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by nicoxz

新築マンションも固定資産税の優遇対象に、修繕積立金の適正化が条件

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はじめに

国土交通省は、新築マンションの分譲時から「将来、固定資産税の減税を受けられる」とうたうことを可能にする新制度の導入を検討しています。毎月の修繕積立金を当初から高めに設定し、計画的に積み立てることなどを条件に、自治体が対象物件を認定する仕組みです。

この制度は、2027年春にも開始される見通しで、マンションの長期的な維持管理を促進することが狙いです。修繕積立金の不足は築年数が経過したマンションの大きな課題となっており、新築時から適切な積立を促すことで、将来の管理不全を防ぐことが期待されています。

マンションが抱える修繕積立金の問題

「積立金不足」の実態

多くの分譲マンションでは、販売時に購入者の負担感を軽減するため、修繕積立金を低く設定する「段階増額積立方式」が採用されてきました。しかし、この方式では築年数が経過するにつれて積立金が不足し、必要な大規模修繕工事を実施できないケースが増えています。

国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)では、適切な修繕積立金の水準が示されていますが、実際にはこの基準を下回るマンションが多いのが現状です。

管理不全マンションの増加

修繕積立金が不足すると、外壁や配管などの劣化が進行しても修繕ができず、建物の安全性や資産価値が低下します。高齢化や空き住戸の増加と相まって、管理が行き届かない「管理不全マンション」が社会問題化しています。

築30年以上のマンションストックは増加の一途をたどっており、この問題への対応は喫緊の課題となっています。

既存の固定資産税減税制度

新築住宅の減額措置

現行制度では、新築住宅に対して固定資産税の減額措置が設けられています。一般の新築住宅は3年間、マンション等の中高層耐火建築住宅は5年間にわたり、固定資産税が2分の1に減額されます。この措置の適用期限は令和8年3月31日までです。

また、認定長期優良住宅に該当する新築マンションの場合は、減額期間が7年間に延長されます。耐震性、省エネ性、維持管理のしやすさなどの基準を満たした住宅が対象です。

マンション長寿命化促進税制

2023年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」は、既存マンションを対象とした固定資産税の減税制度です。管理計画認定を受けたマンションなどで、長寿命化に資する大規模修繕工事が行われた場合、翌年度の建物部分の固定資産税が6分の1から2分の1の範囲で減額されます。

適用期間は令和9年(2027年)3月31日まで延長されており、減額割合は自治体によって異なります。東京23区では2分の1、大阪市では3分の1などとなっています。

新制度の概要

新築マンションへの適用拡大

従来の管理計画認定制度は、2022年から既存マンション向けに開始されたものです。今回の新制度では、これを新築マンションにも拡大し、分譲時から「将来の固定資産税減税」をアピールポイントにできるようにします。

認定の条件として想定されているのは以下の通りです:

  1. 修繕積立金の適正設定: 当初から国交省ガイドラインに基づく適正水準の修繕積立金を設定
  2. 計画的な積立: 段階的な増額ではなく、均等に近い形で計画的に積み立てること
  3. 長期修繕計画の策定: 30年以上かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間の長期修繕計画を策定

2027年春の開始見通し

新制度は2027年春にも開始される見通しです。自治体が対象物件を認定する仕組みとなり、認定を受けたマンションは将来、マンション長寿命化促進税制による固定資産税の減税を受けられる可能性が高まります。

購入者・デベロッパーへの影響

購入者にとってのメリット

新築マンション購入時に、将来の固定資産税減税の可能性が明示されることは、購入判断の重要な材料となります。また、適正な修繕積立金が設定されていることで、将来の積立金不足による値上げリスクや、大規模修繕の際の一時金徴収リスクを軽減できます。

結果として、長期的な住居費の見通しが立てやすくなり、資産価値の維持にもつながることが期待されます。

デベロッパーの販売戦略への影響

デベロッパーにとっては、「将来の固定資産税減税対象」という新たなセールスポイントが生まれます。一方で、当初から高めの修繕積立金を設定することは、毎月の支払額増加につながるため、販売価格や管理費とのバランスを慎重に検討する必要があります。

従来、販売しやすさを優先して修繕積立金を低く設定する慣行がありましたが、この新制度は業界全体の意識改革を促す可能性があります。

注意点と今後の課題

認定基準の詳細

現時点では認定基準の詳細は明らかになっていません。どの程度の修繕積立金水準が求められるのか、長期修繕計画の具体的な要件は何かなど、制度設計の詳細によって実際の影響は大きく変わってきます。

既存マンションとの整合性

既存のマンション長寿命化促進税制では、「修繕積立金を認定基準未満から認定基準以上に引き上げた場合のみ」減税対象となるという条件があります。新築時から適正水準を設定した場合、この「引き上げ」要件をどう扱うかは重要な論点です。

国土交通省の試算によると、現行の減税対象となり得るマンションは、築20年以上のマンション全体の約1%にすぎないとされています。新制度がより多くのマンションに恩恵をもたらすものになるかどうか、注視が必要です。

自治体による運用の違い

減税割合は自治体の条例で定められるため、地域によって恩恵の大きさが異なります。例えば、現行制度では東京23区の2分の1から大阪市の3分の1まで開きがあります。

新制度においても同様の地域差が生じる可能性があり、マンション購入時には所在地の自治体の制度を確認することが重要になります。

まとめ

国土交通省が検討する新築マンション向けの固定資産税優遇制度は、マンション管理の根本的な課題である「修繕積立金不足」の解消に向けた重要な一歩です。分譲時から適正な積立を促すことで、将来の管理不全を防ぎ、マンションの長期的な資産価値維持につなげることが期待されます。

購入者にとっては、将来の税負担軽減と資産価値維持という二重のメリットが見込まれます。デベロッパーにとっても、新たな付加価値創出の機会となるでしょう。2027年春の制度開始に向けて、今後発表される詳細な認定基準に注目が集まります。

参考資料:

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