ロッテリア54年の歴史に幕、ゼンショーの統一ブランド戦略
はじめに
外食大手のゼンショーホールディングスが、ハンバーガーチェーン「ロッテリア」の国内全店を「ゼッテリア」に転換することを発表しました。2026年3月をめどに転換を完了し、1972年に1号店がオープンしたロッテリアは約54年の歴史に幕を降ろします。
ゼンショーホールディングスは「すき家」「はま寿司」などを展開する日本最大の外食チェーンです。M&A(合併・買収)を通じて成長してきた同社は、これまでも買収したブランドの統廃合を進めてきました。
本記事では、ロッテリアからゼッテリアへの転換の背景と、ゼンショーのブランド戦略について詳しく解説します。
ロッテリアからゼッテリアへ
54年の歴史に幕
ロッテリアは1972年に東京・日本橋に1号店がオープンして以来、日本のハンバーガー市場を牽引してきました。「エビバーガー」や「絶品バーガー」といった独自メニューで、マクドナルドやモスバーガーとともに日本のハンバーガー文化を形成してきた存在です。
しかし、2023年にロッテグループからゼンショーホールディングスに全株式が売却され、同年4月よりゼンショー傘下となりました。そして2026年3月、ついにロッテリアブランドは終焉を迎えることになります。
ゼッテリアとは
ゼッテリアは2023年9月にオープンした新業態です。ブランド名は、メイン商品である「絶品バーガー」と、気軽に楽しめるお店という意味を込めた「カフェテリア」を組み合わせて作られました。
1号店は、ロッテリアの旗艦店舗だった田町芝浦店をリニューアルする形で開店。2025年12月時点でゼッテリアは172店舗、ロッテリアは106店舗となっています。
転換の理由
ブランド統一の背景には、運営効率の最大化という経営判断があります。ロッテリアとゼッテリアという2つのブランドが並存する状態では、包材やユニフォーム、販促物、メニュー開発などが二重投資となり非効率です。
また、旧親会社であるロッテブランドからの完全な脱却という意味合いもあります。ゼンショーグループの一員として、新たなブランドアイデンティティを確立する狙いがあります。
ゼッテリアの特徴
プレミアム路線のグルメバーガー
ゼッテリアは、従来のロッテリアよりもプレミアム志向のブランドとして位置づけられています。単品価格は800円〜1000円台と、ファストフードとしてはやや高めの設定です。
ターゲット層もファミリー中心のロッテリアとは異なり、Z世代やトレンド志向の消費者を想定しています。素材やレシピにこだわったハンバーガーを多く揃え、季節限定メニューや地域限定商品も豊富に展開しています。
メニューの違い
ゼッテリアは「絶品バーガー」を中心に展開しており、絶品バーガー6種、その他バーガー9種をラインナップしています。一方、ロッテリアは絶品バーガー2種、その他バーガー13種という構成でした。
同名のハンバーガーでも、ゼッテリア版は野菜が追加されるなど、素材や調理法に違いがあります。ロッテリアの看板メニュー「エビバーガー」は、ゼッテリアでは「えびバーガー」とひらがな表記に変更されています。
カフェ利用を想定した新サービス
ゼッテリアの特徴的なサービスとして、14時からの「カフェコンビ」があります。ポテト+ドリンク、クッキー+ドリンクなど、ドリンクとサイドメニューを気軽なセット価格で楽しめる仕組みです。
店舗デザインもモダンで落ち着いた雰囲気を採用し、座席の配置や照明にこだわることで、ゆっくりと食事を楽しめる環境を整えています。
ゼンショーのM&A戦略
外食産業最大手の成長の軌跡
ゼンショーホールディングスは1982年に弁当の販売事業からスタートしました。しかし、現在のブランドの大半はM&Aを通じてグループに加わったものです。
創業時からの牛丼チェーン「すき家」に加え、2005年に和風ファストフードの「なか卯」を買収。その後も「はま寿司」「ココス」「ビッグボーイ」など、積極的な買収を重ねてきました。現在、国内だけで19ブランドを展開し、小売事業や介護事業を含めると約40ブランドに上ります。
過去最大の買収案件
2023年には、北米と英国を中心に持ち帰りずし店など約3000店を展開するスノーフォックス・トップコの全株式を取得しました。買収価格は約874億5000万円で、同社として過去最高額となりました。
2025年3月末時点で、テイクアウト寿司店舗は9515店舗に達しており、グローバル展開の柱となっています。
グループシナジーの追求
ゼンショーグループの強みは、食材調達・物流・店舗運営機能の共有にあります。グループ内各ブランドは、共通の経営資源を活用することでコスト削減と品質向上を両立しています。
ロッテリア買収においても、ゼンショーグループの食材調達・物流・店舗運営機能が「ロッテリアの事業拡大・発展にシナジー効果をもたらす」と判断されました。
今後の展望
ゼッテリア280店舗体制へ
