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by nicoxz

損保ジャパンが代理店評価を刷新、法令順守で手数料削減へ

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はじめに

損害保険ジャパンは2026年春から、保険代理店の評価制度を抜本的に刷新します。法令順守体制が守られていない代理店に対しては、支払う手数料を引き下げる新制度を導入し、約3万の代理店が対象となります。この改革は、旧ビッグモーターによる保険金の不正請求という不祥事を二度と起こさないための再発防止策であり、損害保険業界全体の構造改革の一環です。従来、保険販売のボリュームや伸び率といった「規模」を重視してきた評価基準を見直し、代理店の自立性と業務品質を重視する方向へと大きく舵を切る歴史的転換点となります。

損保ジャパンの新評価制度の概要

法令順守体制の評価導入

損保ジャパンの新制度では、法令順守(コンプライアンス)体制が適切に機能しているかどうかが重要な評価項目となります。ガバナンス不全の代理店に対しては、手数料を引き下げることで、代理店側の自主的な体制整備を促します。

これまでの代理店手数料は、「損害保険料×手数料率×手数料ポイント」という計算式で算出されてきました。手数料ポイントは「代理店の規模・販売力」「収益性」「業務品質」といった観点から評価され、付与されるポイントの多寡によって手数料の金額が決まる仕組みです。

新制度では、このポイント制度の査定項目に、法令順守体制の評価を明確に組み込むことで、単なる売上重視から質的な評価へとシフトします。

規模評価の大幅引き下げ

損保ジャパンは、2025年度には約80%だった規模評価の比率を、2029年度までに約50%にまで引き下げる方針を示しています。これは業界大手4社の中でも特に大胆な削減幅です。

三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険はすでに規模評価を約4割に抑えており、各社は品質評価の比重を上げる方向で足並みを揃えています。

顧客本位でない評価項目の除外

損保ジャパンは2026年7月から、「ペーパーレス手続き率」「自動車28日前早期更改率」「WEB証券化率」の3項目を評価から除外する方針を固めました。

これらの項目は、保険会社側の業務効率化には寄与するものの、必ずしも顧客の利益を第一に考えた指標ではないと判断されたためです。顧客の視点に立っていない評価項目を排除することで、真に顧客本位の業務運営を目指します。

代理店の自己完結度を重視

新しい指標として「自己完結度」が採り入れられました。これは、代理店が保険会社の業務を過剰に肩代わりしてもらうのではなく、独立した事業者として自立的に業務を遂行できる能力を評価するものです。

従来、損保各社は代理店の業務を過剰に肩代わりする「二重構造」が問題視されていました。代理店の独立性と専門性を高めることで、健全な業界構造を構築する狙いがあります。

ビッグモーター不正事件の教訓

不正の手口と規模

旧ビッグモーターは、故意に車両を損傷させ、修理費用を水増しして保険金を不正請求していました。ゴルフボールを靴下に入れて車を叩いたり、ドライバーで傷をつけるなどの悪質な行為が全国の工場で組織的に行われていました。不正請求による水増し額は平均で1台あたり約3万9,000円にのぼりました。

損保ジャパンのガバナンス失敗

2024年1月25日、金融庁は損保ジャパンと親会社のSOMPOホールディングスに対し、保険業法に基づく業務改善命令を発出しました。両社は3月15日までに経営責任の明確化と不正請求防止体制の確立を含む業務改善計画の提出を求められました。

損保ジャパンの問題点は複数ありました。まず、2004年以降、合計43名の出向社員をビッグモーターに派遣し、保険金請求手続きの指導を行っていました。2019年には、ビッグモーターの全拠点で「簡易査定」手続きを導入し、査定員が現場訪問せず、修理見積書と写真のみで判断する仕組みを採用しました。これは、ビッグモーター経由で獲得する保険契約を拡大する見返りとして提供されたものでした。

他の大手損保会社が不正を認識してビッグモーターの修理工場への事故車両紹介を停止した後も、損保ジャパンは一時的に取引を再開するなど、不正を見て見ぬふりをしていたという指摘があります。

なぜ不正が見過ごされたのか

新規契約に偏重した査定が、旧ビッグモーターの不正にもつながったとされています。保険販売量が多い自動車販売店が兼営する代理店を損保が優遇していたという業界構造が背景にありました。

規模や増収率を過度に重視した手数料ポイント制度の運用により、大型代理店には甘い評価がなされる一方で、中小規模の保険専業代理店(プロ代理店)は不利な立場に置かれていました。

損保業界全体の構造改革

金融庁の監督強化

金融庁は、2024年3月から6月にかけて「損害保険業界の構造的課題と競争に関する有識者会議」を開催し、さらに9月から12月にかけて金融審議会「損害保険業の制度に関するワーキング・グループ」で議論を深めました。

2025年5月には「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正案を公表し、顧客本位の業務運営の確保と健全な競争環境の創出を目指す方針を明確にしました。

金融庁は、損害保険会社に対し、代理店手数料ポイント制度において、損害保険代理店の規模や業績評価に偏ることなく、業務品質を適正に評価し、その結果を重視することが重要であるとして、対応を促しています。

