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by nicoxz

ニデック不適切会計の原因と改善計画の全容

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はじめに

電子部品大手のニデック(旧・日本電産)が2026年1月28日、東京証券取引所に対して内部管理体制の改善計画・状況報告書を提出しました。同社は2025年に相次いで発覚した不適切な会計処理をめぐり、東証から「特別注意銘柄」に指定されています。

改善計画では、不適切会計の根本原因を創業者・永守重信氏による「過度な株価至上主義」と明確に位置づけました。かつて8兆円を超えた時価総額は約2.4兆円まで急落しており、経営の立て直しは喫緊の課題です。本記事では、問題の経緯から改善計画の具体的内容、今後の見通しまでを詳しく解説します。

不適切会計問題の経緯

発覚から特別注意銘柄指定まで

ニデックの不適切会計問題は、イタリア子会社における関税支払いの問題や、中国子会社での不適切な会計処理疑惑などが相次いで発覚したことに端を発します。2025年9月に第三者委員会が設置され、同月には監査法人PwCジャパンが決算に対して「意見不表明」という異例の判断を下しました。

その後、同年10月には東証が同社の株式を「特別注意銘柄」に指定。さらに11月には日経平均株価の構成銘柄からも除外される事態に至りました。2025年11月時点で877億円の損失計上が発表されましたが、第三者委員会の調査は継続中であり、今後さらに修正が生じる可能性もあります。

永守氏の辞任

2025年12月19日、創業者の永守重信グローバルグループ代表(当時81歳)が取締役などの全役職を辞任し、非常勤の名誉会長に就任すると発表されました。辞任は本人の意向によるものとされています。この発表を受けて、企業風土改革が加速するとの期待から同社の株価は大幅に上昇しました。

改善計画が示した問題の本質

「過度な株価至上主義」とは何だったのか

改善計画書は、不適切会計の根本原因として「成長を示し続けるための過度な株価至上主義」を挙げました。永守氏が株価や時価総額の維持・向上を過度に重視する傾向が強く、その意向が組織全体に浸透していたことが問題の背景にあるとしています。

具体的には、短期的な利益を最優先し、目標未達を許容しない企業風土が形成されていました。減損損失の先送りが1,000億円超にのぼったとの証言も出ており、数字の操作が常態化していた実態が浮かび上がっています。

忖度文化の蔓延

改善計画では「元代表の意思を周囲の幹部が忖度していた」「承認を得るためにどうするかということに意識が向いていた」という組織的な問題も指摘されました。この忖度文化は経理部門にまで侵食し、会計の独立性・客観性が損なわれていたとされています。

トップダウンで設定される高い利益目標に対し、現場が「もの言えぬ」状態に陥っていたことが、不正を見過ごす構造を生み出していたのです。

改善計画の具体策と今後の道筋

組織改革と内部統制の強化

ニデックは岸田光哉社長をトップとした再生委員会を設け、企業文化やガバナンスなど9つのワーキングチームで約400人から聞き取り調査を実施しました。その結果を踏まえ、以下の改善措置が打ち出されています。

まず、内部監査・内部通報・懲戒の厳格化により、コンプライアンス違反を発見・是正する体制を強化します。また、トップダウンによる利益目標策定の見直しや、人事評価制度の改革も盛り込まれました。

企業風土改革の新組織

特に注目されるのが、2026年2月1日付で設立される企業風土改革の推進組織です。若手社員がチームリーダーを務め、社員の意見を経営層に直接伝達する仕組みを構築します。「もの言える風土」への転換を目指す象徴的な取り組みといえます。

上場廃止リスクと今後のスケジュール

第三者委員会は2026年2月末をめどに一定の調査結果をまとめる予定です。その後、最終報告書が提出されます。改善計画に基づく措置は2026年10月までに実施・運用される計画です。

特別注意銘柄の指定から1年後の審査で、内部管理体制が十分に改善されていないと判断された場合には、上場廃止となるリスクがあります。ただし、同社の純資産は前期末で約1兆7,000億円あり、財務基盤が大きく揺らぐ状況ではないとの見方もあります。過去にオリンパスの不正会計でも上場廃止には至らなかった前例があり、証券アナリストの間では上場維持の可能性が高いとの見方が多いです。

注意点・展望

ニデックの事例は、創業者のカリスマ的リーダーシップが企業統治のリスクにもなり得ることを示しています。「永守イズム」と呼ばれた強力なトップダウン経営は、急成長期には大きな推進力となりましたが、組織が巨大化するにつれて内部統制の機能不全を招きました。

今後の焦点は、企業風土改革が実質的に機能するかどうかです。形式的なガバナンス強化にとどまらず、現場レベルで「もの言える」文化が根付くかが、同社の再生を左右します。投資家にとっては、2月末の第三者委員会報告と、その後の東証の審査結果が重要な判断材料となります。

まとめ

ニデックの不適切会計問題は、創業者による「過度な株価至上主義」と、それを助長した忖度文化が根本原因でした。改善計画では、内部統制の強化、トップダウン型の利益目標策定の見直し、若手主導の企業風土改革推進組織の設立などが打ち出されています。

上場廃止のリスクは残るものの、財務基盤は健全であり、永守氏の退任で経営刷新への期待も高まっています。今後は2月末の第三者委員会報告や10月までの改善措置の実施状況に注目が集まります。

参考資料:

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