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by nicoxz

住友鉱山・JX金属・古河電工、非鉄大手3社の成長戦略

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はじめに

非鉄金属業界の主要企業が、2026年の成長戦略を鮮明にしています。AI需要の拡大によるデータセンター向け先端材料の引き合い増加や、金・銅などの資源価格の高騰を追い風に、業界各社の株価は2025年に大きく上昇しました。

本記事では、業界をけん引する住友金属鉱山、JX金属、古河電気工業の3社に焦点を当て、それぞれの強みと2026年の戦略を読み解きます。各社がAI時代にどのような成長の絵を描いているのか、投資・事業戦略の観点から解説します。

住友金属鉱山:金鉱山の強化と資源事業への集中投資

金価格上昇の恩恵と業績拡大

住友金属鉱山は、国内有数の金鉱山である菱刈鉱山(鹿児島県伊佐市)を保有する資源大手です。2026年1月には株価が上場来高値の8,043円を記録し、金価格の歴史的な高騰が業績を力強く押し上げています。

2026年3月期の業績見通しは市場予想が会社計画を上回る水準に引き上げられており、前年からの大幅増益が見込まれています。松本伸弘社長は「鉱山の出資比率はタイミングにより高める可能性がある」と述べ、資源事業への積極投資を示唆しています。

中期経営計画2027の柱

同社の中期経営計画2027(中計27)では、カナダのコテ金鉱山やチリのケブラダ・ブランカ銅鉱山の本格稼働が重要な柱となっています。コテ金鉱山は2024年9月に土木工事を開始し、2026年6月のプラント完成を予定しています。

鉱山事業では、TPSの手法を活用した在庫削減や生産リードタイムの短縮にも取り組んでおり、在庫を物量ベースで2〜3割削減する成果を上げています。徹底したコスト管理により、資源価格の変動に強い収益体質を構築する方針です。

EV電池材料の戦略転換

一方で、注目すべき戦略転換もあります。住友金属鉱山はEV電池の正極材について、当初計画していた増産投資を見送りました。EV市場の成長鈍化を受け、一部品種向けの設備改造投資にとどめています。

代わりに、トヨタと共同開発を進める全固体電池向け正極材に注力しています。2027〜2028年の実用化が視野に入っており、次世代電池分野での先行者利益を狙う戦略です。2027年度には機能性材料部門の税引き前利益を2025年度比2倍の100億円以上に引き上げる目標を掲げています。

JX金属:半導体材料の世界トップシェアを武器に成長加速

IPO後の躍進

JX金属は2025年3月に東証プライム市場に上場し、ENEOSホールディングスとの親子関係を解消しました。公募価格820円に対し、上場後約10カ月で2,339円の高値を記録し、時価総額は約2兆円規模に達しています。

この躍進の背景にあるのが、半導体材料における圧倒的な競争力です。半導体の配線形成に使うスパッタリングターゲットで世界シェアの約6割を占めており、林陽一社長は「半導体金属材料の総合メーカーを目指したい」と述べています。

2,700億円の成長投資

JX金属は2026年度までの3年間で約2,700億円の投資を計画しています。半導体用ターゲットの増産に加え、次世代半導体向けのCVD(化学気相成長)やALD(原子層堆積)材料を新たな収益の柱とする方針です。

技術投資の方向性としては、光通信関連のインジウムリン化合物にも注力しています。データセンター内の高速通信に不可欠な材料であり、AI需要の拡大に伴う成長が期待されています。

「技術立脚型」企業への転換

JX金属グループは「2040年長期ビジョン」を掲げ、従来の「装置産業型」から「技術立脚型」企業への大転換を進めています。2027年度には営業利益率12〜17%への改善を目標としており、配当よりも成長投資を優先する方針です。

市場もJX金属を「非鉄金属銘柄」ではなく「半導体・テック銘柄」として評価し始めており、IPOによる分離は成功しつつあるといえます。

古河電気工業:データセンター向け光通信で勝負

新ブランド「Lightera」の始動

古河電気工業は2025年4月、光ファイバー・ケーブル事業を新ブランド「Lightera」として再編しました。日本、北米、南米に分かれていた事業体を統合し、生成AI・データセンター関連市場でのプレゼンス強化を図っています。

2025年度のデータセンター向け光通信関連製品の売上高は前年度比約2倍を見込んでおり、2030年度には2023年度比3倍に引き上げる計画です。

380億円の大型投資

古河電工は380億円を投じ、AIデータセンター内で使う光源部品(DFBレーザダイオードチップ)の製造工場を新設すると発表しました。岩手県とタイで工場を整備し、2028年の生産能力を2025年度比5倍以上とする計画です。

光ファイバーケーブル市場では、データセンター向けが全体の約3分の1を占め、今後5年間で年平均20%程度の成長が見込まれています。古河電工はこの成長市場を最重要領域と位置づけています。

次世代技術への布石

技術面では、空孔コア(ホローコア)ファイバーと呼ばれる次世代光ファイバーの開発に注力しています。光の通り道であるコアを空洞にすることで、従来のガラスコアファイバーと比べて伝送遅延を大幅に短縮できます。AI処理における低遅延通信の需要に応える技術です。

また、独自技術「ローラブルリボン」により高密度ケーブルを実現し、1本のケーブルに収容できるファイバー芯数を大幅に増やしています。北米では6,912心ケーブルの設置実績もあります。

注意点・展望

資源価格変動のリスク

住友金属鉱山の業績は金や銅の価格に大きく左右されます。現在の資源高が続く保証はなく、地政学リスクや世界経済の減速が価格下落につながる可能性があります。鉱山開発には長い年月がかかるため、投資判断と市場環境のタイミングのずれが経営リスクとなります。

半導体市場の循環性

JX金属の成長は半導体市場の拡大が前提です。半導体業界には好不況の波(シリコンサイクル)があり、AI需要が一巡した場合の影響も考慮する必要があります。ただし、AIの普及は中長期的なトレンドであり、データセンター投資の減速は当面見込みにくいとの見方が主流です。

各社に共通するAI需要の追い風

3社に共通するのは、AI需要が事業の成長エンジンとなっている点です。住友金属鉱山は先端材料、JX金属は半導体ターゲット、古河電工は光通信部品と、それぞれの強みを生かしてAI関連需要を取り込む戦略を描いています。

まとめ

非鉄金属大手3社は、従来の資源・素材企業からAI時代のテクノロジー企業へと変貌を遂げつつあります。住友金属鉱山は金鉱山の効率化と全固体電池への布石、JX金属は半導体材料の世界トップシェアを武器にした成長投資、古河電工はデータセンター向け光通信への集中投資と、それぞれ明確な戦略を打ち出しています。

投資家にとっては、各社がAI需要をどの程度取り込めるかが今後の評価を左右するポイントとなります。資源価格の動向やAI投資の持続性を注視しながら、各社の戦略実行力を見極めていくことが重要です。

参考資料:

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