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by nicoxz

三菱電機、希望退職4700人で業績下方修正の背景

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はじめに

三菱電機は2026年2月3日、2026年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比11%増の3600億円になる見通しだと発表しました。従来予想の3700億円から100億円の下方修正となります。

その主因は、希望退職募集に関わる費用が当初想定から約600億円膨らみ、通期で1000億円を計上することになったためです。希望退職にはグループ全体で約4700人が応募し、単体では2378人と従業員全体の5.6%に達しました。

3期連続で最高益を更新する見通しの中での大規模な人員削減は、いわゆる「黒字リストラ」として注目を集めています。本記事では、三菱電機の希望退職の背景と、業績への影響、そして日本企業に広がる構造改革の潮流について解説します。

希望退職の概要と業績への影響

4700人が応募した希望退職

三菱電機は2025年9月、今年3月15日時点で満53歳を過ぎて勤続3年以上の正社員と定年後の再雇用者を対象に、早期希望退職を募集すると発表していました。その結果、グループ全体で約4700人が応募し、単体では2378人が希望退職に手を挙げました。

単体の応募者数は全従業員の5.6%に相当し、当初の想定を大きく上回りました。退職者には特別一時金の支給や再就職支援などが提供されます。

1000億円の費用計上と下方修正

希望退職の対応費用は2025年4〜12月期に743億円を計上し、通期では1000億円に達する見込みです。これは従来想定から約600億円の増加となり、業績予想の下方修正につながりました。

2025年4〜12月期の連結決算は、売上高が前年同期比4%増の4兆1560億円、最終利益は20%増の2982億円と堅調でした。しかし、通期の純利益予想は3600億円と、市場予想平均(QUICKコンセンサス3654億円)を下回る水準となっています。

来期以降は年間500億円のコスト削減

藤本健一郎CFOは決算説明会で、人員減少に伴う費用削減効果について「概算で来年度以降(連結で)約500億円の費用押し下げ効果を見込む」と説明しました。今期の費用1000億円は2年で回収できる計算となり、中期的には収益改善に寄与する見通しです。

最高益でも構造改革を進める理由

過去の経営判断への反省

業績好調にもかかわらず三菱電機が大規模な希望退職に踏み切った背景には、過去の経営に対する反省があります。三菱電機の阿部CHRO(最高人事責任者)は、リーマン・ショック時にも黒字を維持して社会的に評価されていたことが「逆に甘えや油断につながった」と述べています。

「やるべき時に事業や人材面でシビアな手を打てなかった」という苦言は、過去の経営陣に向けられたものです。管理職ポストがなかなか空かず、若手の登用タイミングに遅れが出始めていることも、今回の決断の背景にあります。

8000億円規模の事業見直し

三菱電機は2025年5月、売上高で計8000億円分の事業について撤退も視野に継続を判断すると発表しています。主に自動車機器やFA(ファクトリーオートメーション)システムなど、成長性や収益性に課題がある事業を見極め、事業ポートフォリオの選別を進める方針です。

漆間啓社長は「大きく事業構造を見直し、会社価値を飛躍させるために中身を抜本的に見直す」と語っています。FAシステム事業は2025年3月期の売上高営業利益率が6.4%と前期から約5ポイント悪化し、カーナビからの撤退を表明済みの自動車機器事業も3.9%と収益性に課題を抱えています。

すべての選択肢を排除しない

2026年2月3日の決算説明会で藤本CFOは、事業ポートフォリオの見直しについて「すべての選択肢を排除することなく」検討を進めていると説明しました。「今年度中に何らかの決断をすることに変わりない」と述べ、売却や撤退を含む抜本的な見直しを示唆しています。

工場自動化や空調冷熱など成長性の高い事業に集中投資する一方、低収益事業は転換が難しければ売却や撤退も検討する方針です。すでに液晶事業の縮小や工業用ミシン事業の合弁化なども決定しています。

広がる「黒字リストラ」の潮流

上場企業の6割以上が黒字でリストラ

三菱電機の動きは、日本企業全体のトレンドを反映しています。2025年12月上旬までに判明した上場企業の早期・希望退職募集は42社、人数は1万2479人に達しました。これはコロナ禍前の2019年の1万1351人を上回るハイペースです。

注目すべきは、直近決算の黒字企業が28社と全体の66.6%を占めている点です。パナソニック、マツダ、三菱ケミカルなど各業界の大手が名を連ねており、黒字だからこそ人員削減に動いた年だったといえます。

黒字リストラの特徴と目的

従来の「赤字リストラ」がコスト削減を主目的とした後ろ向きな延命策であるのに対し、「黒字リストラ」は未来への投資という側面が強いとされています。業績や財政が好調なうちに、既存事業の整理と成長分野への資源再配分、年代や専門分野など人員構成の見直しを行うのが狙いです。

業種別では製造業が35社と8割以上を占めており、大手メーカーの構造改革を反映しています。対象は主に中高年層で、パナソニックは40〜59歳、三菱電機は53歳以上、明治HDは50歳以上の管理職・総合職を対象としています。

人材ミスマッチの解消

黒字リストラのもう一つの側面は「人材のミスマッチ解消」です。M&Aの一般化、DXの推進、そして社員の高齢化という事業環境の変化に伴い、既存の人材構成と必要とされるスキルセットのギャップが拡大しています。

企業としてはリスキリング(学び直し)を推進しつつも、すべての社員が新たなスキルを習得できるわけではありません。余力があるうちに人員構成を見直し、成長分野に適した人材配置を進める動きが広がっています。

今後の展望と注意点

2026年も黒字リストラは継続か

2026年も大手企業は構造改革による体質強化の一環として、早期・希望退職を進める可能性が高いとみられています。若年層への賃上げが進む一方で、中高年にとっては厳しい雇用環境が続く可能性があります。

三菱電機の例が示すように、最高益を更新中でも構造改革を進める企業は増えており、「黒字だから安心」という時代は終わりつつあります。

従業員と投資家への影響

従業員にとっては、年齢や職種によっては希望退職の対象となるリスクを認識しておく必要があります。一方、投資家にとっては、短期的な費用計上による業績悪化よりも、中長期的な収益力向上を評価する視点が求められます。

三菱電機の場合、今期の費用1000億円は来期以降の年間500億円のコスト削減で2年で回収できる見込みであり、構造改革の効果が順調に発現すれば企業価値の向上につながる可能性があります。

まとめ

三菱電機の希望退職募集は、4700人という想定を上回る応募があり、1000億円の費用計上と業績下方修正につながりました。しかし、その背景には8000億円規模の事業見直しという大胆な構造改革があり、来期以降は年間500億円のコスト削減効果が見込まれています。

最高益更新中でも人員削減を進める「黒字リストラ」は、日本の大手製造業に広がるトレンドとなっています。企業は余力があるうちに事業ポートフォリオを見直し、成長分野への経営資源シフトを加速させています。従業員にとっても投資家にとっても、こうした構造変化を理解した上での対応が求められています。

参考資料:

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