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by nicoxz

中国レアアース株が急騰、米中対立で高まる供給リスクと投資妙味

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はじめに

中国のレアアース(希土類)関連株が高騰を続けています。業界最大手の中国北方稀土集団高科技の時価総額は、2024年末と比較して2.4倍にまで膨らみました。

背景にあるのは、米中対立の激化とそれに伴う供給懸念です。中国は世界のレアアース生産の約7割、精錬においては9割以上のシェアを握っており、この圧倒的な優位性が投資マネーを引き付けています。

この記事では、レアアースとは何か、なぜ中国株が急騰しているのか、そして日本を含む西側諸国の対応策について解説します。

レアアースとは何か

17種類の希少元素

レアアースとは、レアメタル31鉱種のうち17種類の元素(希土類)の総称です。元素周期表の原子番号57番から71番までのランタノイド15元素に、スカンジウムとイットリウムを加えた元素群を指します。

1794年にスウェーデンで発見された当時は極めて希少な物質と考えられ、「レア(希少な)アース(土類)」と名付けられました。

EVや風力発電に不可欠

レアアースは現代のハイテク産業に欠かせない素材です。特に重要なのがネオジムとジスプロシウムで、これらを使った永久磁石は非常に強力な磁場を発生させます。

電気自動車(EV)の駆動モーターや風力発電の大型タービンには、この高性能磁石が使われています。ネオジム磁石にジスプロシウムを添加することで、高温下でも磁力が低下しにくくなり、EVモーターの耐久性と効率性が確保されます。

その他にも、スマートフォンの液晶画面、光学レンズ、排ガス触媒、蛍光体など、幅広い分野で活用されています。

中国レアアース株急騰の背景

圧倒的な生産シェア

中国のレアアース生産量は2024年に27万トンで、世界全体の約7割を占めています。さらに精錬においては世界全体の91.7%という圧倒的なシェアを誇ります。

特に重要なジスプロシウムやテルビウムといった重希土類は、埋蔵量のほとんどが中国に偏在しています。EVモーターに必須のこれらの元素については、中国依存度がほぼ100%という状況です。

北方稀土の業績急拡大

業界最大手の北方稀土は、2025年上半期(1〜6月)の決算で驚異的な数字を叩き出しました。売上高は188億6,600万元(約3,889億円)と前年同期比45%増加し、純利益は9億3,100万元(約192億円)と前年同期の20倍超に急増しました。

レアアースの市場価格上昇と販売量増加が業績を押し上げました。米中対立による供給懸念が価格上昇の主因となっています。

対米交渉の武器として

中国はレアアースを対米交渉の武器として活用しています。米国による対中半導体規制に対する報復措置として、レアアースの輸出規制で揺さぶりをかける構図が鮮明になっています。

投資家は、この消耗戦においても中国勢の優位が続くと見ており、関連株への資金流入が続いています。

日本への影響

対日輸出規制の強化

中国政府は2026年1月6日、軍民両用(デュアルユース)品の日本向け輸出規制を強化すると発表しました。850以上の品目が規制対象となる可能性があり、レアアース関連製品も含まれるとの指摘があります。

この発表を受けて、1月7日の東京株式市場では関連銘柄が急騰しました。第一稀元素化学工業は前日比26.71%高のストップ高となり、東洋エンジニアリングも一時20%高を記録しました。

日本企業への経済損失

試算によると、レアアース輸出規制が3カ月続いた場合、日本の生産減少額・損失額は約6,600億円程度となります。年間の名目・実質GDPを0.11%押し下げる計算です。

輸出規制が1年間続く事態となれば、損失額は2.6兆円程度に達する可能性があります。

依存度は低下も再び上昇

2012年の尖閣問題時の輸出規制をきっかけに、日本は中国依存度を90%から60%程度にまで低下させました。しかし、近年は再び対中依存度が高まっている状況です。

脱中国依存の取り組み

調達先の多様化

日本企業は中国以外からの調達ルート確保に動いています。JX金属や大手商社がオーストラリア、インド、カザフスタンなどとの連携を強化しています。

JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)を通じた戦略備蓄の拡充も進められています。

代替技術の開発

プロテリアル(旧日立金属)などは、レアアースを使わない技術の開発に注力しています。永久磁石を使用しないモーターや、レアアースフリーの磁石(鉄窒化物、高性能フェライトなど)の研究が進んでいます。

ただし、これらの製品はコスト増、性能低下、装置の大型化といった課題を抱えており、商業化の目処はまだ立っていません。

南鳥島のレアアース開発

東京大学の研究グループが2012年に南鳥島周辺の海底で発見した「レアアース泥」には、世界需要の数百年分に相当する埋蔵量があるとされています。

2026年1月から世界初となる大規模な実証試験がスタートしました。JOGMECやJAMSTECが主導する国家プロジェクトです。ただし、水深6,000メートルという深海にあるため、採掘技術やコストが課題であり、商業化は2028年以降になる見込みです。

投資家が注目すべきポイント

中国株の優位性

当面、中国のレアアース関連企業は、供給懸念による価格上昇と販売量増加の恩恵を受け続ける可能性があります。北方稀土をはじめとする大手企業の業績好調が続くと見られています。

日本の関連銘柄

日本市場では、レアアースを使わない代替技術を持つ企業や、リサイクル技術を持つ企業に注目が集まっています。第一稀元素化学工業は、レアアースを使用しないセラミックス材料の開発に成功しており、存在感を高めています。

リスク要因

ただし、米中間で何らかの合意が成立した場合や、代替技術の実用化が進んだ場合には、レアアース価格が下落する可能性もあります。地政学的リスクに左右される市場であることを認識しておく必要があります。

まとめ

中国レアアース関連株の急騰は、米中対立の激化と中国の圧倒的な供給シェアを反映したものです。北方稀土の時価総額が2.4倍になるなど、投資マネーは中国勢の優位が続くと見ています。

一方で、日本を含む西側諸国は脱中国依存を目指し、調達先の多様化、代替技術の開発、南鳥島でのレアアース開発などを進めています。ただし、いずれも商業化までには時間がかかる見込みです。

レアアースはEVや再生可能エネルギーの普及に不可欠な素材であり、その供給を巡る攻防は今後も続くと予想されます。投資家にとっては、地政学的リスクを見極めながら、中長期的な視点で市場を観察することが重要です。

参考資料:

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