マンション維持費が高騰、管理費・修繕積立金の値上げ対策とは
はじめに
都心部を中心にマンション価格が高騰する中、見落とされがちなのが購入後にかかる維持費用の上昇です。管理費や修繕積立金は、5年前と比べて2〜4割ほど値上がりしたとの調査結果が出ています。
国土交通省の調査によると、修繕積立金が不足しているマンションは全体の約37%に上ります。マンションの購入価格だけに目を奪われ、維持費の上昇を見込んでいなければ、家計が行き詰まるリスクがあります。
本記事では、管理費・修繕積立金が上がる理由、値上げのタイミング、そして管理組合や個人ができる対策について詳しく解説します。
管理費・修繕積立金はどれだけ上がっているのか
5年で10〜30%超の上昇
首都圏の中古マンションでは、2023年の管理費の平均が1平方メートルあたり201円、修繕積立金が187円となっています。5年前と比較すると、いずれも10%前後の上昇です。
新築マンションではさらに顕著で、2019年からの5年間で管理費・修繕積立金ともに30%以上の上昇率を記録しています。たとえば70平方メートルのマンションの場合、月額で数千円から1万円以上の負担増となる計算です。
約4割のマンションが積立金不足
国土交通省の調査では、長期修繕計画に対して修繕積立金が不足しているマンションが全体の約37%に上ることが明らかになっています。積立金が足りなければ、大規模修繕工事の際に一時金を徴収するか、工事自体を先送りせざるを得ません。
工事の先送りは建物の劣化を加速させ、将来的にはさらに高額な修繕費用が必要になるという悪循環に陥ります。
なぜ管理費・修繕積立金は上がるのか
人件費の高騰
管理費上昇の最大の要因は人件費です。マンションの管理員、清掃員、設備点検の担当者など、管理業務に関わる人材の確保が年々困難になっています。管理会社自体も深刻な人材不足に直面しており、そのコスト増を管理費に転嫁せざるを得ない状況です。
特に都市部では最低賃金の引き上げも影響しており、管理委託費の値上げ要請が管理組合に届くケースが増えています。
建築コストの上昇
修繕積立金の不足を招いている大きな要因が、建築コストの上昇です。2012年のアベノミクス以降、建築費は右肩上がりで上昇を続けており、2012年から2023年までの上昇率は30%を超えています。
資材価格の高騰と建設作業員の人件費上昇のダブルパンチにより、大規模修繕工事の見積もりが当初の長期修繕計画を大幅に上回るケースが頻発しています。
新築時の低設定という構造的問題
マンションの修繕積立金には構造的な問題があります。新築時には購入者の負担感を軽くするため、修繕積立金が低めに設定される傾向があるのです。「段階増額積立方式」と呼ばれるこの方法では、築年数が経つにつれて積立金が引き上げられます。
国土交通省の調査では、段階増額積立方式を採用している249事例の値上げ幅の平均は約3.58倍でした。新築時に月額7,000円だった場合、最終的には25,000円以上に増額される計算です。
値上げされやすいタイミング
築12〜15年目が最初の山場
マンションの修繕積立金が大きく引き上げられるのは、築12〜15年目が最も多い時期です。多くのマンションで最初の大規模修繕工事が行われるタイミングであり、実際の工事費用と積立金のギャップが顕在化します。
築15年を超えると、設備の交換や更新工事も必要になるため、さらに費用が膨らみます。エレベーター、給排水管、機械式駐車場などの大型設備は更新費用が高額であり、積立金の追加値上げや一時金の徴収につながりやすいポイントです。
管理計画認定制度への対応
2022年に始まったマンション管理計画認定制度に適合するためには、修繕積立金を引き上げなければならないケースも出てきています。認定を受けることで住宅ローンの金利優遇などのメリットが得られますが、その前提として適切な積立金水準が求められます。
管理組合ができる対策
修繕工事の周期見直し
最も効果的な対策の一つが、大規模修繕工事の周期を見直すことです。従来は12年周期が一般的でしたが、建材や防水技術の進歩により、18年や20年に延長できるケースもあります。工事周期の延長は、トータルコストの削減に直結します。
ただし、延長にあたっては建物の劣化状況を専門家に調査してもらうことが不可欠です。安易な延長は建物の健全性を損なうリスクがあります。
管理委託費の見直し
管理会社への委託費が適正かどうかを定期的に検証することも重要です。複数の管理会社から見積もりを取り、競争原理を働かせることで費用を適正化できます。管理会社の変更は手続きが煩雑ですが、年間で数百万円の削減につながるケースもあります。
均等積立方式への変更
段階増額積立方式から均等積立方式に変更することで、将来の急激な値上げを避けられます。国土交通省も修繕積立金の段階的引き上げの増額幅を最大約1.8倍とする方針を示しており、均等方式への移行を推奨しています。
注意点・今後の展望
2026年の区分所有法改正に注目
2026年4月には区分所有法の改正が施行される予定です。特に旧耐震基準で建てられたマンションへの影響が注目されています。修繕や建替えに関する合意形成のルールが変わる可能性があり、管理組合は改正内容を注視する必要があります。
購入前のチェックポイント
マンション購入を検討している場合は、長期修繕計画書と修繕積立金の残高を必ず確認してください。積立金が計画に対して不足している物件は、将来的に大幅な値上げや一時金の徴収が見込まれます。管理費・修繕積立金は今後も上昇する前提で資金計画を立てることが賢明です。
まとめ
マンションの管理費・修繕積立金の上昇は、人件費の高騰、建築コストの増加、新築時の低設定という複合的な要因によるものであり、今後も続く見込みです。約4割のマンションが積立金不足に直面している現状は、放置すれば建物の資産価値の低下につながります。
管理組合としては、修繕工事の周期見直し、管理委託費の適正化、均等積立方式への移行といった対策を早めに検討することが重要です。個人としても、管理組合の活動に積極的に参加し、長期修繕計画の定期的な見直しに関わることで、将来の負担増に備えることができます。
参考資料:
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