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by nicoxz

2026年4月施行のマンション法改正、決議要件緩和で無関心層のリスクが増大

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はじめに

2026年4月、区分所有法などマンション関連法の大半の規定が施行されます。この改正は、老朽化マンション対策と管理の円滑化を目的としていますが、専門家からは「法律の想定と違う使われ方をされる可能性がある」との懸念の声も出ています。

本記事では、特に注目される決議要件の緩和、利益相反への対応、そして無関心層にとってのリスク増大について詳しく解説します。マンション所有者にとって、今回の法改正は管理組合への参加がこれまで以上に重要になることを意味します。

法改正の主要ポイント

特別決議の要件緩和

今回の改正で最も影響が大きいのが、特別決議の要件変更です。従来は「全区分所有者の3/4以上の賛成」が必要でしたが、改正後は「総会に出席した区分所有者の3/4以上」で可決できるようになります。

この変更により、欠席者や無関心な区分所有者が多い場合でも、参加した人の多数決で重要事項を決定できるようになります。たとえ各マンションの規約に「全区分所有者の3/4以上の賛成が必要」と書かれていても、2026年4月1日以降は法律の定める「出席者ベース」の基準が優先して適用されます。

所在不明者の議決権除外

今回の改正により、裁判所の認定で所在不明者の議決権を分母から除外できるようになります。これにより、総会出席者の「5分の4」で建て替えなど重要な決議も行えるようになります。

この規定は、相続未登記などで所有者が不明になっているマンションの管理停滞を防ぐ目的がありますが、慎重な運用が求められます。

利益相反への対応強化

マンション管理業者が管理組合の管理者を兼ね、工事等の受発注者となる場合、利益相反の懸念があります。改正法では、自己取引等についての区分所有者への事前説明を義務化しました。

マンション管理業者が管理組合の管理者として、自社との間で工事等の受注・発注に関する契約を結ぶ場合、管理業者の利益が高くなる契約を結ぶなど、所有者の利益に反する状態を引き起こす可能性があります。この「利益相反」に対する透明性確保が今回の改正の狙いです。

マンション総会の実態と無関心層の問題

低い実出席率

国土交通省の調査によると、委任状や議決権行使書を含めた総会出席率は平均84%ですが、実際に総会会場に出席している割合は24.6%にすぎません。規模が大きいマンションでは総会へ出向かず委任状や議決権行使書の提出で済ませている人が多く、総戸数が501戸以上では実出席率が14.3%まで下がっています。

さらに深刻なのは、管理規約の変更や大規模工事、管理費改定など重要な議案が上程されても、会場出席率は全体の24%とほぼ変わらないという事実です。重要な議案でも出席率が特に上がらないのです。

無関心層の増加

「めんどくさい」「どうでもいい」などマンションの管理組合に無関心な層が多いマンションも数多くあります。この無関心層の存在は、マンション管理に深刻な影響を与えています。

無関心層が多いと「先送り」「決議できず」→「劣化が進む」といった悪循環に陥りがちで、大規模修繕や設備更新といった長期的な議題に関してもスムーズに決議できません。一方、関心のある住民が多いと、管理費や修繕積立金の使途に対する監視も自然と強まり、理事会や管理会社にも緊張感が生まれます。

高齢化による参加困難

高齢により身体が不自由であることを理由に管理組合運営に距離を置く組合員は多く、子どもと離れて暮らす夫婦や単身世帯の高齢者が増えることで、管理規約に定められた代理人により議決権行使をする組合員もますます少なくなると予測されています。

法改正がもたらす新たなリスク

無関心層への影響

今回の法改正により、総会に参加しない所有者は、自分の意思とは無関係に重要な決定が行われるリスクが高まります。従来は「全区分所有者の3/4」という高いハードルがあったため、無関心層も一定の保護を受けていました。

しかし改正後は、総会に出席した少数の人々だけで、大規模修繕の内容や費用負担、管理会社の変更など、資産価値に直結する重要事項が決定される可能性があります。実出席率が24%程度であれば、全体のわずか18%(24%の3/4)の賛成で特別決議が成立することになります。

利益相反の懸念は解消されたのか

改正法では利益相反について事前説明を義務化しましたが、専門家からは「説明だけでは不十分」との指摘もあります。管理業者が管理者を兼ねる場合、形式的な説明だけで実質的には管理業者に有利な契約が結ばれる可能性は残ります。

