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by nicoxz

ニデック改善計画が示す脱・永守経営と企業風土改革

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はじめに

ニデック(旧日本電産)は2026年1月28日、内部管理体制の改善計画を東京証券取引所に提出しました。不適切会計の疑義が浮上して以来、同社が公式に原因分析と改善策を示した初めての包括的な文書です。

計画では、問題の根本原因を創業者・永守重信氏が主導した「過度な株価至上主義」と位置づけ、トップダウンによる利益目標の策定方法を改めると明記しました。永守氏は2025年12月に取締役を辞任し、非常勤の名誉会長に退いていますが、改善計画はさらに踏み込んだ「脱・永守経営」を打ち出しています。

本記事では、ニデックの不適切会計問題の経緯と、改善計画の内容を解説します。

不適切会計問題の全容

発覚の経緯

ニデックの不適切会計問題は、2025年9月3日に同社が不適切な会計処理の可能性を発表したことから始まりました。当初は中国子会社での問題が発端でしたが、調査が進む中で、イタリア、スイス、中国にまたがるグループ会社で広範な問題が見つかりました。

具体的には、売上高の水増し計上、資産評価減の時期の恣意的な操作、通関申告の誤り、日本法の上限を超える配当の支払いなど、多岐にわたる不正が疑われています。

問題の規模

同社の元中枢幹部は、減損の先送りだけで1000億円を超える規模に達していたと証言しています。財務面への影響も深刻で、2025年度第2四半期の営業利益は前年同期の1205億円から211億円へと82.5%の急落を記録しました。また中間配当は無配となっています。

特別注意銘柄への指定

2025年10月末、東京証券取引所はニデック株を「特別注意銘柄」に指定しました。この指定は1年間の改善期間を伴い、改善が不十分と判断された場合は上場廃止に至るリスクがあります。2026年10月までに内部管理体制の改善を示す必要があり、今回の改善計画提出はその第一歩です。

改善計画の核心:脱「永守経営」

「株価至上主義」との決別

改善計画で最も注目すべきは、問題の原因を「成長を示し続けるための過度な株価至上主義」と明確に位置づけた点です。永守氏の経営手法は「計画未達は罪悪、赤字は犯罪」という強烈なプレッシャーで知られていました。高い業績目標を設定し、その達成を厳しく求めるトップダウン型の経営スタイルが、会計数値の操作という不正の温床となったと分析されています。

改善計画では、利益目標の策定プロセスをトップダウンからボトムアップへと転換し、現場の実態に即した計画を立てる仕組みに改めるとしています。

永守氏の経営関与の排除

永守氏は2025年12月19日に取締役を辞任し、非常勤の名誉会長に退きました。辞任に際して「ニデックの企業風土は私が築いた」と認め、「世間の皆様にご心配をおかけし、申し訳なく思う」とコメントを発表しています。

改善計画では、永守氏の意向を優先する企業風土が内部統制を脆弱にしたと明記され、今後の経営への関与を排除する方針が示されました。ただし、永守氏は改善計画の策定にあたりヒアリングの対象にはなっていません。岸田光哉社長は、第三者委員会の調査結果次第では永守氏への処分も排除しないと述べています。

新組織の設立

ニデックは2026年2月1日付で企業風土改革を推進する新組織を設立すると発表しました。ガバナンス強化と内部統制の再構築を専門的に進める体制を整えます。改善計画自体は、2025年10月に設置された「ニデック再生委員会」が役員や国内外のグループ役職員へのヒアリングをもとに策定したものです。

注意点・展望

実態解明は道半ば

今回の改善計画は、ニデック自身が策定した内部管理体制の改善策であり、不適切会計の全容解明を行っている第三者委員会の調査はまだ完了していません。第三者委員会は2026年2月末をめどに一定の調査結果をまとめ、その後に最終報告書を発表する予定です。

不適切会計の具体的な金額や対象期間、関与した役職員の範囲など、核心的な事実はこの報告書で明らかになります。改善計画の実効性も、調査結果の内容によっては修正を迫られる可能性があります。

上場維持の行方

特別注意銘柄の解除には、東証が改善計画の実行状況を十分と認める必要があります。形式的な計画提出だけでは不十分であり、実際に企業風土が変わったかどうかが問われます。2026年10月の期限までに成果を示せるかが、ニデックの上場維持にとって重要な分水嶺となります。

まとめ

ニデックの改善計画は、創業者主導の経営からの脱却を明確に打ち出した点で、同社の歴史における大きな転換点です。しかし、第三者委員会の調査報告はまだ完了しておらず、不適切会計の全容と経営責任の所在はこれから明らかになります。

投資家や取引先にとっては、改善計画の実行状況と第三者委員会の報告書の内容を注視することが重要です。ニデックが真の企業風土改革を実現できるかどうかは、計画の策定よりも、その実行力にかかっています。

参考資料:

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