。2024年3月には、中央政府機関のパソコン調達において、CPUやOSが「安全かつ信頼性が高い」という要件を満たす製品の調達を義務付けています。これは事実上、米インテルなど外国企業の製品を排除する措置です。

2026年1月に施行された新ルールでは、この国産品優遇がさらに拡大されました。プリンターや複合機にも中国製半導体の搭載を求める動きが出ており、日本の複合機メーカーの間で警戒感が高まっています。

半導体製造装置の「50%ルール」

さらに衝撃的なのは、半導体製造装置の国産化ルールです。中国政府は国内の半導体メーカーに対し、新たな生産能力を構築する際に「少なくとも50%の製造装置を国産で賄うこと」を事実上義務付けています。

この50%は「最低ライン」とされ、最終目標は100%国産化です。この基準を満たさない申請は通常却下されるため、外国の製造装置メーカーは中国市場でのシェア縮小を余儀なくされる可能性があります。

「中国製造2025」の本格化

これらの動きは、2015年に発表された「中国製造2025」の目標達成に向けた加速といえます。中国政府は半導体の自給率を2030年までに75%に引き上げる目標を掲げており、7兆円規模の国家ファンドを通じて国産化を後押ししています。

外国企業にとって、中国市場でのビジネス継続は、技術移転や現地開発の要求を受け入れることと引き換えになりつつあります。

対日レアアース輸出規制の強化

規制発表の内容

2026年1月6日、中国政府は軍民両用(デュアルユース)品の対日輸出規制を強化すると発表しました。商務部は「日本の軍事ユーザー、軍事用途、および日本の軍事力向上に資するすべての最終ユーザーへの輸出を禁止する」と表明しています。

この規制にはレアアース関連製品も含まれる可能性が指摘されており、一部の中・重希土類について日本への輸出許可審査の厳格化が検討されています。

規制の背景と政治的意図

中国商務部は、高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁を理由に挙げています。「日本の指導者が台湾問題に関して公然と誤った発言を行い、台湾海峡への武力介入の可能性を示唆した」として、「一つの中国」原則への違反を非難しています。

これは明らかに「経済的威圧」であり、政治的な対立を経済手段で圧力に転換する中国の常套手段といえます。

日本への潜在的影響

レアアースは世界生産量の約7割を中国が占めており、レアアース磁石に至っては8割超が中国産です。日本の中国依存度は2010年の尖閣問題時の90%から60%程度に低下したものの、依然として高い水準です。

特に深刻なのは、EV用モーターに使用されるネオジム磁石の補助材料です。ジスプロシウムやテルビウムなどの重希土類は、ほぼ100%を中国に依存しています。

野村総合研究所の試算によると、レアアース輸出規制が3カ月続いた場合の損失額は約6,600億円、年間GDPを0.11%押し下げる計算です。1年間続けば損失額は2.6兆円、GDP押し下げ効果は0.43%に達します。

外資企業が直面する選択

「ルビコン川」を渡るか

中国で事業を継続するには、国産化要求に応じることが避けられなくなりつつあります。これは技術移転や知的財産の提供、中国企業との合弁事業の受け入れを意味する場合があります。

一方で、こうした要求に応じることは、自社の競争優位を損なうリスクや、米国などからの制裁対象になるリスクを伴います。米中対立が深まる中、どちらかの陣営を選ばざるを得ない状況が生まれています。

日本企業の対応

三井金属の岡部正人・機能材料事業本部長は「輸出規制がどこまで厳しくなるか、今の段階では見通しを言いづらい」と慎重な姿勢を示しています。

中国日本商会は「中国の日本企業は引き続き関連法令に従って対応する」としつつ、「必要に応じて関連法令の遵守にあたり注意すべき事項の説明を日中両政府に求める」とコメント。活動に支障が出る場合は商務省への申し入れを行う方針です。

サプライチェーンの多元化

長期的には、中国依存からの脱却が不可欠です。レアアースについては、オーストラリア、米国、カナダなどでの採掘プロジェクトが進行中であり、リサイクル技術の開発も進んでいます。

しかし、中国が長年かけて構築した精錬・加工のサプライチェーンを短期間で代替することは困難です。少なくとも5〜10年のスパンで、段階的な依存度低下を図る必要があります。

2010年の教訓と今後の展望

尖閣危機の再来か

2010年の尖閣諸島沖での漁船衝突事件後、中国は日本へのレアアース輸出を事実上停止し、大きな衝撃を与えました。当時の経験から、日本は中国依存度の低下に取り組んできましたが、完全な脱却には至っていません。

今回の規制強化は、当時の「レアアース・ショック」の再来となる可能性があります。ただし、2010年と比べれば代替調達先の開拓は進んでおり、影響は一定程度軽減される可能性があります。

経済安全保障の重要性

今回の事態は、経済安全保障の重要性を改めて浮き彫りにしています。高市政権は重点17分野に経済安全保障関連を位置づけており、サプライチェーンの強靭化は政策の柱となっています。

単なるコスト最適化ではなく、地政学リスクを織り込んだ調達戦略の構築が、企業にとって喫緊の課題です。

まとめ

中国の国産化要求とレアアース対日規制強化は、外資企業に「中国ビジネスの根本的見直し」を迫っています。政府調達からの外資排除、半導体製造装置の50%国産化ルール、そして軍民両用品の対日輸出規制—これらは一連の流れとして捉える必要があります。

日本企業にとって、中国依存度の低下とサプライチェーンの多元化は待ったなしの課題です。レアアース磁石を含む重要材料の代替調達先確保、リサイクル技術の実用化、そして経済安全保障を前提とした事業戦略の再構築が求められています。

「ルビコン川」を渡るか否か—各企業は重大な経営判断を迫られる局面に立っています。

参考資料:

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