国民民主党が衆院選公約を発表・手取り増の次を提示
はじめに
国民民主党は1月22日、衆院選(1月27日公示、2月8日投開票)の公約を発表しました。昨年の衆院選で掲げた「手取りを増やす」政策が支持され議席を4倍に増やした実績を踏まえ、今回は「『もっと』手取りを増やす」をキャッチフレーズに、社会保険料の負担軽減や住民税・所得税の減税を前面に打ち出しています。
本記事では、国民民主党の公約内容と、これまでの「年収の壁」対策の成果、今後の政策課題について詳しく解説します。
これまでの実績:「年収の壁」対策
103万円から178万円への引き上げ
国民民主党が2024年10月の衆院選で公約に掲げた「年収の壁」の引き上げは、着実に実現に向かっています。2024年12月18日、高市首相と玉木雄一郎代表が会談し、年収の壁を178万円まで引き上げることで正式合意しました。
この合意により、2026年度税制改正大綱に盛り込まれ、2026年・2027年における給与所得者の課税最低限が178万円まで引き上げられることになりました。
約1.85兆円の減税規模
財務省の試算によれば、今回の措置による追加減税規模は年間約6,500億円です。103万円から160万円への引き上げによる減税規模約1.2兆円と合わせると、総額で年間約1兆8,500億円の減税となります。
特に、最大の基礎控除を受けられる対象が年収200万円以下から665万円以下に拡大され、中間層への恩恵が大きくなっています。年収600万円の場合、約3.6万円の減税効果が見込まれます。
議席4倍増の原動力に
「手取りを増やす」政策は有権者の支持を集め、国民民主党は従来の7議席から4倍増の28議席を獲得しました。年収の壁引き上げだけでなく、大学生の年収の壁を103万円から150万円に引き上げたこと、50年以上続いたガソリンの暫定税率廃止の決定なども成果として挙げられています。
衆院選公約「次にチャレンジする3つの壁」
所得制限の撤廃
玉木代表は会見で「103万の壁を178万円まで引き上げるという実績ができたが、基礎控除に所得制限が残っている」と指摘。所得制限を撤廃し、すべての所得層で恩恵を受けられる制度を目指すとしています。
現状では、基礎控除の上乗せ措置は年収665万円以下に限定されており、高所得層には適用されません。この所得制限の撤廃が新たな公約の柱となっています。
住民税控除額の引き上げ
所得税の基礎控除は引き上げられましたが、住民税の課税最低限は低い状態のままです。公約では住民税の控除額を178万円まで引き上げる支援策を掲げています。
住民税の控除が引き上げられなければ、所得税との不整合が生じ、手取り増加の効果が限定的になってしまいます。
社会保険料の「106万円の壁」解消
年収106万円を超えると社会保険への加入義務が生じ、手取りが減少する「106万円の壁」の問題があります。公約では、この壁の解消に向けて助成金を創設するとしています。
2026年10月には社会保険の106万円の壁が制度的に撤廃される予定ですが、手取り減少への対策として助成金制度が必要という立場です。
社会保険料軽減の具体策
中低所得者への給付金制度
玉木代表は「社会保険料負担が非常に重くなっている」と指摘し、特に中低所得者の社会保険料負担を軽減する新たな給付金制度の創設を訴えています。
後期高齢者医療制度の改革
国民民主党は、75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度について、医療費の窓口負担を原則2割にすることで、現役世代の社会保険料を引き下げる方針を示しています。
財源としては、富裕層の資産課税を強化して公費負担を増やすことを提案。75歳以上の自己負担割合を決める際には、年金・就労所得に加え、金融所得と金融資産の保有状況も勘案する「応能負担」を強める考えです。
その他の家計支援策
公約には光熱費の負担軽減も含まれています。「ガス代、電気代、水道代を通年で恒久的に引き下げる」ことを訴えていく方針です。
手取り増加の効果試算
年収別シミュレーション
国民民主党の試算によれば、年収の壁対策による手取り増加は以下の通りです。
- 年収200万円:所得税と住民税の合計が9万1,000円から5,000円に減り、8万6,000円の手取り増
- 年収500万円:13万2,000円の手取り増
これらは現行制度からの変化を示しており、特に低中所得層で大きな恩恵が見込まれます。
財源をめぐる課題
