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by nicoxz

デトロイト自動車ショー開幕 EV後退でピックアップとHVが主役に

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はじめに

2026年1月14日、ミシガン州デトロイトで北米国際自動車ショー(通称:デトロイト自動車ショー)が開幕しました。第2次トランプ政権発足後、初めて開催される今回のショーでは、電気自動車(EV)が影を潜め、大型ピックアップトラックやハイブリッド車(HV)が主役となっています。

バイデン前政権のEV普及策が撤回される中、米自動車業界は大きな転換点を迎えています。本記事では、デトロイト自動車ショーの見どころから、トランプ政権のEV政策転換、そして米自動車産業の今後について解説します。

デトロイト自動車ショー2026の概要

開催概要

デトロイト自動車ショーは、ダウンタウンのハンティントン・プレイスで1月14日から25日まで開催されます。一般公開は17日から25日で、14日と15日はメディア・業界向けイベント、16日にはロビン・シックのパフォーマンスを目玉としたチャリティ・プレビューが行われます。

今年は40以上のブランドが出展し、27の新型車と13台のエキゾチック車・クラシック車が展示されます。出展ブランドは昨年より5社増加しました。

主な出展メーカー

企業展示を行うのは、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード、ステランティス、トヨタ、起亜、そして初参加のスバルです。ディーラー経由での展示には、アストンマーティン、アウディ、フェラーリ、ホンダ、ヒュンダイ、メルセデス、フォルクスワーゲンなどが含まれます。

注目の新型車と発表

フォードの新型ブロンコ

フォードは、14日夜にブロンコRTRを発表しました。ネオングリーンのデザインと独自のデカールを施したこのモデルは、オフロード愛好家をターゲットにしています。フォードは今年のショーで唯一、新型車の発表を行うメーカーとなりました。

また、特別仕様の2026年型マスタングや、リフレッシュされたSUV、ピックアップトラック、そしてブロンコのオフロード体験エリアも展示されています。

ステランティスのマッスルカー

ステランティスは、複数のパワートレインで「マッスルカー」の復活をアピールしています。420馬力のダッジ・チャージャーR/T、550馬力のSIXPACKエンジン搭載スキャットパック、670馬力のチャージャー・デイトナなど、ガソリン車と電気自動車の両方でハイパフォーマンスモデルを展示しています。

また、スーパーチャージドHEMI搭載のデュランゴSRTジェイルブレイク、オーバーランディング仕様のクライスラー・パシフィカ・グリズリーピーク・コンセプトなども注目を集めています。

GMの特別仕様車

GMは、シボレー、ビュイック、GMC、キャデラックから約50台の車両を展示しています。目玉は、アメリカ建国250周年を記念した「スターズ・アンド・スティールズ」コレクションの限定版シボレー・シルバラードです。売上の一部は、ファーストレスポンダーを支援する慈善団体に寄付されます。

トヨタの最新ラインナップ

トヨタは26台を展示し、2026年型RAV4小型SUVのアップデートモデルをメインに据えています。カローラファミリーの各モデル、高性能版のGRカローラ、GR86スポーツクーペなども披露されています。

北米カー・オブ・ザ・イヤー

15日には「北米カー/トラック/ユーティリティ・オブ・ザ・イヤー」が発表されました。受賞車両は、カー部門がダッジ・チャージャー、トラック部門がフォード・マーベリック・ロボ、ユーティリティ部門がヒュンダイ・パリセードとなりました。

トランプ政権のEV政策転換

「EVマンデート」の撤回

トランプ大統領は、2025年1月20日の就任初日に「アメリカンエネルギーの解放」と題した大統領令を発令しました。この中で、「EVマンデート」の撤廃と、EVを優遇する「不公平な補助金やその他の政府による市場歪曲」の排除を指示しました。

ただし、バイデン政権の「EVマンデート」は実際には法的拘束力のない目標でした。2021年に設定された「2030年までに新車販売の50%をEVにする」という目標は、努力目標に過ぎませんでした。

CAFE基準の緩和

2025年12月、トランプ政権は企業平均燃費(CAFE)基準の大幅な緩和を発表しました。バイデン政権下では年2%の効率改善が求められていましたが、新基準では2022年のベースラインに戻し、年0.5%の改善のみが求められます。

