ロッテリア54年の歴史に終止符、ゼッテリアへ全店転換
はじめに
1972年に創業し、54年にわたって日本のファストフード文化を支えてきた「ロッテリア」のブランドが、2026年3月をもって国内から姿を消すことになりました。親会社のゼンショーホールディングス(HD)は、国内全店舗を新ブランド「ゼッテリア」へ転換する方針を正式に発表しています。
エビバーガーや絶品チーズバーガーで知られるロッテリアの店名消滅は、多くのファンにとって衝撃的なニュースです。しかし、この決断の背景には、外食産業最大手であるゼンショーの緻密な事業戦略があります。
本記事では、ロッテリアの歴史を振り返りながら、ゼンショーによる買収の経緯、新ブランド「ゼッテリア」の特徴、そして今後のファストフード業界への影響について詳しく解説します。
ロッテリア54年の歩み
日本のハンバーガー文化の黎明期
ロッテリアの歴史は、日本のハンバーガー文化の発展と深く結びついています。1970年に日本初のファストフードチェーン「ドムドムハンバーガー」が誕生し、翌1971年にはマクドナルドの日本1号店が銀座三越にオープンしました。そして1972年、「モスバーガー」と「ロッテリア」が相次いで創業し、日本におけるハンバーガー文化の礎を築きました。
ロッテリアは1972年2月に設立され、同年9月29日に東京・日本橋の高島屋北別館と上野の松坂屋に1号店をオープンしました。当初はロッテグループのアイスクリームを提供する店舗として企画されましたが、やがてハンバーガーを主力とするファストフードチェーンへと発展していきました。
独自商品で築いた地位
ロッテリアの強みは、アメリカのチェーンスタイルをそのまま導入するのではなく、日本人の味覚や食生活に合わせた独自商品の開発にありました。1977年に登場した「エビバーガー」は、海外ではほとんど見られない日本独自のメニューとして人気を博しました。
1984年には「リブサンド」、2007年には「絶品チーズバーガー」を発売。特に絶品チーズバーガーは、ファストフードでありながら本格的な味わいを追求した商品として話題を呼び、ロッテリアのブランドイメージを大きく向上させました。
海外展開と国内での苦戦
ロッテリアは国内だけでなく、海外展開にも積極的でした。1979年に韓国、1986年に台湾、1994年に中国、1998年にベトナムへ進出。特に韓国ではマクドナルドを上回る店舗数を展開するなど、アジア市場で存在感を示しました。
しかし、国内市場では厳しい競争にさらされ続けました。マクドナルドの圧倒的な店舗数と低価格戦略、モスバーガーの高品質路線との間で、ロッテリアは独自のポジションを見出すことに苦心していました。2023年1月時点で358店舗あった国内店舗は、徐々に減少の一途をたどっていました。
ゼンショーによる買収と新ブランド誕生
ゼンショーHDとは
ゼンショーホールディングスは、牛丼チェーン「すき家」を中心に、「なか卯」「はま寿司」「ココス」「ビッグボーイ」など19以上のブランドを国内で展開する外食産業最大手の企業です。東証プライム市場に上場しており、日本の外食産業で初めて時価総額1兆円を突破した業界のリーディングカンパニーです。
ゼンショーの成長戦略の柱は、積極的なM&A(企業買収・合併)にあります。すき家やはま寿司以外のブランドのほとんどは買収によって傘下に収めたもので、効率化ノウハウを投入して業績を回復させるという手法を確立しています。2023年にはアメリカやイギリスで持ち帰り寿司店を約3,000店運営する「スノーフォックストップコ」社を買収するなど、海外展開も加速させています。
ロッテリア買収の経緯
2023年4月、ロッテはロッテリアの全株式をゼンショーHDに売却しました。ロッテリアはゼンショーグループの傘下に入り、新たな章を迎えることになりました。
当初、ゼンショーはロッテリアブランドを維持する方針を示していましたが、その後戦略を転換。2023年9月20日、新ブランド「ゼッテリア」の1号店を東京・田町芝浦にオープンしました。ゼンショーHDは「全国のロッテリアを全てゼッテリアに置き換える方針」を正式に表明しています。
ブランド統合の狙い
ゼンショーがロッテリアをゼッテリアに転換する理由は、原材料の仕入れや店舗運営の効率化にあります。ゼンショーグループの調達力を活用することで、コスト競争力を高めることができます。また、新ブランドとして再出発することで、既存のイメージにとらわれない新しい顧客層の開拓も狙っています。
ゼッテリアの特徴と戦略
ブランドコンセプト
「ゼッテリア」という名称は、メイン商品である「絶品バーガー」と、気軽に楽しめるお店という意味を込めた「カフェテリア」を組み合わせた造語です。一部では「ゼンショー」の「ゼ」と誤解されることもありますが、公式には絶品バーガーに由来するとされています。
