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by nicoxz

自社株買いで流通株16兆円減少、日本株最高値の立役者

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はじめに

日本株市場を支える重要な要因として「自社株買い」の存在感が増しています。2025年に市場から吸収された流通株は約16兆円に達し、2000年以降で最大の規模となりました。

自社株買いとは、企業が自らの資金を使って株式市場から自社株を買い戻す行為です。市場に出回る株式数が減ることで、1株あたり利益(EPS)が向上し、株価の押し上げ要因となります。

本記事では、自社株買いの仕組みと株価への影響、過去最高を更新し続ける背景、そして投資家が注意すべき点について詳しく解説します。

自社株買いの仕組みと株価への影響

EPSが向上するメカニズム

自社株買いが株価を押し上げる最大の要因は、EPS(1株当たり利益)の向上です。EPSは以下の計算式で求められます。

EPS = 純利益 ÷ 発行済株式数

自社株買いを行うと発行済株式数(分母)が減少するため、純利益が変わらなくてもEPSは上昇します。

具体例で理解する

例えば、以下のような企業があるとします。

  • 発行済株式数:1億株
  • 純利益:10億円
  • EPS:10円

この企業が10%(1,000万株)の自社株買いを実施すると、発行済株式数は9,000万株に減少します。純利益が変わらない場合、EPSは約11.1円となり、10%以上の向上が実現します。

株価上昇につながる3つの理由

自社株買いが株価を押し上げる理由は複数あります。

1. 需給バランスの改善

市場に流通する株式の量が減ることで、株式の希少価値が高まります。需要が供給を上回りやすくなり、株価が上昇しやすい環境が生まれます。

2. ROE(自己資本利益率)の向上

自社株買いを行うと自己資本が減少し、同じ利益でもROEが向上します。ROEは投資家が重視する指標であり、改善は買い注文の増加につながります。

3. PER(株価収益率)の低下

EPSが上昇するとPER(株価÷EPS)が低下し、株価が割安に見えるようになります。割安感が投資家の買い意欲を刺激し、株価上昇につながります。

配当との違い

自社株買いと配当はどちらも株主還元策ですが、税制面で違いがあります。

項目自社株買い配当
課税タイミング売却時のみ受取時毎回
複利効果期待できる税金分減少
株主の選択売却の可否を選べる強制的に受取

自社株買いは売却するまで課税されないため、長期投資家にとっては複利効果が期待できるメリットがあります。

2025年の自社株買いが過去最高を記録

16兆円超の流通株が市場から消失

2025年に市場から吸収された流通株は約16兆円に達しました。これは東証時価総額全体の約2%に相当し、米国のS&P500構成企業と同水準です。

過去の自社株買い推移

年度自社株買い規模
2023年度約9兆円
2024年度約18兆円
2025年度(予想)約20兆円

2024年度は前年の約2倍に膨らみ、2025年度はさらに20兆円規模に達すると予想されています。配当総額予想の25兆円に迫る水準であり、株主還元策として自社株買いの重要性が高まっていることがわかります。

大型の自社株買いを発表した企業

2025年に入り、大型の自社株買いを発表する企業が相次いでいます。

  • 三菱商事 - 1兆円(過去最大)
  • 日立製作所 - 3,000億円
  • トヨタ自動車 - 1兆円規模

これらの大型案件が市場全体の自社株買い増加を牽引しています。

日本株最高値更新に貢献

2025年は日本の主要株価指数が最高値を更新しました。東証プライム上場企業の平均EPSは7月に過去最高の178.11円を記録しています。

この要因として、AI需要による企業業績の拡大に加え、自社株買いによる株式数の減少がEPSを押し上げたことが挙げられます。専門家は「自社株買いの増加は日本株全体の押し上げ効果ももたらしている」と分析しています。

自社株買い急増の背景

東証の「資本コスト・株価意識経営」要請

自社株買いが急増した最大の要因は、2023年3月に東京証券取引所が発した要請です。東証はプライム市場およびスタンダード市場の全上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を求めました。

この要請の背景には、深刻な問題がありました。

  • プライム市場の約半数がPBR1倍割れ
  • スタンダード市場の約6割がPBR1倍割れ
  • ROE8%未満の企業が多数

PBR1倍割れとは、株価が解散価値(1株あたり純資産)を下回っている状態です。「会社を畳んだ方が価値がある」と市場から評価されていることを意味します。

企業の対応状況

東証の要請を受け、企業の対応は急速に進みました。

  • 2023年12月末 - プライム市場で49%が対応
  • 2025年4月末 - プライム市場で92%が対応

特にPBR1倍未満かつ時価総額1,000億円超の企業では78%が対応策を開示し、銀行業では94%に達しています。

政策保有株の解消も追い風

持ち合い株式(政策保有株)の解消も自社株買い増加の要因です。企業間で保有していた株式が市場に放出されると、需給が緩んで株価に下落圧力がかかります。その受け皿として自社株買いが活用されています。

政策保有株の解消は2029年度頃まで高水準で続くと見られており、自社株買いの増加傾向も当面続く可能性があります。

注意点・投資家への影響

自社株買いの限界

自社株買いは株価上昇が確約されたものではありません。以下の点に注意が必要です。

1. 「分母を減らす」だけの効果

EPSやROEの向上は、分母(株式数や自己資本)を減らすことで得られる効果です。根本的な収益力の改善が伴わなければ、株価上昇は一時的なものにとどまる可能性があります。

2. 財務体質の悪化リスク

自社株買いは現預金と自己資本の減少を伴います。自己資本比率が低下すると、財務状況の悪化と見なされ、かえって株価下落につながることもあります。

3. 成長投資の機会損失

自社株買いに充てた資金は、研究開発や設備投資に回せません。短期的な株主還元を優先し、長期的な成長機会を逃す懸念もあります。

投資家が見るべきポイント

自社株買いを発表した企業への投資を検討する際は、以下の点を確認することが重要です。

  • 業績の推移 - 利益成長が伴っているか
  • 自己資本比率 - 財務体質に問題はないか
  • 使途の妥当性 - 成長投資と還元のバランス
  • 継続性 - 一時的なものか継続的な方針か

今後の見通し

2026年以降も自社株買いの活発化は続くと予想されます。

  • 東証改革の定着と意識変化
  • 政策保有株解消の継続
  • 外国人投資家からの期待

一方で、金利上昇局面では借入コストの増加から自社株買いが抑制される可能性もあります。市場環境の変化には注意が必要です。

まとめ

2025年の自社株買いは約16兆円と過去最高を記録し、日本株の最高値更新に貢献しました。自社株買いにより流通株が減少することでEPSが向上し、株価の押し上げ要因となっています。

この背景には、2023年の東証による「資本コスト・株価意識経営」の要請があります。PBR1倍割れ企業への圧力が強まり、株主還元策として自社株買いを選択する企業が急増しました。

投資家にとって自社株買いは好材料ですが、業績の裏付けがあるか、財務体質に問題はないかを慎重に見極めることが重要です。

参考資料:

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