ニデック改善計画を提出、永守イズムとの決別へ
はじめに
電子部品大手のニデック(旧日本電産)が2026年1月28日、東京証券取引所に内部管理体制の「改善計画・状況報告書」を提出しました。不適切な会計処理問題により2025年10月に「特別注意銘柄」に指定されたことを受けた対応です。
岸田光哉社長は記者会見で「人事処分に例外はない」と明言し、創業者・永守重信氏については「株主の一人」という立場を強調しました。約70ページに及ぶ改善計画の内容と、ニデックが目指す企業変革の全体像を解説します。
不適切会計問題の経緯
問題の発覚と広がり
ニデックの不適切会計問題は、イタリアのモーター製造子会社での関税支払い不備が端緒となりました。その後、ニデックテクノモーターの中国子会社での不適切な会計処理が明らかになり、さらにグループ企業やニデック本体の経営陣が関与して、資産の評価減の時期を恣意的に判断したとみられる資料が見つかっています。
2025年4〜9月期の連結決算では877億円の大型損失を計上しました。内訳は、契約損失引当金364億円、減損損失316億円、ステランティスとの合弁会社関連の和解債務194億円です。
特別注意銘柄への指定
東証は2025年10月にニデックを特別注意銘柄に指定しました。この指定を受けると、企業は原則3カ月以内に改善計画書を提出しなければなりません。さらに1年後の審査で内部管理体制の改善が認められなければ、上場廃止となる可能性があります。ニデックにとって極めて重い措置です。
永守氏の辞任
創業者の永守重信氏は2025年12月19日付で取締役を辞任し、非常勤の名誉会長に就任しました。経営の第一線から退く形ですが、依然として大株主としての影響力は残っています。
改善計画の核心
「過度な株価至上主義」との決別
改善計画では、問題の根本原因として「成長を示し続けるための過度な株価至上主義」を挙げています。永守氏が株価や時価総額の維持・向上を極めて重視し、その意向を幹部が忖度する企業風土が形成されていたと分析しました。
達成困難な利益目標が設定されることもあり、目標未達の幹部は名指しで非難されることもあったとされています。こうした環境が「物言えぬ風土」を生み、ガバナンスの脆弱性につながりました。
約70ページの具体策
ニデックは2025年10月末に岸田社長をトップとする「ニデック再生委員会」を設置しました。企業文化、経理、ガバナンス、コンプライアンスなど9つのワーキングチームを編成し、約400人からの聞き取り調査を実施しています。
改善計画に盛り込まれた主な施策は以下のとおりです。内部監査・内部通報・懲戒の厳格化、コンプライアンス違反を発見・是正する体制の強化、第三者委員会と社内調査に基づく責任の明確化と人事処分、企業風土改革を推進する新組織の2月1日付での設立、人事評価制度の見直し、内部通報制度の改善です。
岸田社長の覚悟
岸田社長は記者会見で、永守名誉会長について「経営には一切関わらない名誉職だ」と述べました。また、ニデックの社是である「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」に加え、「必ず正しくやる」という新たな価値観を組織に根づかせると宣言しています。
人事処分については「例外はない」と明確に語り、調査結果に基づき対象者への厳正な対応を行う方針を示しました。
今後のスケジュールと注目点
第三者委員会の報告
第三者委員会の報告は2段階で予定されています。2026年2月末に「一定の報告」が行われ、その後に最終報告が続きます。この報告内容によっては、追加の再発防止策や人事処分が必要になる可能性があります。
2026年3月期第3四半期の決算短信は、調査継続に伴い開示が遅延する見通しです。投資家にとっては不透明な状況が続きます。
上場維持の条件
2026年10月には内部管理体制確認書の提出と指定解除審査が予定されています。ここで改善が認められなければ上場廃止のリスクがあります。ニデックには約9カ月間で実質的な企業風土の変革を示す必要があります。
課題と展望
計画の実効性が問われるのはこれからです。約400人への聞き取りから浮かび上がった組織課題を、制度変更だけでなく実際の行動変容につなげられるかがポイントです。
永守氏は名誉会長として残り、大株主でもあります。経営への直接関与はないとされていますが、創業者の影響力が完全に排除されるかは注視が必要です。ニデックの企業価値回復には、透明性の高いガバナンス体制の確立が不可欠です。
まとめ
ニデックが提出した改善計画は、「過度な株価至上主義」と「物言えぬ風土」という根本原因に正面から向き合った内容です。岸田社長の「例外なき処分」という姿勢は、変革への強い意志を示しています。
ただし、計画を策定することと実行することは別の問題です。2月末の第三者委員会報告と10月の指定解除審査が大きな節目となります。国内外の投資家や取引先が信頼を回復できるかは、今後の具体的な行動にかかっています。
参考資料:
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