代理店への便宜供与の見直し

日本損害保険協会は、長年業界で慣習化していた便宜供与を抜本的に見直す必要性を認識し、「徹底した顧客本位の業務運営」「健全な競争環境の実現」「保険代理店の独立性」を掲げました。

保険会社による代理店への過度な支援は、代理店の独立性を損ない、保険会社への依存体質を生む原因となっていました。適正化ガイドラインを策定し、業界全体で健全な関係構築を目指しています。

手数料ポイント制度の業界横並び改革

損保大手4社は、2026年度(2026年7月〜)から新しい手数料ポイント制度を導入します。すべての社が、従来評価の最大のポイントだった保険販売のボリュームや伸び率といった「規模」の比率を引き下げる方針で一致しています。

新規契約から顧客評価に重点を移す方向性は業界共通のトレンドであり、損保ジャパンの改革は業界全体の動きの一環として位置づけられます。

代理店業界への影響

代理店の構造と現状

日本の損害保険代理店は約3万店存在し、そのうち約82%が自動車販売店や修理工場、不動産業者、旅行代理店などの副業代理店です(2024年3月時点)。専業代理店(プロ代理店)は比較的小規模で、大手損保のデータによると平均年間保険料収入は約9,000万円です。

法人代理店が約60%、個人代理店が約40%を占め、約76%が特定の保険会社のみを取り扱う専属代理店となっています。

代理店の数は20年以上にわたって継続的に減少していますが、代理店の従業員数(募集人数)は約180万人で安定しています。募集チャネル別の元受正味保険料では、代理店経由が約90%を占めており(2022年時点)、損害保険販売における代理店の役割は依然として極めて大きいといえます。

専業代理店への影響

規模や増収率を過度に重視した従来の手数料ポイント制度の運用により、割を食ってきたのが中小規模の保険専業代理店(プロ代理店)です。

新制度では業務品質やガバナンス体制が重視されるため、専門性が高く、法令順守を徹底している専業代理店にとっては追い風となる可能性があります。一方で、体制整備が遅れている中小代理店には厳しい局面となるでしょう。

副業代理店への影響

自動車販売店などの副業代理店は、規模評価の比率引き下げにより、従来ほどの優遇を受けられなくなる可能性があります。特に、ガバナンス体制の構築が不十分な副業代理店は、手数料削減のリスクに直面します。

一方で、顧客との接点が多く、本業との相乗効果で質の高いサービスを提供できる副業代理店は、引き続き競争力を維持できるでしょう。

代理店の対応策

新制度に対応するため、代理店には以下の対応が求められます。

まず、法令順守体制の整備です。コンプライアンス研修の実施、内部監査体制の構築、適切な顧客情報管理など、ガバナンス強化が急務となります。

次に、業務品質の向上です。顧客満足度の向上、契約後のフォロー体制の充実、適切な保険提案など、顧客本位の業務運営を実践する必要があります。

さらに、自己完結度の向上です。保険会社への過度な依存から脱却し、独立した事業者として専門性を高め、自立的に業務を遂行できる体制を構築することが重要です。

今後の展望と課題

業界の健全化に向けて

損保ジャパンの評価制度刷新は、ビッグモーター不正事件を教訓とした業界の自浄作用の表れです。規模重視から品質重視へ、保険会社依存から代理店自立へという方向性は、長期的には業界の健全化につながるでしょう。

しかし、約3万の代理店すべてが新制度に適応できるわけではありません。体制整備に必要な投資ができない小規模代理店は淘汰される可能性があり、業界の再編が加速する可能性があります。

顧客保護の実効性

新制度の真の目的は、顧客保護の強化にあります。ビッグモーターのような不正事件が二度と起きないようにするためには、評価制度の改革だけでなく、保険会社と代理店の関係性そのものを見直す必要があります。

金融庁の監督強化と相まって、業界全体で顧客本位の文化が根付くかどうかが、今後の焦点となるでしょう。

2026年7月の本格実施に向けて

損保ジャパンは2026年春から段階的に新制度を導入し、2026年7月には評価項目の除外など本格的な改革を実施します。代理店には約半年の準備期間があり、この間にいかに体制を整備できるかが、今後の手数料収入を左右することになります。

業界関係者の注目は、新制度が実際にどの程度の手数料格差を生むのか、そして淘汰される代理店がどの程度出るのかという点に集まっています。

まとめ

損保ジャパンが2026年春から導入する代理店評価制度の刷新は、法令順守体制を重視し、ガバナンス不全の代理店の手数料を削減する画期的な取り組みです。約3万の代理店を対象としたこの改革は、旧ビッグモーターによる保険金不正請求事件の再発防止を徹底する狙いがあります。

規模評価を80%から50%へと大幅に引き下げ、顧客本位でない評価項目を除外し、代理店の自己完結度を重視する新制度は、業界全体の構造改革の一環です。金融庁の監督強化と相まって、損害保険業界は規模重視から品質重視へ、依存から自立へという歴史的転換期を迎えています。

代理店にとっては、法令順守体制の整備、業務品質の向上、自立性の確立が喫緊の課題となります。新制度への適応が、今後の代理店経営を大きく左右することになるでしょう。真に顧客保護が強化され、健全な競争環境が実現するかどうか、2026年7月の本格実施以降の動向が注目されます。

参考資料:

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