この緩和により、2027年から2031年までに主要自動車メーカーは350億ドル以上の技術コストを削減できるとされています。GMは87億ドル、フォードとステランティスはそれぞれ50億ドル以上の節約が見込まれています。

一方で、運転者の燃料コストは増加し、2050年までに最大1,850億ドルの追加負担が生じる可能性があるとNHTSAは指摘しています。

カリフォルニア州の排出権限撤回

2025年6月、トランプ大統領は議会審査法に基づく3つの決議に署名し、カリフォルニア州のEV販売義務と独自の排出基準を撤回しました。カリフォルニア州は2026年型以降、各メーカーの新車販売の35%をゼロエミッション車にすることを義務付けていましたが、この基準は廃止されました。

カリフォルニア基準を採用していたコロラド、メリーランド、マサチューセッツ、ニュージャージー、ニューヨーク、ペンシルベニア、ワシントンなど他州にも影響が及んでいます。

税制優遇の廃止

第2次トランプ政権下で、議会はEV購入者への税額控除を廃止しました。また、EV充電器設置に対する税額控除も2026年6月に終了する予定です。インフレ抑制法やインフラ投資雇用法に基づくEV充電インフラへの資金配分も停止されています。

米EV市場の現状

米国市場の停滞

ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスによると、プラグインハイブリッドを含む米国の電動車販売は2025年にわずか1%の成長にとどまりました。純粋なEVの市場シェアは8%弱で、販売台数は123万台と2024年からわずかに減少しています。

これに対し、中国は17%、欧州は33%の成長を記録しています。

自動車メーカーのEV撤退

フォードは先月、電動化関連で195億ドルの損失を計上し、F-150ライトニング・トラックの全電動版の生産を終了しました。GMも60億ドルのEV関連損失を発表し、一部のEVコミットメントを縮小しています。テスラですら、2025年は厳しい年となりました。

専門家の懸念

S&Pグローバル・モビリティのマイケル・ロビネット副社長は、「世界中で市場が進化を続ける中、グローバル舞台でどれだけ競争力を維持できるかが心配だ」と述べています。

元運輸長官のピート・ブティジェッジ氏も、トランプ氏は電気自動車が自動車技術の主流になることを止められないが、「その技術におけるアメリカのリーダーシップを止めることはできる」と指摘しました。

ショーの特色と体験型展示

ハイブリッドとガソリン車へのシフト

今年のショーでは、過去数年とは異なり、自動車メーカーがハイブリッド車とガソリン車を積極的にプロモーションしています。両方のテストトラックがハイブリッドとガソリン車に開放されており、業界のEVからの転換を反映しています。

ショー委員長のトッド・ソット氏は、「ショーは常に消費者レベルで業界に起きていることを反映する」と述べ、「EVの状況が明らかに変化した」と認めています。

体験型アトラクション

今年は体験型展示も充実しています。ブロンコの「ビルト・ワイルド・ライド」体験、脳波でモデルカーを動かす「ニューロメーカー・レーストラック」、ミシガン・オーバーランド・アドベンチャー、超高級車を集めた「ザ・ギャラリー」などが人気を集めています。

今後の展望と注意点

米自動車産業の岐路

トランプ政権のEV政策転換は、短期的には米自動車メーカーのコスト削減につながりますが、長期的な競争力への影響が懸念されています。中国や欧州がEV化を加速する中、米国の出遅れが将来的な市場シェア喪失につながる可能性があります。

消費者への影響

EV税額控除の廃止やCAFE基準の緩和は、消費者の選択肢と燃料コストに影響を与えます。環境意識の高い消費者とコスト重視の消費者の間で、自動車選びの基準が二極化する可能性があります。

まとめ

2026年のデトロイト自動車ショーは、米自動車産業の転換点を象徴するイベントとなっています。トランプ政権のEV政策転換を受け、大型ピックアップトラックやハイブリッド車が再び脚光を浴びる一方、EV開発の遅れがグローバル競争力に与える影響も懸念されています。

ショーは1月25日まで開催され、最新の自動車技術と業界トレンドを体験できます。米自動車産業の今後の方向性を占う上で、注目すべきイベントです。

参考資料:

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