特に無関心層が多いマンションでは、事前説明があっても内容を精査する所有者が少なく、結果として管理業者の利益が優先される契約になるリスクがあります。

専門家が指摘する問題点

欠陥住宅全国ネットで幹事長を務める神崎哲弁護士は「区分所有法の改正自体には賛成だが、現在の改正内容ではさらなる混乱を招く恐れがある。改正しないほうがましだ」と話しています。

特に問題視されているのが、損害賠償請求権の扱いです。管理者が請求権の行使を代理する権限が与えられただけでは、旧区分所有者に請求権が帰属したままになるため、管理者が勝訴してもただちに賠償額を受け取ることができない可能性があります。

また、改正法案では別段の意思表示をした旧区分所有者には適用しないとされているため、区分所有者全員のために管理者に統一的な行使ができなくなってしまう懸念も指摘されています。

法改正にどう対応すべきか

総会への積極的参加

今回の法改正により、総会への参加や議決権行使がこれまで以上に重要になります。無関心でいることは、自分の資産に関する重要な決定権を他者に委ねることを意味します。

物理的に総会に出席できない場合でも、委任状や議決権行使書を提出する際には、議案内容をしっかり確認し、自分の意思を反映させることが大切です。特に大規模修繕や管理会社変更など、高額な費用負担を伴う議案については慎重な検討が必要です。

管理規約の見直し

2026年4月1日以降、改正区分所有法はすべてのマンションに自動的に適用されますが、各マンションの管理規約は総会決議で改正する必要があります。

この機会に、自分のマンションの管理規約を見直し、利益相反防止や透明性確保のための独自のルールを設けることも検討すべきでしょう。法律の最低基準を満たすだけでなく、より厳格な運営ルールを設定することで、所有者の利益を守ることができます。

管理組合との関わり方を見直す

高齢化や多忙などで総会に出席できない場合でも、理事会の議事録をチェックしたり、重要な工事の見積もり内容を確認したりするなど、できる範囲で管理組合の活動に関心を持つことが重要です。

また、管理会社や理事会に任せきりにせず、重要な決定については専門家(マンション管理士や弁護士)の意見を求めることも検討すべきです。特に大規模修繕など高額な工事については、複数の業者から見積もりを取るなど、慎重な検討が求められます。

注意点と今後の展望

法律の想定外の使われ方への警戒

法改正の趣旨は、老朽化マンションの管理円滑化と再生促進です。しかし、専門家が懸念するように、決議要件の緩和が一部の利害関係者に都合よく利用される可能性もあります。

特に注意すべきは、デベロッパーや管理会社が主導する総会で、所有者の十分な理解がないまま重要な決定が行われるケースです。出席率が低い総会では、少数の組織的な参加者によって決議が左右される可能性があります。

老朽化マンション問題への対応

全国の集合住宅のストック数は約685.9万戸で、1,500万人超が居住しています。そのうち20%弱にあたる115.6万戸が築40年超の集合住宅という状況であり、老朽化マンション対策は急務です。

法改正により建て替えや大規模修繕の決議がしやすくなることは、老朽化対策として歓迎すべき面もあります。しかし、経済的負担が大きい所有者への配慮や、十分な合意形成プロセスを経ることが重要です。

透明性と説明責任の確保

今後のマンション管理では、決議の透明性と説明責任がより重要になります。理事会や管理会社は、決議の根拠となる情報を所有者に十分に提供し、質問や意見に丁寧に対応する姿勢が求められます。

また、利益相反が疑われる取引については、外部の専門家による審査を受けるなど、客観性を確保する仕組みづくりも必要でしょう。

まとめ

2026年4月施行の区分所有法改正は、マンション管理の円滑化を目指していますが、無関心層にとってはリスクが増大する側面もあります。特別決議の要件が「出席者の3/4」に緩和されることで、総会に参加しない所有者は重要な決定から排除される可能性が高まります。

利益相反への対応は強化されたものの、事前説明だけでは不十分との専門家の指摘もあり、所有者自身が能動的に管理組合の活動に関与することが重要です。総会への参加、議決権の行使、管理規約の見直しなど、自分の資産を守るための行動が求められています。

今回の法改正を機に、マンション所有者一人ひとりが管理への関心を高め、透明性の高い意思決定プロセスを構築することが、健全なマンション管理の鍵となるでしょう。

参考資料:

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