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by nicoxz

三井住友信託銀行、9年ぶり代表権付き会長の意味

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はじめに

三井住友トラストグループ傘下の三井住友信託銀行で、2026年4月に発足する新経営体制の詳細が明らかになりました。次期会長に就任する佐藤正克専務執行役員(59)の肩書が「代表取締役」となることが注目されています。

同行で会長に代表権がつくのは2017年以来、9年ぶりです。なぜ今、会長職に「執行」の機能が求められるのでしょうか。本記事では、この人事の背景と信託銀行のガバナンスについて解説します。

三井住友トラストグループの新体制

2026年4月の人事

2026年4月、三井住友トラストグループと三井住友信託銀行は5年ぶりのトップ交代を迎えます。グループ持株会社である三井住友トラストグループ株式会社の執行役社長(代表執行役)CEOには大山一也氏が就任します。

三井住友信託銀行株式会社の取締役社長(代表取締役)には米山学朋氏が就任し、現社長の高倉透氏(63)は会長に退きます。そして、会長には佐藤正克専務執行役員が代表取締役として就任します。

佐藤正克氏の経歴

佐藤正克氏は広島県出身で、1991年に三井信託銀行(現・三井住友信託銀行の前身の一つ)に入行しました。2020年に執行役員に就任し、2025年4月には取締役常務執行役員から取締役専務執行役員(代表取締役)に昇格しています。

現在は最高財務責任者(CFO)を務めており、M&A(合併・買収)にも携わった経験を持ちます。幅広いネットワークと財務・経営戦略の知見を持つ人物として評価されています。

代表権付き会長の意味

会長と代表権の関係

日本の企業において「会長」という役職は、会社法上の定義はありません。各企業が独自に設けている肩書であり、その役割は企業によって大きく異なります。

重要なのは「代表権」の有無です。代表権とは会社を代表する権限であり、重要な決定や契約締結を行うことができます。代表権を持つ会長は「代表取締役会長」となり、対外的にも会社を代表する立場となります。

監督と執行の分離

従来の日本の大企業では、社長が業務執行を統括し、会長は経済団体の役員など対外的な業務に取り組むという役割分担が一般的でした。会長は業務執行から離れ、監督に特化するケースが多かったのです。

コーポレートガバナンスの観点からは、業務執行の監督を担う会長が自ら業務執行ラインのトップを兼ねることについて、効率的な経営を可能にするという指摘がある一方、取締役会による監督に支障が生じるのではないかという議論もあります。

9年ぶりの「執行会長」

三井住友信託銀行で会長に代表権がつくのは2017年以来、9年ぶりとなります。この間、同行では会長は監督機能に特化し、業務執行は社長以下の経営陣が担う体制でした。

今回、佐藤氏に代表権を付与する背景には、同氏のCFOとしての実績やM&A経験、幅広い人脈があります。営業に軸足を置いた経営を推進するにあたり、会長にも「執行」の機能を持たせる狙いがあると考えられます。

信託銀行のビジネスと経営課題

信託銀行の特徴

信託銀行は、銀行法に基づく銀行業務に加えて、信託業務と併営業務を行う金融機関です。預金や貸付といった一般的な銀行業務のほか、財産の管理・運用を受託する信託業務、不動産や証券代行などの併営業務を手がけています。

三井住友信託銀行は、国内最大級の信託銀行として、年金信託や資産運用、不動産、証券代行など幅広い事業を展開しています。

経営環境の変化

信託銀行を取り巻く経営環境は大きく変化しています。超低金利環境が長く続いたことで、利ざや(預金と貸出の金利差)による収益確保が難しくなりました。一方で、高齢化社会の進展により、資産承継や相続関連のニーズは高まっています。

また、企業年金の受託や機関投資家向けサービスでは、ESG投資やスチュワードシップ活動への対応も求められています。

営業強化の必要性

こうした環境下で、三井住友信託銀行は営業力の強化を課題として掲げています。佐藤次期会長は「国内外で幅広いネットワークを持つ」と評されており、この人脈を活かした営業推進が期待されています。

代表権を持つ会長として、大口顧客との関係構築や重要な取引先との交渉において、より積極的な役割を果たすことが求められていると考えられます。

金融機関のガバナンス

監督当局の視点

金融庁の監督指針では、金融システムの安定と金融機関の持続可能性を確保するため、適切な経営管理(ガバナンス)が重要とされています。

具体的には、取締役会や監査役会が経営をチェックできていること、各部門間のけん制や内部監査部門が健全に機能していることが求められます。代表取締役、取締役、監査役など全ての役職者が自らの役割を理解することが必要です。

監督と執行のバランス

会長が代表権を持つことで、経営の機動性が高まる一方、監督機能が弱まるリスクもあります。このバランスをどう取るかは、各企業のガバナンス設計における重要な論点です。

三井住友信託銀行の場合、持株会社である三井住友トラストグループがグループ全体の監督機能を担う構造となっており、銀行本体での代表権付き会長の設置が許容される環境にあると言えます。

注意点と今後の展望

新体制の課題

2026年4月に発足する新体制では、大山新社長(グループ)と米山新社長(信託銀行)のリーダーシップが試されます。佐藤会長との役割分担を明確にしつつ、効率的な経営を実現できるかが焦点となります。

信託ビジネスの将来性

資産承継ニーズの高まりや機関投資家向けサービスの拡大など、信託銀行には成長機会があります。一方で、フィンテック企業との競争や、デジタル化への対応も課題です。

新体制の下で、三井住友信託銀行がどのような成長戦略を描くのか、注目されます。

人脈を活かした経営

佐藤次期会長のCFO経験やM&A実績、幅広い人脈は、法人営業や大型案件の獲得において大きな武器となり得ます。代表権という「権限」と「人脈」を組み合わせた営業展開が期待されています。

まとめ

三井住友信託銀行は2026年4月、5年ぶりのトップ交代と同時に、9年ぶりとなる代表権付き会長を置く体制に移行します。次期会長の佐藤正克氏は、CFOとして培った財務の知見とM&A経験、幅広い人脈を持つ人物です。

会長に代表権を付与する背景には、営業力強化への期待があります。大口顧客との関係構築や重要な取引先との交渉において、会長にも「執行」の役割を持たせる狙いと考えられます。

信託銀行を取り巻く経営環境が変化するなか、新体制がどのような成果を上げるのか、今後の動向が注目されます。

参考資料:

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