ゼンショーホールディングスは、ゼッテリアの店舗数を最終的に約280店舗まで増やす方針を示しています。
ただし、現在のロッテリア106店舗がすべてゼッテリアに転換されるわけではありません。一部店舗はそのまま閉店となる予定で、採算性の低い店舗は整理される見込みです。
グローバル展開の加速
ゼンショーホールディングスが2025年5月に公表した中期経営計画では、2028年3月期に連結売上高1兆4810億円(2025年3月期比30.3%増)、営業利益1165億円(同55.1%増)を目指しています。
この成長を牽引するのが、グローバルすき家の海外出店、グローバルはま寿司の海外展開、そしてテイクアウト寿司の拡大です。国内市場の成熟化を見据え、海外展開を加速させる方針です。
注意点・今後の展望
ロッテリアファンへの影響
54年の歴史を持つロッテリアの終焉は、長年のファンにとって寂しいニュースです。特に「リブサンド」などゼッテリアに引き継がれないメニューもあり、思い出の味を惜しむ声がSNS上で広がっています。
ただし、看板商品の「絶品バーガー」や「えびバーガー」はゼッテリアでも継続されるため、主要メニューは引き続き楽しむことができます。
ハンバーガー市場での競争
日本のハンバーガー市場は、マクドナルド、モスバーガー、フレッシュネスバーガーなどが競合するレッドオーシャンです。ゼッテリアがプレミアム路線で差別化を図る戦略が奏功するかどうかが、今後の焦点となります。
近年は「シェイク シャック」「ファイヤーハウス」など海外発のグルメバーガーチェーンも日本市場に参入しており、競争は激化しています。
まとめ
ゼンショーホールディングスによるロッテリアからゼッテリアへのブランド転換は、M&Aで成長してきた同社の典型的な戦略と言えます。二重投資の解消と運営効率の最大化、そして旧親会社からの完全な脱却という複合的な理由がその背景にあります。
54年の歴史を持つロッテリアブランドの終焉は一つの時代の終わりですが、ゼッテリアとして新たなスタートを切ることで、ハンバーガー市場での競争力強化を目指します。
ゼンショーグループの中期経営計画では、国内外での積極的な成長戦略が掲げられています。ゼッテリアがその成長戦略の中でどのような役割を果たすのか、今後の展開が注目されます。
参考資料:
関連記事
ゼンショーがゼッテリアに全面転換、多角化から選択と集中へ
ゼンショーホールディングスがロッテリア全店をゼッテリアに転換し、カフェ事業から撤退。外食業界トップの座を守りながら、40ブランドの統廃合で「勝てる業態」に経営資源を集中する戦略を解説します。
ゼンショーがゼッテリアに賭ける理由—多角化から選択と集中へ
ゼンショーHDがロッテリア全店をゼッテリアに転換し、カフェ事業から撤退。40ブランドの統廃合で「第3の柱」育成に経営資源を集中させます。
ロッテリア54年の歴史に終止符、ゼッテリアへ全店転換
ゼンショーHDが国内ロッテリア全店を2026年3月にゼッテリアへ転換。1972年創業の老舗バーガーチェーンの歴史と、すき家を展開する外食最大手の戦略を解説します。
ロッテリア54年の歴史に幕、ゼッテリア全店転換の背景
ゼンショーHDがロッテリア全店を「ゼッテリア」に転換。1972年から続いた国内ブランドが消滅する経緯と、ゼンショーのバーガー事業戦略を解説します。
すかいらーくがM&Aで成長加速、資さんうどん内製化の狙い
すかいらーくHDが資さんうどんの買収後、メニュー内製化を進め出店拡大へ。マレーシアのしゃぶしゃぶ店買収でアジア展開も。外食大手のM&A戦略を解説します。
最新ニュース
ビットコイン7万ドル台急落、テック株売りが暗号資産に波及
ビットコインが約1年3カ月ぶりの安値となる7万2000ドル台に急落しました。米ハイテク株の売りが暗号資産市場に波及した背景と、MicroStrategyの含み損問題について解説します。
日銀の量的引き締め出遅れと円安の関係を解説
日銀のマネタリーベース縮小が米欧に比べ緩やかな理由と、それが円安に与える影響について解説します。FRB新議長候補ウォーシュ氏の金融政策姿勢にも注目が集まっています。
書店600店の在庫を一元化|返品率30ポイント削減の新システム
紀伊国屋書店、TSUTAYA、日販が出資するブックセラーズ&カンパニーが、56社603店の在庫を横断管理するデータベースを始動。返品率6割減を実現した事例と、出版業界の構造改革を解説します。
中国海警局の尖閣周辺活動が過去最多に、日中の緊張続く
2025年、中国海警局の船舶が尖閣諸島周辺の接続水域に357日出没し過去最多を更新。日本の対応策と偶発的衝突防止の課題を解説します。
中国の土地売却収入がピーク比半減、地方財政に深刻な打撃
中国の地方政府の土地売却収入が2025年も前年比14.7%減少し4年連続の減少を記録。ピークの2021年から52%減となり、不動産不況が地方財政を圧迫し続けています。