3メガバンクのベア最高水準へ、春闘で賃上げ加速
はじめに
2026年度の春季労使交渉(春闘)で、3メガバンクのベースアップ(ベア)が合併後最高水準となる見通しです。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の各行の労働組合が3月中に会社側へベアを要求する方針を固めました。
メガバンクは金利上昇による利ざや改善で過去最高益を更新しており、その好業績が賃上げの原資となっています。雇用者数が多いメガバンクの大幅な賃上げは、取引先企業や他産業への波及効果も期待されており、日本経済全体の賃金上昇を牽引する役割が注目されています。
本記事では、各行の具体的な要求水準、好業績の背景、そして賃上げが経済全体に与える影響を解説します。
各メガバンクのベア要求と賃上げ水準
三行の具体的な要求額
各行の従業員組合は2月16日までに2026年度の春闘の執行部案を固めました。ベースアップの要求水準は以下の通りです。
- 三菱UFJ銀行:3.5%のベア要求
- 三井住友銀行:4%のベア要求
- みずほ銀行:3%のベア要求
いずれも合併後の最高水準となります。特に三井住友銀行は、ベースアップに賞与の増額などを加えると実質10%超の賃上げとなる見込みで、2001年の合併以降で最大の上げ幅です。
過去3年間の賃上げ推移
メガバンクの賃上げは近年、急速に拡大しています。2024年度は3メガバンクが発足後最大の賃上げ率を記録し、2025年度は2.5〜3%のベースアップを実施しました。三菱UFJ銀行は実質9%、三井住友銀行は実質8%の賃上げを行い、いずれも労組の要求に対して満額回答を示しています。
2026年度は、この流れをさらに加速させる形となります。三井住友銀行では4年連続のベースアップ実施となり、賃上げの持続性を示す象徴的な動きとなっています。
好業績と賃上げの背景
金利上昇がもたらした利ざや改善
メガバンクの好業績を支えているのは、国内の金利上昇による利ざやの改善です。日本銀行の金融政策転換により、長らく続いた超低金利環境から脱却が進み、銀行の本業である貸出から得られる資金利益が大幅に増加しました。
2025年3月期の連結純利益は、3メガバンク合計で約4兆円規模に達し、2年連続で過去最高益を更新しました。三菱UFJフィナンシャル・グループは前年比25%増の1兆8629億円、三井住友フィナンシャルグループは同22.3%増の1兆1780億円、みずほフィナンシャルグループも同30.4%増の8854億円を記録しています。
2026年3月期も好業績が続く見通しで、三菱UFJフィナンシャル・グループは初の純利益2兆円の大台を目標に掲げ、三井住友フィナンシャルグループは1兆3000億円、みずほフィナンシャルグループは9400億円を予想しています。
人材獲得競争の激化
賃上げの背景には、金融業界における人材獲得競争の激化もあります。デジタルトランスフォーメーション(DX)やフィンテックの進展に伴い、IT人材やデータサイエンティストなど専門人材への需要が高まっています。他業界との人材争奪戦に勝ち抜くためにも、給与水準の引き上げは不可欠な経営課題となっています。
三菱UFJ銀行は初任給の引き上げにも踏み切るなど、若手人材の確保にも注力しています。メガバンクが待遇改善を進めることで、金融業界全体の給与水準の底上げにつながることが期待されています。
他産業への波及効果と経済への影響
連合の2026年春闘方針
労働組合の中央組織である連合は、2026年春闘の賃上げ目標として、定期昇給とベースアップを合わせて「5%以上」、ベア分で「3%以上」を掲げています。中小労組に対しては、価格是正分として1%を上乗せした「6%以上(18,000円以上)」を目安としています。
連合の芳野友子会長は、実質賃金が3年連続でマイナスとなる中、物価上昇を1%程度上回る賃金上昇を定着させることを目標に掲げています。メガバンクのベア水準は、連合の目標を上回る高い水準であり、春闘全体を牽引する役割が期待されます。
メガバンクの賃上げが持つ波及力
メガバンク3行の従業員数は合計で数万人規模に上り、その賃上げは経済全体に大きなインパクトを与えます。メガバンクが高水準の賃上げを実施することで、取引先企業や関連業界にも賃上げの機運が波及する効果が見込まれます。
特に、メガバンクの取引先には中小企業も多く含まれており、銀行側が率先して賃上げを行うことは、取引先企業に対する賃上げの促進メッセージにもなります。サプライチェーン全体での賃金上昇が、日本経済のデフレ脱却と内需拡大に寄与することが期待されています。
注意点・展望
メガバンクの好業績と賃上げは、金利上昇局面という追い風に支えられている面があります。今後、米国の関税政策や為替変動などの外部環境が変化した場合、収益への影響は避けられません。特に円高・ドル安に転じれば、海外事業を積極展開してきたメガバンクの収益にも打撃が及ぶ可能性があります。
また、賃上げの持続性も重要な課題です。過去最高水準のベアが今後も続くかどうかは、業績の動向に大きく左右されます。賃上げが一時的なものに終わらず、構造的な賃金上昇として定着するかが、日本経済の行方を左右する鍵となります。
中小企業への波及については、依然として大企業との格差が課題です。原材料費や人件費の上昇を価格転嫁できない中小企業にとって、大幅な賃上げは経営を圧迫する要因にもなりかねません。サプライチェーン全体での適正な価格転嫁の実現が、賃上げの裾野を広げるための前提条件です。
まとめ
3メガバンクの2026年度ベースアップは、三菱UFJ銀行3.5%、三井住友銀行4%、みずほ銀行3%と、いずれも合併後最高水準になる見込みです。金利上昇による利ざや改善と過去最高益の更新が、大幅な賃上げを可能にしています。
今後の注目点は、3月の労使交渉での妥結水準と、メガバンクの賃上げが中小企業を含む他産業にどこまで波及するかです。実質賃金のプラス転換と持続的な賃金上昇の実現に向けて、2026年春闘の行方から目が離せません。
参考資料:
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