メニューの進化
ゼッテリアはロッテリアの人気メニューを引き継ぎながらも、より「絶品バーガー」を前面に押し出したラインナップとなっています。絶品バーガーシリーズは6種類に拡充され、野菜を追加するなど品質向上が図られています。
一方で、ロッテリアの象徴的なメニューだった「リブサンド」はゼッテリアには引き継がれておらず、ファンからは惜しむ声も上がっています。「エビバーガー」はひらがな表記の「えびバーガー」として継続されています。
ゼッテリア独自の取り組みとして、14時からの「カフェコンビ」メニューがあります。ポテトとドリンク、クッキーとドリンクなどのセットを手頃な価格で提供し、カフェタイム需要の取り込みを狙っています。
店舗デザインの刷新
ゼッテリアの店舗は、モダンで落ち着いたデザインが特徴です。座席の配置や照明にこだわり、ファストフードでありながらゆっくりと食事を楽しめる空間を実現しています。これは「ファストフードなのにゆっくりできる店」というコンセプトに基づいており、従来のファストフードのイメージを覆す試みです。
店舗数の推移
ロッテリアの店舗数は2023年1月の358店舗から、2025年9月時点で209店舗まで減少しました。一方、ゼッテリアは急速に店舗を拡大し、2025年9月時点で76店舗に達しています。2026年春にはロッテリアとゼッテリアの店舗数が逆転する見込みで、最終的には全店舗がゼッテリアに転換される予定です。
ファストフード業界への影響と今後の展望
業界再編の加速
ロッテリアのゼッテリア転換は、日本のファストフード業界における大きな転換点といえます。大手による中小チェーンの買収や統合が進む中、独自性のあるブランドを維持することの難しさが浮き彫りになりました。
日本のハンバーガー系ファストフード市場は7,000億円規模とされ、マクドナルドが約2,951店舗で圧倒的なシェアを持っています。2位のモスバーガーは約1,292店舗で、店舗数では倍以上の差があります。このような寡占化が進む市場で、ロッテリアのような中規模チェーンが独立して生き残ることは容易ではありませんでした。
ゼンショーの次なる一手
ゼンショーにとって、ゼッテリアは牛丼、回転寿司、ファミリーレストランに続く新たな成長の柱となる可能性を秘めています。ハンバーガー市場への本格参入は、同社の事業ポートフォリオをさらに多様化させます。
また、ゼンショーのグループ調達力を活用することで、原材料コストの削減や品質の安定化が期待できます。すき家で培ったオペレーションの効率化ノウハウをゼッテリアに投入することで、競争力を高めていく戦略です。
消費者にとっての変化
消費者にとっては、慣れ親しんだロッテリアの店名が消えることへの寂しさがある一方、ゼッテリアとして提供される商品の品質向上への期待もあります。
絶品バーガーシリーズの拡充や、カフェタイムメニューの導入など、より付加価値の高いサービスが提供される見込みです。ただし、リブサンドのように引き継がれないメニューもあるため、一部のファンにとっては残念な面もあるでしょう。
注意点・展望
よくある誤解
ゼッテリアの「ゼ」がゼンショーに由来するという説がありますが、公式には「絶品バーガー」の「絶」に由来するとされています。また、ロッテリアの完全消滅と捉えられがちですが、海外(韓国、ベトナムなど)ではロッテリアブランドは継続する見通しです。あくまで日本国内でのブランド転換となります。
今後の見通し
2026年3月をめどに国内全店舗がゼッテリアへ転換される予定です。転換に伴い一部店舗は閉店となる可能性もありますが、ゼンショーの投資により新規出店も進む見込みです。
長期的には、ゼンショーグループの経営資源を活用した店舗拡大や、海外展開の加速も期待されます。ハンバーガー市場でマクドナルド、モスバーガーに続く第3勢力として存在感を示せるかが注目されます。
まとめ
1972年に創業し、54年にわたって日本人に愛されてきた「ロッテリア」は、2026年3月をもって国内での歴史に幕を閉じます。エビバーガーや絶品チーズバーガーなど、独自のメニューで日本のファストフード文化に貢献してきたブランドの消滅は、一つの時代の終わりを象徴しています。
しかし、これは単なる終わりではなく、新たな始まりでもあります。ゼンショーHDの傘下で「ゼッテリア」として生まれ変わることで、より品質を重視した商品提供や、効率的な店舗運営が期待できます。外食産業最大手のノウハウと資本力を背景に、ゼッテリアがどのような進化を遂げるのか、今後の展開が注目されます。
参考資料:
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