J-REITが金利上昇下でも堅調、年24%高の背景
はじめに
日本の上場REIT(不動産投資信託、J-REIT)が堅調な推移を見せています。国内金利の上昇という逆風の中でも、東証REIT指数は2024年末比で24%上昇し、米国や豪州のREIT市場を上回るパフォーマンスを記録しました。
一般的に金利上昇局面ではREITは売られやすいとされますが、日本ではオフィス市況の好転や賃料収入の増加が相場を下支えしています。物件取得など積極的な成長戦略を背景に、今後も成長が続く可能性があります。
本記事では、J-REIT市場の現状、好調の背景、そして今後の見通しについて解説します。
J-REIT市場の現状
4年ぶりのプラスに転換
2025年のJリート市場は、東証REIT指数が+21.8%上昇し、4年ぶりのプラス転換となりました。2024年まで3年連続で下落していた市場が、力強い回復を見せています。
東証REIT指数は2025年9月16日に1,950.97ポイントと2022年12月以来2年9ヶ月ぶりの高値を付けました。2026年1月15日時点では2,057.09ポイントで推移しています。
過去最高水準の売却益
Jリートによる不動産売却額は、2024年に7,689億円(前年比+102%)と過去最高を記録しました。2025年上期も4,634億円(前年同期比+10%)と高水準を維持しています。
不動産売却損益は2024年に1,263億円(前年比+79%)と過去最高を記録し、2025年上期も1,153億円(前年同期比+99%)と、既に前年に迫る規模に達しています。この売却益を活用した還元強化の取り組みが、投資家から評価されています。
金利上昇下でも堅調な理由
賃料収入の増加がカギ
金利上昇局面では、REITは資金調達コストの増加などが嫌気されて売られやすい傾向があります。しかし、J-REITが堅調な背景には「なかなか上げられないと思われていた不動産の賃料の上昇が大きい」と評価されています。
インフレ上昇分を賃料へ転嫁する動きが広がり、オフィスの賃料を消費者物価指数に連動させる契約も増えています。不動産市場の良好なファンダメンタルズが、金利上昇のマイナス影響を相殺している形です。
オフィス市況の急速な改善
J-REIT保有資産の4割弱を占めるオフィスビルの賃貸市場は急速に改善しています。東京都心5区の空室率は2024年1月の5.83%から2025年1月には3.83%まで低下しました。
空室率の低下と賃料の上昇がJ-REIT市況盛り返しの理由であり、賃料収入の増大傾向が投資家に評価されたことが大きな要因となっています。
依然として割安な水準
2025年上期末時点のバリュエーションは、分配金利回りが4.9%、10年国債利回りに対するイールドスプレッドが3.5%、NAV倍率が0.85倍となっており、利回り指標やNAV指標でみて依然として割安な水準にあります。
同じく1,900ポイント台だった2022年12月の平均利回りは3.9%でしたが、2025年8月は4.6%と、値上がりしても利回りから見て割安感が残っています。東証REIT指数が1,950ポイントまで上昇しても、分配金利回りは4.5%程度と高い水準を維持しています。
グローバル比較での優位性
米国・豪州REITとの比較
日本のJ-REITは、2024年末比で24%高と、米国やオーストラリアのREIT市場を上回るパフォーマンスを記録しています。
米国REIT(FTSE NAREIT All Equity REIT)は2024年のトータルリターンが+4.9%と、2023年の+11.4%から伸びが鈍化しました。米国株式S&P 500(2024年+25.0%)を大きくアンダーパフォームしています。
オーストラリアREITは1年間で+0.3%と横ばいの推移となっており、J-REITの優位性が際立っています。
日本の金利環境が追い風
利上げ局面とはいえ、世界的な水準で見れば日本はなお緩和的な金融環境が続いています。政策金利は0.5%の水準であり、アメリカの4%台との開きは大きく、調達資金コストが安いことで日本の不動産を買いに来る海外投資家もいます。
海外投資家は2024年には大幅な売り越しに転じましたが、2025年は買い越しに転じるなど、需給懸念が後退したことも価格上昇を後押ししました。
今後の見通し
2026年の市場展望
2026年のJ-REIT市場については、インカムゲインを含むトータルリターンが年率27%を超えた2025年並みの好成績を期待するのは難しいかもしれません。しかし、分散投資やインフレヘッジの観点からポートフォリオにREITを組み入れることで、分配金を含めた底堅いリターンが得られる可能性があります。
利回りを支える分配金は増配基調が続いており、全銘柄の中央値は4.2%増配予想となっています。
オフィス賃料の上昇見通し
東京オフィス市場では、2029年に2024年対比で+18%の賃料上昇が見込まれています。空室率の低下と賃料上昇のトレンドが続けば、J-REITの収益基盤はさらに強化されます。
物件取得など積極的な成長戦略を背景に、今後も成長が続く可能性があります。
金利動向がカギを握る
2026年は日銀の金融政策やオフィス市場の行方に関心が集まります。市場関係者は年1回、政策金利1.0%への引き上げを想定していますが、為替・インフレの動向次第では利上げ余地が高まる可能性にも注意が必要です。
J-REIT価格が今後も上昇基調を維持するためには、投資家が国内金利上昇の懸念を持たない状況が続くことが重要です。日銀が短期金利である政策金利を当面0.5%に据え置き、国債買入れ額の減額幅を半分とする方針を公表したことで、金利上昇懸念が和らいでいます。
投資判断のポイント
分配金利回りの魅力
J-REITの分配金利回りは2025年8月時点で4.6%と、10年国債利回りとの差(イールドスプレッド)が依然として大きく、インカム投資の対象として魅力があります。
主要資産の中でREITの分配金利回りは、ハイリスク・ハイリターンと言われる新興国債券に続く中位に位置しています。安定した配当収入という強みがあるため、価格チャートで判断するよりも、時価の変動にインカムゲインを加味したトータルリターンで考えた方が適切です。
セクター別の注目点
J-REIT市場では、オフィスを中心に好調な賃貸市況が継続しています。物流施設も堅調で、データセンターへの需要増を背景にしたセクターにも注目が集まっています。
一方、米国REITでは物流施設が2024年に-17.8%と大きくマイナスとなるなど、セクター間でパフォーマンスに差が出ています。投資にあたってはセクターの動向も確認することが重要です。
まとめ
J-REITは金利上昇という逆風の中でも、オフィス市況の好転と賃料収入の増加を背景に堅調な推移を見せています。東証REIT指数は2024年末比で24%上昇し、4年ぶりのプラス転換を果たしました。
米国や豪州のREIT市場を上回るパフォーマンスを記録し、依然として割安な水準にあるとの評価もあります。分配金利回りは4%台後半と高く、インカム投資の対象として魅力があります。
2026年以降も金利動向がカギを握りますが、オフィス賃料の上昇見通しや積極的な成長戦略を背景に、底堅い展開が期待されます。分散投資やインフレヘッジの観点から、ポートフォリオへの組み入れを検討する価値はあるでしょう。
参考資料:
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