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by nicoxz

水素ステーション縮小が止まらない、FCV普及の壁

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はじめに

「水素社会」の実現を掲げてきた日本で、燃料電池車(FCV)向けの水素インフラが縮小しています。水素ステーションの閉鎖が相次ぎ、全国の大半の地域が水素供給の空白地帯となっている状況です。FCVの年間販売台数はピーク時から大幅に減少しており、政府が掲げた「2025年に20万台」という目標は大きく未達に終わりました。

インフラが整わなければ車は売れず、車が売れなければインフラ投資が回収できない。この「鶏と卵」の問題は解決の糸口が見えないまま、水素モビリティは厳しい局面を迎えています。

水素ステーションの現状:閉鎖と撤退の連鎖

全国163カ所から減少傾向に

2025年半ば時点で、日本国内の水素ステーションは約163カ所(整備中含む)にとどまっています。政府が掲げた「2025年に320カ所」「2030年度までに1,000基程度」という整備目標とは大きくかけ離れた数字です。

さらに深刻なのは、既存のステーションが減少に転じていることです。設備の老朽化や採算の悪化を理由に、閉鎖に踏み切る事業者が出ています。北大阪水素ステーションは2025年10月末で閉鎖され、東京の新砂水素ステーションも2026年3月末での閉店が決定しています。

四大都市圏に偏在、大半が空白地帯

水素ステーションの設置は地域的に極めて偏っています。首都圏に約54カ所、中京圏に約51カ所、関西圏に約20カ所、九州圏に約15カ所と、四大都市圏に集中しています。47都道府県のうち、多くの県では水素ステーションが1カ所もないか、あっても1〜2カ所にとどまる状況です。

この地域的な偏りは、FCVオーナーにとって深刻な問題です。長距離移動時に水素の補給ができないため、FCVを「乗り回せない」という不安がつきまといます。ガソリンスタンドのように全国どこでも燃料補給ができるEV充電網との格差は、広がる一方です。

FCV販売の急減速:トヨタ・ミライの苦境

販売台数はピーク比8割減

FCVの販売不振は数字に如実に表れています。2023年の国内FCV販売台数はわずか422台で、新車販売全体の0.01%にも満たない水準です。トヨタ・ミライの国内販売も2023年は448台まで落ち込みました。

グローバルでも状況は厳しく、2024年11月のトヨタのFCEV世界販売台数はわずか134台にとどまっています。初代ミライが2014年に発売されてから約10年、世界累計販売台数は約1万1,000台です。月産3,000台を目指すとした計画は実現していません。

ホンダCR-V e:FCEVも苦戦

ホンダは2024年に新型FCV「CR-V e:FCEV」を投入しました。プラグイン充電機能も備えたハイブリッドタイプですが、水素インフラの不足が根本的なネックとなり、販売は限定的です。乗用車でFCVを販売しているメーカーは、世界的に見てもトヨタと韓国の現代自動車(ヒョンデ)にほぼ限られており、市場そのものが極めて小規模にとどまっています。

「三すくみ」の構造的問題

メーカー・インフラ事業者・ユーザーの悪循環

資源エネルギー庁の担当者が指摘するように、FCV市場は「三すくみ」の状態に陥っています。自動車メーカーは「乗ってもらえないと製造できない」、インフラ事業者は「ステーションを稼働しても利用されない」、ユーザーは「車種やステーションが少なければ使い勝手が悪い」。この悪循環を断ち切る有効な手段が見つかっていません。

高コスト構造がネックに

水素ステーションの建設費は1カ所あたり4〜5億円とされ、ガソリンスタンドの数倍のコストがかかります。70MPaの高圧水素を充填するためには500平方メートル以上の敷地が必要であり、土地代が高い都市部での設置はさらにハードルが上がります。利用台数が少ない現状では、運営コストの回収は困難です。

一方、EV用の充電設備は設置コストが水素ステーションの数十分の1で済み、既存の商業施設や駐車場への併設も容易です。このコスト差が、インフラ整備の速度に決定的な違いを生んでいます。

注意点・今後の展望

商用車・産業用途にシフトする水素戦略

乗用FCVの普及が困難になる中、水素の活用先は商用車や産業用途へとシフトしつつあります。長距離トラックやバス、フォークリフトなど、決まったルートを走行し、拠点で水素を補給できる用途では、FCVの優位性が発揮しやすいとされています。

また、製鉄や化学プラントなど産業分野での水素利用、水素発電など、モビリティ以外の領域で水素の需要が拡大する可能性があります。日本政府も2023年に改定した水素基本戦略では、産業利用への重点シフトを打ち出しています。

EVとの競争で勝ち筋はあるか

EVの急速な普及と充電インフラの拡大が続く中、乗用車分野でFCVが巻き返すシナリオは描きにくくなっています。トヨタは「水素を諦めない」姿勢を維持していますが、経営資源の配分は今後さらに難しい判断を迫られるでしょう。

まとめ

水素ステーションの縮小とFCVの販売不振は、相互に悪影響を及ぼす負のスパイラルに陥っています。政府目標の320カ所に対して163カ所にとどまるステーション数、全国の大半を占める空白地帯、そして年間400台台まで落ち込んだ国内販売台数が、現状の厳しさを物語っています。

乗用車分野での挽回は困難な状況ですが、商用車や産業用途での水素活用には引き続き可能性があります。水素エネルギー全体の戦略を見直し、限られたリソースをどの分野に集中させるかが、日本の水素政策の今後を左右する重要な岐路です。

参考資料:

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