三井住友銀行が26年度10%超の賃上げへ、春闘の行方
はじめに
三井住友銀行が2026年度の春季労使交渉(春闘)において、実質10%を超える賃上げを実施する方針であることが明らかになりました。基本給を底上げするベースアップ(ベア)は前年度の2.5%から4%に拡大し、実現すれば4年連続のベアとなります。
2001年の合併で三井住友銀行が発足して以降、最大の上げ幅です。メガバンクが率先して大幅な賃上げに踏み切る背景には、人材獲得競争の激化と、日本経済全体での「賃金と物価の好循環」の実現に向けた動きがあります。
本記事では、三井住友銀行の賃上げの詳細から、メガバンク各行の動向、そして2026年春闘全体への影響まで、幅広く解説します。
三井住友銀行の賃上げ方針の詳細
ベースアップ4%と賞与増額で10%超
三井住友銀行の従業員組合が2026年2月16日までに26年度の春闘執行部案を決定しました。ベースアップとして4%を要求する方針で、これは前年度の2.5%から大幅な引き上げとなります。
ベースアップに加えて、賞与の増額なども含めると、実質的な賃上げ率は10%超に達する見込みです。前年度の約8%からさらに上積みされる形となり、合併以降で最大の上げ幅を記録することになります。
ベースアップは基本給そのものを引き上げるため、賞与や退職金の算定基礎にも影響します。一時的な手当とは異なり、恒久的な待遇改善につながる点が大きな特徴です。
初任給30万円で人材争奪戦に対応
三井住友銀行は2026年4月に入行する大学新卒の初任給を月額30万円に引き上げることも決定しています。現行の25万5,000円から約18%の引き上げで、初任給が30万円台となるのは大手行で初めてです。
さらに、大学院修了者の初任給(現行28万円)と大卒を一本化する方針も示されています。これにより、学歴による初任給格差を解消し、能力本位の人事制度への移行を加速させる狙いがあります。
背景には、総合商社やコンサルティング会社など他業種との幹部候補の争奪戦が激化していることがあります。銀行業界はかつて就職先として高い人気を誇りましたが、近年は他業種に優秀な人材を奪われる傾向が続いていました。
メガバンク各行の賃上げ動向
三菱UFJ銀行:9%の賃上げ実績
三菱UFJ銀行は2025年度の春闘で実質9%の賃上げを実施しました。ベースアップは3%で満額回答となり、3メガバンクの中では最も高い水準でした。
同行も2026年春入行の学部卒新卒行員の初任給を4万5,000円引き上げ、月額30万円に設定しています。三井住友銀行と並び、大手行における初任給30万円時代の先鞭をつけた形です。
2026年度の春闘でも、労組は前年と同水準の6%超の賃上げを要求する方針を示しており、引き続き高水準の賃上げが続く見通しです。
みずほフィナンシャルグループ:8%の賃上げ
みずほフィナンシャルグループも2025年度に8%の賃上げを実施し、ベースアップは3%で回答しています。3メガバンクそろってのベースアップ実施は3年連続となりました。
みずほも人材戦略を強化しており、デジタル人材やグローバル人材の採用に力を入れています。2026年度もメガバンク間での賃上げ競争がさらに加速する見通しです。
銀行業界全体の賃上げトレンド
メガバンクだけでなく、地方銀行や信用金庫でも賃上げの動きが広がっています。人手不足と金利上昇による収益改善が追い風となり、銀行業界全体で待遇改善の機運が高まっています。
特に日銀の利上げにより銀行の利ざやが改善し、業績が好調なことが賃上げの原資となっています。金融業界は長らく低金利環境に苦しんできましたが、金利正常化の恩恵を従業員に還元する動きが本格化しています。
2026年春闘全体への影響と見通し
連合の賃上げ目標と大手企業の動向
連合は2026年の春闘で「賃上げ分3%以上、定期昇給相当分を含めて5%以上」を目標に掲げています。日本の実質賃金を1%上昇軌道に乗せることを目指す方針です。
第一生命経済研究所の予測では、2026年春闘の賃上げ率は5.20%と見込まれています。日経センターの1月調査でも5.02%と予測されており、前年をやや下回るものの、依然として高い水準が維持される見通しです。
大手企業では5%超の賃上げを表明する企業が相次いでおり、オープンハウスの新卒40万円やユニクロの10%以上引き上げなど、業界を超えた人材獲得競争が激化しています。
実質賃金プラス転換への期待
2026年は実質賃金がプラスに転じることが期待されています。名目賃金上昇率は2.5%程度、物価上昇率が2%程度と見込まれ、実質賃金はプラス0.5%程度になるとの予測があります。
ただし、円安による食料品価格の上昇などで物価が上振れした場合、実質賃金がマイナス圏に戻るリスクも残っています。賃上げが物価上昇を安定的に上回る「賃金と物価の好循環」の実現が、日本経済の最大の課題です。
注意点・展望
中堅・中小企業への波及が課題
メガバンクを含む大企業の賃上げは順調に進んでいますが、課題は中堅・中小企業への波及です。大企業と中小企業の賃金格差が拡大すれば、労働市場の二極化が進む恐れがあります。
政府も最低賃金の引き上げや中小企業向けの支援策を通じて、賃上げの裾野拡大に取り組んでいます。しかし、原材料費の高騰や人手不足に直面する中小企業にとって、大幅な賃上げは容易ではありません。
日銀の金融政策への影響
賃上げの持続と実質賃金のプラス転換が確認されれば、日銀は追加利上げに踏み切る可能性があります。中立金利とされる1%に向けて1〜2回の利上げが実施される見通しで、金融市場や住宅ローン金利への影響が注目されます。
銀行業界にとっては、金利上昇が利ざや改善につながるため、さらなる賃上げの好循環が期待されます。
まとめ
三井住友銀行の実質10%超の賃上げは、メガバンクの人材戦略と日本経済の構造変化を象徴する動きです。初任給30万円時代の到来やベースアップの継続は、銀行業界だけでなく、日本全体の賃金水準の底上げに貢献することが期待されます。
2026年春闘では5%前後の賃上げが予測されており、実質賃金のプラス転換も視野に入っています。今後は大企業の賃上げが中小企業にどこまで波及するか、そして賃金と物価の好循環が実現するかが注目されます。個人としても、自身の業界や企業の賃上げ動向を把握し、キャリアプランに活かしていくことが重要です。
参考資料:
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