2026年衆院選で候補乱立、多党化で二大政党制は遠のく
はじめに
2026年2月8日に投開票を迎える衆議院選挙では、与野党を問わず候補者が乱立し、これまで見られた「一騎打ち」の構図が大きく崩れつつあります。1994年に導入された小選挙区比例代表並立制は、二大政党制の実現を目指したものでしたが、約30年を経た現在、むしろ多党化が進行しています。
この記事では、候補者乱立の背景にある政党間の力学、小選挙区制度における死票問題、そして選挙制度改革の議論について詳しく解説します。有権者として投票する際の判断材料となる情報をお届けします。
候補者乱立の現状と背景
自民・維新連立でも選挙協力は行わず
2025年10月に誕生した高市早苗政権では、自民党と日本維新の会が連立政権を組んでいます。しかし、維新は閣僚を出さない「閣外協力」にとどまり、選挙においては独自路線を貫く姿勢を示しています。
自民党の鈴木俊一幹事長は記者会見で「基本的に選挙協力は行わない」と明言しました。維新が地盤とする関西圏を中心に、両党は衆院小選挙区で激しく争ってきた経緯があり、連立を組んでいても選挙区調整は困難な状況です。
これにより、同じ与党内でありながら候補者が競合するという、小選挙区制度では異例の事態が生じています。
野党側も候補者調整が進まず
野党側でも候補者の一本化は進んでいません。立憲民主党と公明党が新党「中道改革連合」を結成したことで、一定の選挙協力が実現した地域もありますが、国民民主党は独自に候補者を積極的に擁立しています。
国民民主党は「現職不可侵」とされてきた立憲民主党の現職がいる選挙区にも候補者を立てる方針を示しており、野党票の分散が懸念されています。複数の野党候補が票を分け合うことで、結果的に自民党候補が漁夫の利を得るケースも予想されます。
小選挙区制度と死票問題
小選挙区制の仕組みと本来の狙い
小選挙区制は、1選挙区から議員1名のみを選出する制度です。イギリスやアメリカで見られるように、この制度は二大政党制につながりやすいとされてきました。1994年の選挙制度改革では、政局の安定と政権交代可能な二大政党制の実現が目指されました。
小選挙区制のメリットとしては、各政党から基本的に1人の候補者しか出ないため争点が明確になること、選挙区が狭いため有権者が候補者を知りやすいこと、選挙費用が抑えられることなどが挙げられます。
多党化で増加する死票
しかし、多党化が進む現状では、小選挙区制の欠点が顕在化しています。最大の問題は「死票」の増加です。
死票とは、当選者以外に投じられた票のことです。例えば、3人の候補者が立候補した選挙区で、有効投票数の40%を得た候補者が当選した場合、残りの60%の票は死票となります。候補者が乱立すればするほど、当選に必要な得票率は下がり、死票の割合は増加します。
このような状況が多くの選挙区で発生すると、得票総数では劣る政党が議席数で圧勝するという「民意の歪み」が生じる可能性があります。
二大政党制は実現しなかった
小選挙区制度を導入してから約30年、政権交代は2009年と2012年の2回起こりましたが、二大政党制は実現できませんでした。自民党の長期政権が続く中、いわゆる「1.5大政党制」の状態が続いています。
石破茂元首相は「二大政党制に収れんすると考えたのは間違いだった。制度さえ入れれば実現すると思っていたのは、私の考えの足らざるところだった」と振り返っています。
選挙制度改革の議論
現行制度への批判
小選挙区制度に対しては、死票が多くなること、少数政党に不利であること、一票の格差問題が解消されないことなど、様々な批判があります。また、世襲議員が有利になりやすいこと、政策通の議員が減少することなども課題として指摘されています。
学術的な観点からは、小選挙区制で二党制を実現するためには「社会が比較的均質的で、多数派・少数派が入れ替え可能であること」が条件とされています。この条件を満たさない場合、小選挙区制の採用は一党優位制をもたらすおそれがあるとの指摘もあります。
改革の方向性
選挙制度改革については、比例代表制の比重を高めるべきという意見、中選挙区制への回帰を求める意見など、様々な提案がなされています。ただし、現行制度で当選している議員にとって、制度変更は自らの立場を危うくする可能性があるため、改革は容易ではありません。
今後の展望と有権者への影響
短期決戦の影響
今回の衆院選は解散から投開票まで16日間という戦後最短の短期決戦です。この短い期間で有権者が十分な情報を得て判断することは困難であり、候補者の知名度や政党のイメージに左右されやすい選挙となる可能性があります。
選挙が多すぎる問題
2024年の衆院選から約1年4カ月で3回目の国政選挙となる今回の衆院選について、選挙が多すぎるとの批判もあります。選挙が頻繁に行われると、政党や政治家は長期的な視点を見失いがちになり、社会保障改革や雇用制度改革など、痛みを伴う構造改革が先送りされる傾向があります。
まとめ
2026年衆院選では、与野党ともに候補者が乱立し、小選挙区制度が前提としていた「一騎打ち」の構図が崩れています。これにより死票が増加し、民意が議席数に正確に反映されない可能性があります。
小選挙区制度の導入から約30年、当初目指された二大政党制は実現せず、むしろ多党化が進んでいます。選挙制度改革の議論は今後さらに活発化すると予想されますが、有権者としては現行制度の下で、各候補者の政策や資質を見極めて投票することが求められます。
参考資料:
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