マキタ株ストップ高、業績上方修正と自社株買いが評価される理由
はじめに
2026年1月30日、電動工具大手のマキタ(証券コード: 6586)の株価が制限値幅の上限(ストップ高水準)まで急騰しました。前日終値比700円(15.1%)高の5,351円をつけ、約10カ月ぶりの高値となりました。この急騰の背景には、29日の取引終了後に発表された2026年3月期の業績予想上方修正と、最大400億円規模の自社株買いがあります。
2月8日に衆議院選挙の投開票を控え、市場では買い安心感のある個別銘柄を選ぼうという投資家心理が強まっています。この記事では、マキタ株急騰の理由と、市場が評価したポイントについて詳しく解説します。
業績予想の上方修正:円安効果が追い風
売上収益と純利益の上方修正
マキタは1月29日の取引終了後、2026年3月期の連結業績予想を上方修正すると発表しました。売上収益(売上高に相当)は従来予想の7,300億円から7,600億円へ300億円(4.1%)引き上げ、前期比0.9%増としました。純利益は従来予想の685億円から730億円へ45億円(6.6%)引き上げ、前期比8.0%減としました。
この上方修正は、円安・ユーロ高など為替の動きが増益方向に寄与したことが主な要因です。マキタは海外売上比率が高く、特に北米や欧州での販売が好調なため、円安は業績にプラスに働きます。
2度目の上方修正
今回の上方修正は、2026年3月期の業績予想として2度目の上方修正となります。2025年10月にも、純利益予想を従来の540億円から685億円へ145億円(26.9%)引き上げていました。
当初、マキタは2026年3月期の純利益を前期比32%減の540億円になる見通しと発表していました。これは、トランプ米政権の高関税政策により、中国からの対米輸出が縮小し、北米で大幅な売り上げ減を予想していたためです。しかし、実際には関税の影響が想定より小さくなり、売上が堅調に推移したことで、2度の上方修正に至りました。
4-12月期(第3四半期累計)の好調な業績
2025年4月〜12月期の業績も好調でした。売上収益は568.78億円(前年同期比微増)、純利益は57.52億円(前年同期比7.0%減)と、減益ながらも売上は堅調に推移しました。
最大400億円の自社株買いを発表
自社株買いの詳細
マキタは業績予想の上方修正と同時に、自社株買いプログラムを発表しました。取得する株式の総数は上限1,000万株(発行済み株式総数から自己株式を除いた株式数の3.78%)、取得価額の総額は上限400億円とし、2026年1月30日から5月31日までの期間に実施するとしています。
自社株買いの狙い
自社株買いは、企業が自社の株式を市場から買い戻すことで、発行済み株式数を減らし、1株あたりの利益(EPS)を向上させる効果があります。また、株主還元を強化する姿勢を示すことで、投資家の信頼を得ることができます。
マキタの場合、400億円という大規模な自社株買いは、手元資金が潤沢であることを示しています。また、自社の株価が割安だと経営陣が判断していることの表れとも言えます。
投資家が評価したポイント
買い安心感のある銘柄
2月8日の衆議院選挙を控え、市場では政治的不確実性が高まっています。こうした環境下では、投資家は業績が堅調で、経営陣が株主還元に積極的な「買い安心感のある銘柄」を選ぶ傾向があります。
マキタは、業績予想を2度上方修正し、さらに400億円規模の自社株買いを発表したことで、投資家から「買い安心感のある銘柄」として評価されました。
出遅れ感のある好業績銘柄
マキタ株は、2025年の日本株市場の上昇相場において、株価に出遅れ感がありました。日経平均株価が上昇する中、マキタ株は相対的に低調なパフォーマンスでした。
しかし、業績は堅調に推移しており、今回の上方修正と自社株買い発表により、「出遅れ感のある好業績銘柄」として投資家の注目を集めました。こうした銘柄は、上昇余地が大きいと見なされ、買いが集まりやすい傾向があります。
円安の恩恵を受ける企業
マキタは海外売上比率が高く、特に北米や欧州での販売が好調です。そのため、円安は業績にプラスに働きます。2026年に入っても円安基調が続く可能性があり、マキタは引き続き為替の恩恵を受けることが期待されています。
衆院選控え個別株選別の動きが活発化
2026年の市場環境
2026年の日本株市場は、衆議院選挙の結果や日銀の追加利上げの動向によって大きく左右されると見られています。自民党が大勝すれば、高市政権が安定し、日本株にとって株価上昇の強力なカンフル剤となる可能性があります。
一方で、選挙結果が不透明な間は、市場全体が上昇しにくい状況が続くと予想されています。こうした環境下では、個別株選別が重要になります。
好業績銘柄への資金シフト
市場では、2025年に相対的に弱かったバリュー株や出遅れ株に注目が集まっています。特に高配当利回り株は、NISA(少額投資非課税制度)の投資対象として重要視されています。
マキタのような好業績銘柄は、企業業績の拡大と賃金上昇による国内需要の下支えが期待されており、投資家の資金が集まりやすい状況です。
アナリストの評価
アナリストのコンセンサス評価では、マキタ株は「買い」となっています。2026年1月21日時点で、強気買い5、買い4、中立4、強気売り1という評価で、平均目標株価は5,541円となっています。ストップ高後の株価がこの水準を下回っていることから、さらなる上昇余地があると見る向きもあります。
注意点と今後の展望
関税リスクは引き続き存在
マキタの業績は、トランプ米政権の高関税政策の影響を受ける可能性があります。当初の懸念よりは影響が小さかったものの、今後の関税政策の動向によっては、北米での売上が減少するリスクがあります。
特に、中国からの輸入品に対する関税が引き上げられた場合、マキタの中国製品の対米輸出が縮小する可能性があります。この点は引き続き注意が必要です。
為替リスク
マキタの業績は為替の影響を大きく受けます。円安は業績にプラスに働きますが、逆に円高になれば業績にマイナスの影響を与えます。今後の為替動向を注視する必要があります。
衆院選の結果次第で市場全体が変動
2月8日の衆議院選挙の結果によって、日本株市場全体が大きく変動する可能性があります。自民党が大勝すれば、市場にポジティブな影響を与え、マキタ株も上昇する可能性があります。一方で、選挙結果が不透明な場合、市場全体が下落し、マキタ株も影響を受ける可能性があります。
今後の成長戦略
マキタは、電動工具市場でのグローバルリーダーとしての地位を確立しています。今後も、新製品の開発や海外市場の開拓を通じて、成長を続けることが期待されています。
特に、環境対応型の電動工具(バッテリー式など)の需要が高まっており、マキタはこの分野で強みを持っています。今後も、こうした成長分野での競争力を維持・強化することが重要です。
まとめ
マキタ株のストップ高は、業績予想の上方修正と400億円規模の自社株買い発表が評価された結果です。衆議院選挙を控え、投資家は買い安心感のある個別銘柄を選ぶ傾向が強まっており、マキタは「出遅れ感のある好業績銘柄」として注目を集めました。
円安効果が業績を下支えし、関税の影響も当初の懸念より小さかったことで、2度の業績予想上方修正に至りました。自社株買いは、株主還元を強化する姿勢を示し、投資家の信頼を得ることに成功しました。
ただし、関税リスクや為替リスク、衆院選の結果による市場変動など、注意すべき点もあります。今後も、マキタの業績動向と市場環境の変化を注視する必要があります。
アナリストの評価は「買い」で、平均目標株価は5,541円と、さらなる上昇余地があると見られています。個別株選別が重要な2026年の市場環境において、マキタは引き続き注目すべき銘柄の一つと言えるでしょう。
参考資料:
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