東京23区の新築戸建て、8672万円で過去最高——住宅格差広がる
はじめに
東京23区の新築戸建て住宅の価格が、また記録を更新しました。不動産調査会社の東京カンテイが2026年1月8日に発表したデータによると、2025年12月の新築小規模戸建て住宅の平均希望売り出し価格は8672万円。2014年4月の調査開始以来、過去最高値を2カ月ぶりに塗り替えました。
23区の戸建て価格は千葉市(約3931万円)の2倍以上。同じ首都圏でも、都心と郊外で価格差が広がる「住宅格差」が鮮明になっています。
資金力のある世帯は交通利便性の高いエリアに集中し、そうでない世帯は都心から離れざるを得ない——こうした二極化は、2026年も続く見通しです。
8672万円、過去最高を更新
前月比7.0%の急騰
2025年12月の東京23区の新築小規模戸建て住宅の平均希望売り出し価格は、前月比7.0%高の8672万円でした。11月の8101万円から約570万円も上昇した計算になります。
この価格は、東京カンテイが調査を開始した2014年4月以降で最高値です。2025年は年初から一貫して上昇基調が続き、4月には史上初めて8000万円台に突入していました。
2025年の価格推移
2025年の価格推移を振り返ると、上昇ペースの速さがわかります。
- 2025年2月:7859万円(過去最高を更新)
- 2025年3月:7937万円(過去最高を更新)
- 2025年4月:8078万円(初の8000万円台突入)
- 2025年12月:8672万円(過去最高を更新)
わずか10カ月で800万円以上も上昇したことになります。
価格上昇の背景
城南・城西エリアが牽引
23区の戸建て価格を押し上げているのは、品川区や世田谷区など城南・城西エリアの高額物件です。交通利便性が高く、住環境も良好なこれらのエリアには、資金力のある世帯の需要が集中しています。
従来は都心3区(千代田・中央・港)に高額物件が集中していましたが、最近では23区外周部でも高額事例が続出しています。これは、都心価格の上昇が周辺エリアに波及していることを示しています。
建築コストの上昇
価格上昇のもう一つの要因は、建築コストの高騰です。木材、鉄鋼、セメントなどの資材価格が上昇し、人手不足による人件費の上昇も加わっています。
2025年は円安の影響で輸入資材のコストがさらに上がりました。こうしたコスト上昇分は、販売価格に転嫁されています。
土地価格の高止まり
23区内では、住宅用地の供給が限られています。相続や企業の遊休地売却で出てくる土地も、複数の事業者が競合して高値で落札されるケースが増えています。
土地価格が高止まりする中、建物価格も上昇しているため、総額は上がり続けています。
広がる住宅格差
千葉市の2倍超
東京23区の8672万円に対し、千葉市の新築戸建て価格は約3931万円。2倍以上の開きがあります。同じ首都圏に住んでいても、どこに家を買うかで必要な資金が大きく異なります。
23区内でも、価格差は存在します。港区や渋谷区といった高額エリアでは1億円を超える物件も珍しくありませんが、足立区や葛飾区などは6000万円台で購入できる物件もあります。
需要の二極化
住宅市場では、需要の二極化が進んでいます。資金力のある共働き世帯やパワーカップル(高収入共働き夫婦)は、多少高くても利便性の高い都心エリアを選びます。一方、予算に制約のある世帯は、郊外や地方都市に流れています。
「都心で戸建てを買う」というのは、一部の高所得層に限られた選択肢になりつつあります。
賃貸にとどまる選択
住宅価格の高騰を受けて、持ち家を諦めて賃貸にとどまる世帯も増えています。特に若い世代では「無理して買うより、柔軟に住み替えられる賃貸のほうがいい」という意識が広がっています。
ただし、都心の賃料も上昇傾向にあり、賃貸が必ずしも「安い選択」ではなくなっています。
マンション市場も最高値
1億3309万円で過去最高
戸建てだけでなく、マンション市場も高騰しています。2025年度上半期(4〜9月)の東京23区の新築マンション平均価格は1億3309万円で、こちらも過去最高を更新しました。
「億ション」はもはや珍しいものではなく、23区で新築マンションを買うなら1億円が目安という時代になっています。
実需は中古市場へ
新築が高すぎるため、実需層(実際に住むために買う人)は中古市場に流れています。中古マンションの取引件数は増加傾向にあり、新築より3〜4割安い中古を選ぶ人が増えています。
ただし、中古市場も供給が限られているため、人気エリアでは価格が上昇しています。
2026年の見通し
さらなる価格上昇の可能性
2026年も価格上昇が続く可能性があります。建築コストの高止まり、土地供給の制約、高所得層の需要といった要因は変わらないためです。
日銀の金融政策次第では住宅ローン金利が上昇する可能性もあり、「金利が上がる前に買いたい」という駆け込み需要が発生する可能性もあります。
金利上昇リスク
住宅ローン金利が上昇すれば、返済負担が増えるため、購入を諦める層が出てくる可能性があります。特に変動金利で借りている世帯は、金利上昇の影響を直接受けます。
金利上昇が本格化すれば、価格上昇にブレーキがかかる可能性はありますが、都心人気エリアの需要は根強く、大幅な下落は考えにくいとの見方もあります。
郊外・地方への分散
住宅価格の高騰を受けて、郊外や地方都市への移住を検討する人も増えています。テレワークの普及で「都心に住む必要性」が薄れた層は、価格の安いエリアで広い家を求める傾向があります。
ただし、通勤が必要な層にとっては、郊外移住は選択肢にならないケースも多いです。
まとめ
東京23区の新築戸建て価格が8672万円で過去最高を更新しました。城南・城西エリアの高額物件が牽引し、千葉市の2倍以上という価格差が生まれています。
建築コストの高騰、土地供給の制約、高所得層の需要集中が価格上昇の要因です。23区での戸建て購入は、ますます「高嶺の花」になりつつあります。
2026年も価格上昇が続く見通しですが、金利上昇リスクもあり、住宅購入のタイミングは慎重に判断する必要があります。住宅格差が広がる中、どこに住むかという選択は、ライフプラン全体を左右する重要な決断となっています。
参考資料:
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