マンション高騰が衆院選の争点に、各党の住宅政策を読み解く
はじめに
2026年1月27日に公示された第51回衆議院議員総選挙で、都市部のマンション価格高騰が大きな争点として浮上しています。東京23区の新築マンション平均価格が1億円を超える状況が常態化するなか、与野党は外国人による投機的取引の抑制や家賃支援、空室税の導入など、さまざまな住宅政策を公約に掲げています。
しかし、マンション価格の高騰には投資マネーの流入だけでなく、建設業界の人手不足や資材費の上昇といった構造的な要因が深く関わっています。本記事では、各党の住宅政策の内容を整理するとともに、価格高騰の根本的な原因と政策の実効性について解説します。
各党の住宅政策を比較する
自民党・維新:外国人投機の抑制に重点
自民党は「首都圏などの投機的売買の抑制」を公約に掲げています。高市政権は、不動産の移転登記時に申請者の国籍記入を義務化し、都市部の新築マンションを対象に外国人による取得や投機的売買の実態調査を行う方針を打ち出しました。
日本維新の会も同様に、外国人による不動産取得への規制強化を訴えています。参政党はさらに踏み込み、「外国人による土地購入は基本禁止」という強硬な立場を示しています。
ただし、外国人の不動産取得規制には国際協定上の制約があります。日本が締結している投資協定や経済連携協定(EPA)では、外国人投資家への内国民待遇が規定されているケースが多く、一律の規制は国際法上の問題を生じさせる可能性があります。
国民民主党:空室税の導入を提案
国民民主党は2025年12月、住宅価格高騰対策として「空室税」導入法案を衆議院に提出しました。この法案は、投機的な取引により住宅価格が高騰している地域を対象に、居住目的でない住宅に対して市町村が「非居住住宅税」を課すことを可能にするものです。
税収の使途としては、住宅購入支援や家賃補助への充当が想定されています。カナダのバンクーバーやシンガポールなど、海外では類似の制度が導入されており、一定の効果を上げている事例もあります。
一方で、空室の定義や課税対象の線引きが難しいという実務上の課題も指摘されています。転勤や相続で一時的に空き家になっているケースと、純粋な投機目的の保有をどう区別するかが論点です。
中道改革連合:家賃補助で生活支援
立憲民主党と公明党の衆院議員が結成した中道改革連合は、「家賃補助」を主要公約のひとつに掲げています。マンション価格の高騰が賃貸市場にも波及し、東京23区ではファミリー層向けマンションの募集家賃が可処分所得の4割を超える状況となっているためです。
家賃補助は生活困窮者への即効性がある施策ですが、需要を刺激することで家賃相場がさらに上昇するリスクも指摘されています。補助金が家主側の値上げに吸収されてしまう可能性があるため、制度設計には慎重さが求められます。
マンション高騰の構造的要因
建設コストの上昇が価格を押し上げる
マンション価格高騰の最大の要因は、建設コストの構造的な上昇です。世界的な原材料価格の高騰と円安の影響で、建設資材の価格は大幅に上昇しています。パーツによっては8割以上値上がりしているものもあります。
建設業界では慢性的な人手不足も深刻です。高齢化による退職者の増加に加え、若い世代の職人が不足しています。2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、工期が長期化する傾向にあります。
こうした供給側の制約は、政策的な需要抑制では解消できない問題です。不動産経済研究所によると、2026年の首都圏新築マンション供給戸数は2万3,000戸と、過去50年で最低水準になる見通しです。供給が減れば、たとえ需要を抑えても価格は下がりにくい構造があります。
都市部への人口集中という根本問題
もうひとつの構造的要因は、東京をはじめとする大都市への人口集中です。日本全体では人口減少が進んでいるにもかかわらず、東京圏への転入超過は続いています。雇用機会や教育環境を求めて都市部に集まる人々の住宅需要は底堅く、価格を下支えしています。
住宅政策に詳しい専門家からは、「普通の人が都心部に家を持てていたのは、ここ25年程度の特殊な時期だった」との指摘もあります。バブル崩壊後のデフレ期に価格が下がっていた時期が「ボーナスタイム」であり、本来の都市部の住宅価格水準に戻りつつあるという見方です。
注意点・展望
各党の住宅政策にはそれぞれ限界があることを認識しておく必要があります。外国人投機の抑制は国際協定との整合性が課題であり、空室税は実務上の運用が難しく、家賃補助は家賃相場の上昇を招くリスクがあります。
いずれの政策も、建設コストの上昇や人口集中という構造的要因に直接アプローチするものではありません。短期的な対症療法としての効果はあり得ますが、住宅価格の根本的な抑制には、建設業の生産性向上や地方分散の促進といった中長期的な取り組みが不可欠です。
2月8日の投開票に向けて、各党の住宅政策がどこまで具体性を持って語られるかが注目されます。有権者としては、公約の表面的なインパクトだけでなく、構造的要因への対応策があるかどうかを見極めることが重要です。
まとめ
2026年衆院選では、マンション価格の高騰が都市部を中心に大きな争点となっています。外国人投機抑制、空室税、家賃補助など各党の政策アプローチは異なりますが、いずれも構造的な価格上昇要因を完全に解消するものではありません。
住宅問題に関心のある有権者は、各党の公約が短期的な対症療法にとどまるのか、それとも建設業の生産性向上や地方創生といった根本的な解決策を含んでいるのかを吟味した上で、投票先を判断することが大切です。
参考資料:
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