減税規模と財源の整合性
野村総合研究所の分析によれば、国民民主党は社会保険料引き下げの財源として、75歳以上の医療費自己負担(原則1割)の2〜3割への引き上げや、高齢富裕層への資産課税を示しています。
ただし、消費税率5%への引き下げについては、毎年12兆円以上の税収減が見込まれるにもかかわらず、具体的な財源が示されていないとの指摘もあります。
働き控え解消の効果
一部の専門家からは、税制における控除の引き上げだけでは「年収の壁」による働き控えを完全に解消できないとの指摘があります。社会保険の壁が残存する限り、手取り逆転の問題は続くためです。
選挙戦の構図
与野党との距離感
国民民主党は、自民党・日本維新の会と中道改革連合の双方と一定の距離を保ちつつ、選挙後の「部分連合」継続に布石を打つ姿勢を見せています。
玉木代表は「与党の過半数が果たして新しい政策を生み出すのか」と提起し、昨年の与党過半数割れが国民民主の政策実現につながったと主張。「もっと手取りを増やす」ためには、引き続き国民民主党への支持が必要だと訴えています。
有権者へのメッセージ
玉木代表は会見で「動き始めた新しい政治をどうか止めないでください。新しい政治を一緒に作って参りましょう」と呼びかけました。
まとめ
国民民主党は衆院選公約として、「年収の壁」対策のさらなる進化を掲げています。所得制限の撤廃、住民税控除額の引き上げ、社会保険料負担の軽減という「3つの壁」への挑戦を訴え、「もっと手取りを増やす」というメッセージを打ち出しています。
昨年の衆院選で実現した178万円への壁引き上げは約1.85兆円規模の減税効果をもたらしますが、残された課題も多くあります。住民税の控除が追いついていないこと、社会保険の壁が残存していることなど、今後の政策対応が求められます。
2月8日の投開票に向け、各党の家計支援策への注目が高まっています。
参考資料:
関連記事
国民民主党「もっと手取りを増やす」公約、所得制限撤廃を訴え
国民民主党が次期衆院選で「年収の壁」引き上げの所得制限撤廃を公約に掲げます。178万円合意への不満を受け、さらなる減税拡大を目指す方針です。
消費税減税で経済界が警鐘、財源なき公約への懸念
2026年衆院選で各党が消費税減税を公約に掲げる中、経済界と労働界が財源不明確を理由に懸念を表明。法人減税縮小への波及や金融市場の動揺が広がっています。
消費税減税競争が過熱、財源論議の杜撰さに懸念広がる
2026年衆院選で各党が競って消費税減税を公約に掲げる中、財源確保の具体策が曖昧なまま。将来世代へのツケ回しを懸念する声と、有権者の冷静な判断が問われている。
消費税減税で与野党横並び、5兆円の財源問題を検証する
2026年衆院選で与野党の大半が消費税減税を公約に掲げる異例の展開に。年5兆円の税収減がもたらす財政リスクと各党の主張を整理して解説します。
自民党内に消費税減税慎重論、2割が現状維持を主張
2026年2月8日投開票の衆院選候補者調査で、自民党の2割が消費税の現状維持を支持。野党はほぼ全党が減税を掲げる中、党内の温度差が浮き彫りに。社会保障財源の議論は8割が回答せず。
最新ニュース
ビットコイン7万ドル台急落、テック株売りが暗号資産に波及
ビットコインが約1年3カ月ぶりの安値となる7万2000ドル台に急落しました。米ハイテク株の売りが暗号資産市場に波及した背景と、MicroStrategyの含み損問題について解説します。
日銀の量的引き締め出遅れと円安の関係を解説
日銀のマネタリーベース縮小が米欧に比べ緩やかな理由と、それが円安に与える影響について解説します。FRB新議長候補ウォーシュ氏の金融政策姿勢にも注目が集まっています。
書店600店の在庫を一元化|返品率30ポイント削減の新システム
紀伊国屋書店、TSUTAYA、日販が出資するブックセラーズ&カンパニーが、56社603店の在庫を横断管理するデータベースを始動。返品率6割減を実現した事例と、出版業界の構造改革を解説します。
中国海警局の尖閣周辺活動が過去最多に、日中の緊張続く
2025年、中国海警局の船舶が尖閣諸島周辺の接続水域に357日出没し過去最多を更新。日本の対応策と偶発的衝突防止の課題を解説します。
中国の土地売却収入がピーク比半減、地方財政に深刻な打撃
中国の地方政府の土地売却収入が2025年も前年比14.7%減少し4年連続の減少を記録。ピークの2021年から52%減となり、不動産不況が地方財政を圧迫し続けています。