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by nicoxz

茨城県の干し芋ブームが止まらない理由と市場動向

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はじめに

茨城県産の干し芋が、いま大きな注目を集めています。2026年1月10日に開催された「全国ほしいもグランプリ2026」では全国から41点の応募が集まり、東京での即売イベントも盛況を博しました。

干し芋といえば、かつては素朴なおやつというイメージでした。しかし近年は、健康志向の高まりや品種改良の進展により、その評価は大きく変化しています。本記事では、茨城県の干し芋産業がブームを続ける背景と、市場の最新動向について解説します。

茨城県が干し芋王国となった理由

圧倒的な全国シェア9割

茨城県は干し芋の生産量で全国1位を誇り、そのシェアは約9割に達しています。農林水産省の統計によると、2019年の茨城県における干し芋生産量は約3万2,000トンで、2位の静岡県(約1,800トン)を大きく引き離しています。

この圧倒的なシェアを支えているのが、茨城県の恵まれた自然環境です。県中央の海岸沿いに位置するひたちなか市、東海村、那珂市を中心とする地域では、火山灰由来の水はけの良い土壌、ミネラルを含んだ潮風、そして冬季の長い晴天という、干し芋づくりに理想的な条件が揃っています。

静岡から茨城への主産地移転

干し芋の発祥地は、実は静岡県です。江戸時代の文政年間(1818年〜1831年)に現在の御前崎で誕生し、明治時代の1908年に茨城県へ伝わりました。戦前までは静岡県が主産地でしたが、茨城県の生産量が急速に伸び、1955年には生産量で逆転しました。

茨城県が主産地となった理由として、広大な農地の確保が可能だったことや、加工技術の向上、そして県を挙げた産地振興の取り組みが挙げられます。現在、ひたちなか市は県内最大の生産地として知られています。

全国ほしいもグランプリ2026の結果

オオスガファームが頂点に

2026年1月10日、水戸プラザホテルで開催された「全国ほしいもグランプリ2026」の表彰式では、茨城県ひたちなか市の「株式会社オオスガファーム」がグランプリを獲得しました。この大会は、茨城県が干し芋の魅力発信と消費拡大を目的に2025年から開催しており、今回が2回目となります。

オオスガファームは、サツマイモの栽培から干し芋の製造、販売まで一貫して手がける農家です。一般的な干し芋より厚めにスライスすることで、しっとりとした食感とモチモチした噛み応えを実現しています。代表は30歳と若く、高校卒業後に家業に入って以来、原料や加工方法の研究を重ねてきました。

県外からの参加も増加

大会には茨城県内から28点、北海道や新潟県など12道府県から13点、計41点の応募がありました。準グランプリには「株式会社フクダ」(ひたちなか市)、3位には「かんみや本舗」(東海村)が選ばれています。県外からの参加が増えていることは、干し芋への関心が全国的に広がっていることを示しています。

健康食品としての注目

スーパーフードとしての評価

干し芋が人気を集める大きな理由は、その優れた栄養価にあります。干し芋は、さつまいもを蒸して干すだけのシンプルな製法で作られ、砂糖や添加物を一切使用しない自然派食品です。

主な栄養素として、食物繊維、カリウム、ビタミンC、ビタミンB群が豊富に含まれています。食物繊維は便秘解消に効果があり、カリウムは高血圧予防やむくみ解消に役立ちます。また、低GI食品に分類されるため、血糖値の急激な上昇を抑える効果も期待できます。

「イモをふかして干しただけで栄養豊富。スーパーフードという人もいますね」という専門家の声もあり、健康志向の消費者から高い支持を得ています。

海外からの注目も高まる

干し芋は、原料がさつまいものみで砂糖や添加物を使用しない点が、海外でも評価されています。特にヴィーガン食を実践する人々を中心に世界的な注目が集まっています。低GI食品としての特性や、ビタミン・ミネラルが豊富な点が、健康意識の高い海外消費者にも受け入れられています。

品種改良と多様化する製品

紅はるかの人気

現在、干し芋用のさつまいも品種として最も人気があるのが「紅はるか」です。従来の品種に比べて糖度が高く、ねっとりとした食感が特徴です。紅はるかの登場により、干し芋はより甘みが強く、スイーツのような味わいを持つ商品へと進化しました。

製品の多様化

干し芋の製品形態も多様化しています。伝統的な平干しに加え、丸干し、角切りなど、食感の異なる様々なタイプが販売されています。オオスガファームでは、焼き芋やサツマイモを使用したスナック、プリンなどのスイーツも展開しており、干し芋の可能性を広げています。

パッケージデザインにも工夫が見られ、おしゃれなシールを使用するなど、ギフト需要や若年層への訴求を意識した商品づくりが進んでいます。

消費拡大への取り組み

1月10日は「ほしいもの日」

茨城県は1月10日を「ほしいもの日」に制定し、認知度向上に力を入れています。この日を中心に、県内外で様々なPRイベントが開催されています。

2026年1月9日から12日にかけて、東京・有楽町駅前広場では「日本一ほしいもが集まる4日間!ほしいも全員集合まつり 第二章」が開催され、多くの来場者で賑わいました。茨城県アンテナショップ「IBARAKI sense」が主催するこのイベントは、都市部での干し芋の認知度向上に大きく貢献しています。

産地ブランドの確立

茨城県は、干し芋を県の重要な農産物ブランドとして位置づけ、産地振興に取り組んでいます。全国ほしいもグランプリの開催は、品質向上への競争意識を高めるとともに、茨城県産干し芋のブランド価値を向上させる効果があります。

今後の展望と課題

市場拡大の可能性

健康志向の高まりやコロナ禍以降の「巣ごもり需要」を背景に、干し芋市場は今後も拡大が見込まれます。特に、スーパーフードとしての認知が広がれば、これまで干し芋に馴染みのなかった消費者層への浸透も期待できます。

一方で、海外からの輸入干し芋との競合も課題です。中国、インドネシア、ベトナム、ペルーなどからの輸入品との差別化を図るため、国産ならではの品質の高さや安全性をアピールしていく必要があります。

後継者育成の重要性

干し芋づくりは、さつまいもの栽培から加工まで手間のかかる作業です。オオスガファームの代表のように若い世代の参入は明るい材料ですが、業界全体では後継者不足が課題となっています。

県や農業団体による支援制度の充実や、若者が参入しやすい環境づくりが、産地の持続的な発展には欠かせません。

まとめ

茨城県の干し芋産業は、全国シェア9割という圧倒的な存在感を維持しながら、健康志向の追い風を受けて好調を続けています。全国ほしいもグランプリのような取り組みは品質向上の意識を高め、東京での即売イベントは新たな顧客層の開拓に貢献しています。

干し芋は、添加物を使わない自然派食品として、今後も需要の拡大が期待できます。消費者としては、産地や品種、製法にこだわった商品を選ぶことで、より質の高い干し芋を楽しむことができるでしょう。

参考資料:

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