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by nicoxz

老朽火力発電所の休廃止を送配電会社へ事前連絡義務化へ

by nicoxz
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はじめに

経済産業省は、火力発電所や原子力発電所といった大規模電源の休廃止情報について、発電会社から送配電会社への事前連絡を義務付ける方針を固めました。連絡期限は9カ月以上前とされ、電気事業法の改正案に盛り込まれる見込みです。

日本では老朽化した火力発電所の休廃止が加速しており、2026年度以降にさらに約880万キロワットの電源が失われる見通しです。一方で新設計画はほぼゼロという状況にあり、電力の安定供給確保が喫緊の課題となっています。

本記事では、なぜ今この制度が必要とされているのか、その背景と制度の仕組みを詳しく解説します。

新制度の概要

送配電会社への9カ月前連絡を義務化

現行制度では、発電会社は電源の休廃止を経済産業省に9カ月前までに届け出る義務があります。しかし、送配電会社に対しては連絡する義務がなく、休廃止の直前に情報が伝わるケースも発生していました。

新制度では、発電会社が経産省への届出と同時に、送配電会社にも休廃止情報を連絡することが義務付けられます。これにより、送配電会社は早い段階から送配電網の整備計画や運用の見直しに着手できるようになります。

電気事業法改正で対応

経産省はこの義務化を電気事業法の改正案に盛り込む方針です。衆院選後の特別国会への提出を目指しており、成立すれば送配電の安定運用に向けた情報共有体制が強化されます。

老朽火力発電所の休廃止が加速する背景

経済性悪化と老朽化の二重苦

火力発電を取り巻く環境は厳しさを増しています。電力広域的運営推進機関(広域機関)によると、新電力への顧客流出で大手電力の自社需要が減少し、経営判断から余剰発電所を休止させるケースが年々増加しています。

また、設備の老朽化で維持費用がかさむ一方、電力市場での収益確保が難しくなっており、投資回収の見込みが立たないことから廃止を決断する事業者が相次いでいます。JERAは保有する火力発電所9基(合計出力383万キロワット、原発4基分に相当)を廃止しました。

2026年度以降の廃止予定

具体的な廃止計画を見ると、九州電力は豊前発電所2号機(50万キロワット)を2026年3月に、苅田発電所新1号機(36万キロワット)を2026年6月に廃止する予定です。

Jパワー(電源開発)は2030年度までに石炭火力5基(計270万キロワット)の休廃止を計画しています。敷地の広さや港湾の制約、設備の老朽度合いなどをもとに判断したとしています。

資源エネルギー庁の資料によると、2026年度以降にさらに881万キロワットの火力発電が廃止される見込みです。一方で新設計画はゼロという深刻な状況にあります。

電力需給への影響

供給力低下のリスク

近年、既存電源の退出と新規投資の停滞により、日本全体の電力供給力は低下傾向にあります。これが電力需給のひっ迫や、卸電力市場価格の高騰という形で顕在化しています。

電力需給ひっ迫とは、電力の需要が供給能力を超過し、供給に制限が生じる状態を指します。予備率(電力の余裕度)が5%を下回ると「電力需給ひっ迫注意報」、3%以下になると「警報」が発令されます。

東京エリアの脆弱性

特に東京エリアでは、運転開始から40年以上経過した老朽火力が供給力の約1割を占めています。さらに、多くの火力発電所が東京湾岸に集中しているため、自然災害時のリスクが高い状況が続いています。

想定以上の猛暑や寒波による需要増加、地震などの自然災害、老朽火力のトラブル停止などが重なれば、需給ひっ迫が発生するリスクは常に存在しています。

送配電会社にとっての意義

計画的な設備対応が可能に

休廃止情報が早期に共有されることで、送配電会社は以下のような対応を計画的に進められるようになります。

  1. 送配電網の増強・見直し: 発電所がなくなる地域の系統構成を見直し
  2. 代替電源の確保: 他地域からの電力融通ルートの整備
  3. 需給調整の準備: 需要側でのデマンドレスポンス(需要調整)の拡充
  4. 設備投資計画の最適化: 長期的な設備更新計画への反映

地域間連系線の強化

電力需給ひっ迫を避けるための構造的対策として、電力広域的運営推進機関は地域間連系線(地域をまたぐ送電網)の強化を検討しています。発電所の休廃止情報が早期に共有されれば、こうした広域的な対策もより計画的に進められます。

脱炭素との両立

石炭火力の段階的削減

経産省は二酸化炭素(CO2)排出量の多い低効率な石炭火力発電所の休廃止を促しており、2030年度までに段階的に進める方針です。電力会社ごとに発電量の上限を定め、徐々に引き下げる仕組みを想定しています。

次世代技術への移行

残る発電所ではアンモニアや水素との混焼を進めるほか、低炭素の火力発電に改装した上で、排出されたCO2を回収・貯留する計画が進められています。Jパワーの松島火力発電所では「GENESIS松島計画」として、2028年度の運転開始を目指した新技術の導入が計画されています。

今後の展望と注意点

制度の実効性確保がカギ

新制度の成否は、連絡された情報を送配電会社がどれだけ有効に活用できるかにかかっています。情報共有だけでなく、送配電会社側の対応能力の強化や、広域機関との連携体制の整備も求められます。

電力安定供給と脱炭素の両立

中長期的には、火力発電は引き続き電力供給において重要な役割を担います。電力の安定供給確保と発電部門の脱炭素化という、ときに相反する目標をいかに両立させるかが、エネルギー政策の最大の課題となっています。

まとめ

経産省が打ち出した火力発電所の休廃止に関する送配電会社への事前連絡義務化は、電力の安定供給を確保するための重要な制度改正です。老朽火力の退出が加速する中、送配電会社が早期に情報を得て計画的な対応を取れるようになることで、電力需給ひっ迫のリスク低減が期待されます。

一方で、根本的な課題である新規電源投資の停滞や、脱炭素化との両立については、より包括的な政策対応が必要とされています。

参考資料:

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