Research

Research

by nicoxz

東京一極集中に変化の兆し、転入超過4年ぶり縮小の背景

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

総務省が発表した2025年の住民基本台帳人口移動報告で、東京都への転入超過数が4年ぶりに縮小したことが明らかになりました。長年続いてきた「東京一極集中」に、変化の兆しが見え始めています。

この背景には、東京23区におけるマンション価格の異常な高騰があります。新築マンションの平均価格が1億円を超える状況が続き、一般的な所得層にとって23区内での住宅購入が現実的な選択肢ではなくなりつつあるのです。

本記事では、人口移動データの詳細分析から、マンション価格高騰の実態、そして今後の東京圏の人口動態について解説します。

2025年人口移動報告が示す変化

転入超過数の縮小傾向

2025年の東京都への転入超過数は6万5,219人となり、前年の7万9,285人から1万4,066人減少しました。転入超過数が縮小するのは、新型コロナウイルス禍だった2021年以来、4年ぶりのことです。

都道府県別にみると、転入超過となっているのは東京都、神奈川県、埼玉県など7都府県にとどまり、残りの40道府県は人口が流出する「転出超過」の状態にあります。東京への一極集中という基本的な構造は維持されているものの、そのスピードには明らかな鈍化が見られます。

年齢別に見る人口移動の特徴

東京都への転入を年齢別に分析すると、20〜24歳が5万7,263人の転入超過と突出しています。進学や就職を機に上京する若年層の流入は依然として活発です。

一方で、0〜9歳の子育て世帯や35歳以上の層では転出が転入を上回っています。転出超過が最も多いのは60〜64歳で4,222人でした。定年退職を機に東京を離れる動きや、子育て世帯が住宅費の安い郊外・地方へ移住する傾向が読み取れます。

東京圏全体の動向

東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)全体では11万2,738人の転入超過となりましたが、前年から6,599人縮小しています。30年連続の転入超過を維持しているものの、その規模は縮小傾向にあります。

注目すべきは、東京都から周辺県への人口移動です。埼玉県へは東京都からの転出超過が続いており、千葉県と神奈川県は2024年から転入超過に転じました。都心から周辺県への人口流出が加速していることが分かります。

マンション価格高騰の実態

新築マンション価格は3年連続1億円超え

不動産経済研究所の調査によると、2025年の東京23区における新築分譲マンションの平均価格は1億3,613万円となり、前年比21.8%増という急騰を記録しました。これで3年連続での1億円超えとなっています。

2025年5月には平均1億4,049万円という過去最高水準を記録し、前年同月比で36.1%もの上昇を示しました。1平方メートルあたりの単価は211.2万円に達し、一般的な勤労世帯の年収では到底手が届かない価格帯になっています。

中古マンションも「億ション」化

価格高騰は新築市場だけではありません。不動産情報サービスLIFULLの調査では、2025年に掲載された東京23区の中古マンションのうち、築20年以上25年未満の物件でも平均価格(70平方メートル換算)が1億201万円に達しました。

かつては「築古なら手が届く」と考えられていた中古マンション市場でも、1億円超えが当たり前の状況になりつつあります。住宅価格の高騰は深刻な社会問題となってきています。

エリア別格差も拡大

23区内でもエリアによる価格格差が顕著です。都心6区(千代田・中央・港・新宿・渋谷・文京)の平均価格は1億9,503万円と、2億円の大台が目前に迫っています。特に港区は平方メートル単価400万円超と、他区を大きく引き離す最高価格帯となっています。

興味深いのは、従来は比較的手頃とされてきた周辺区でも価格上昇が進んでいることです。複数の大型マンションプロジェクトが進む中野区では、わずか2年間で平方メートル単価が100万円以上上昇しました。都心で起きた「局地バブル」が周辺エリアにも拡大している状況です。

周辺県への人口流出が加速

「東京敬遠」の動き

マンション価格の高騰を受けて、住宅購入を検討する層の間で「東京敬遠」の動きが広がっています。特に若い子育て世帯にとって、23区内でのマイホーム取得は現実的ではなくなりつつあります。

その受け皿となっているのが、神奈川県・埼玉県・千葉県といった周辺県です。これらの地域では都心へのアクセスを確保しながら、東京23区と比較して大幅に安い価格で住宅を購入できます。

共働き世帯の選択

総務省の「就業構造基本調査」によれば、東京23区の「夫婦と子供から成る世帯」のうち、年収1,000万円以上の世帯が56.2%と過半数を占めています。特に妻が正規雇用の世帯では69.7%と約7割が年収1,000万円以上です。

フラット35で試算すると、年収1,000万円での借入可能額は約9,000万円です。頭金を1,000万円以上用意できれば、計算上は億ションに手が届きます。しかし、それでも購入できるのは高所得の共働き世帯に限られ、一般的な世帯には高いハードルとなっています。

通勤時間と「タイパ」の葛藤

共働き世帯にとって、郊外への移住は通勤時間の増加という大きなトレードオフを伴います。子育て中の家庭では「タイパ(タイムパフォーマンス)」が極めて重要であり、通勤時間の増加は家事・育児に充てる時間の減少を意味します。

このジレンマが、東京23区とその周辺地域のマンション価格差を維持する一因となっています。利便性を重視して都心に住み続けるか、住宅費を抑えて郊外に移るか。多くの世帯がこの難しい選択を迫られています。

注意点・今後の展望

一極集中の構造は維持

転入超過数が縮小したとはいえ、東京一極集中の基本的な構造が変わったわけではありません。20〜24歳の若年層は依然として大量に東京へ流入しており、企業の本社機能や大学の集中という構造的要因は解消されていません。

今回の縮小は、住宅価格高騰という「押し出し要因」による影響が大きく、東京の吸引力自体が弱まったわけではないと見るべきです。

マンション価格の見通し

2026年の首都圏マンション発売戸数は前年比4.7%増の2万3,000戸が見込まれています。しかし、建設費や人件費の高止まりが続いており、価格が下落に転じる可能性は低いと予想されています。

用地取得の難しさや建築コストの上昇から、デベロッパーが新規プロジェクトを控える動きもあり、供給不足が価格を下支えする構造が続く見通しです。

外国人の動向にも注目

2025年の人口移動報告では、外国人の転出者数(5万4,236人)が転入者数(5万3,858人)を上回りました。円安の長期化や生活コストの上昇が、外国人労働者の定着にも影響を与えている可能性があります。

まとめ

2025年の人口移動報告は、東京一極集中に変化の兆しが見えることを示しました。転入超過数の4年ぶり縮小の背景には、新築マンション平均価格1億円超えという異常な住宅価格高騰があります。

23区内での住宅取得が難しくなる中、周辺県への人口流出が進んでいます。ただし、若年層の流入は続いており、一極集中の構造自体が崩れたわけではありません。

住宅を購入する際は、価格だけでなく通勤時間や生活利便性、将来の資産価値など、多角的な視点からの検討が重要です。今後も不動産市況と人口動態の変化を注視していく必要があるでしょう。

参考資料:

関連記事

最新ニュース