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by nicoxz

2025年春闘、賃上げ率5.25%で34年ぶり高水準を達成

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はじめに

2025年の春闘(春季労使交渉)で、日本の賃上げ率が34年ぶりの高水準を記録しました。連合の最終集計によると、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた賃上げ率の加重平均は5.25%となり、1991年の5.66%以来の水準に達しました。

2年連続で5%を超える賃上げが実現し、経団連が掲げた「賃上げの定着」に向けた重要な一歩となっています。一方で、大企業と中小企業の格差は依然として1%超あり、この差をどう縮めるかが今後の課題です。

本記事では、2025年春闘の結果、企業規模別の状況、ベースアップの実施状況、そして今後の見通しについて解説します。

2025年春闘の結果

賃上げ率5.52%、34年ぶりの高水準

厚生労働省が発表した「2025年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によると、賃上げの平均妥結額は1万8,629円、平均賃上げ率は5.52%となりました。

いずれも前年を上回り、平均妥結額は3年連続で1万円台、平均賃上げ率は2年連続で5%台を記録しています。

連合の最終集計

連合の最終集計では、賃上げ率の加重平均は5.25%で、1991年の5.66%以来となる34年ぶりの高水準となりました。

ベースアップ分だけでみても、物価上昇を上回る水準を確保しており、実質賃金の改善に寄与しています。

企業規模別の状況

大企業は5.39%

経団連の最終集計によると、大手企業の定期昇給とベースアップを合わせた賃上げ率は平均5.39%と、2年連続で5%を超えました。賃上げ幅は1万9,195円となっています。

大手企業は業績好調を背景に、積極的な賃上げを実施しました。

中小企業は4.35%

一方、従業員数500人未満の中小企業の賃上げ率は4.35%でした。中小企業における賃上げ額・賃上げ率は前年から上昇しましたが、大手企業との差は依然として1%超と大きい状況です。

価格転嫁が難しい中小企業では、賃上げ原資の確保が課題となっています。

格差縮小が今後の課題

大企業と中小企業の賃上げ格差は、労働市場での人材獲得競争にも影響します。中小企業が賃上げに追随できなければ、人材流出が加速する恐れがあります。

サプライチェーン全体での価格転嫁を促進し、中小企業の賃上げ原資を確保する仕組みづくりが求められています。

ベースアップの実施状況

労働組合ありで82%が実施

定期昇給制度がある企業のうち、「ベースアップを行った・行う」と回答した割合は、労働組合がある企業で82.1%に達しました。

一方、労働組合がない企業では49.4%にとどまっており、組合の有無が賃上げに大きな影響を与えています。

ベア分は物価上昇を上回る

ベースアップ分だけでみても、物価上昇率を上回る水準を確保しました。これにより、実質賃金の改善が期待されます。

ただし、物価上昇が続く中、来年以降も同水準のベースアップを継続できるかが問われています。

経団連・連合の方針

「定着」の年

経団連の十倉会長は「2023年は高水準の賃金引上げモメンタム『起点』の年、2024年はそれが大きく『加速』した年となった。2025年はこの流れを『定着』させる年にしたい」とコメントしました。

「昨今の物価上昇に鑑み、ベースアップを念頭に置いた賃金引上げの実施を広く呼びかけていく」との姿勢を示しています。

構造的な賃上げへ

単年の賃上げにとどまらず、継続的・構造的な賃上げの実現が目標です。物価上昇に負けない賃金水準を維持し、消費を活性化させる好循環の創出が期待されています。

今後の見通し

2026年春闘の注目点

2026年の注目ポイントは、2025年と同水準の賃上げ率を継続しながら、物価上昇を上回る賃上げを実現できるかです。

特に、中小企業においてベースアップも含めた賃上げを継続・拡大できるかが鍵となります。

最低賃金引き上げとの連動

政府が掲げる最低賃金1,500円への引き上げ目標も、春闘の賃上げ動向に影響を与えます。最低賃金の上昇は、全体の賃金水準を押し上げる効果があります。

生産性向上の必要性

賃上げを持続するためには、生産性の向上が不可欠です。DXへの投資、業務効率化、人材育成など、付加価値を高める取り組みが求められます。

まとめ

2025年春闘の賃上げ率は5.25%で34年ぶりの高水準を達成しました。大企業5.39%、中小企業4.35%と2年連続で5%台を記録し、ベースアップ分は物価上昇を上回る水準を確保しています。

一方、大企業と中小企業の格差は1%超あり、労働組合のない企業ではベア実施率が49.4%にとどまるなど課題も残ります。

経団連は2025年を賃上げ「定着」の年と位置づけています。2026年以降も物価上昇を上回る賃上げを継続し、構造的な賃金上昇を実現できるかが問われています。

参考資料:

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