東京23区の家賃、世帯所得の4割超えで家計圧迫
はじめに
東京23区でマンション家賃の高騰が止まりません。ファミリー層向けマンションの募集家賃が可処分所得の4割を超え、一般的に「危険水域」とされる水準に達しました。新築マンション価格の高騰により購入を諦めた層が賃貸市場に流入し、需給が逼迫していることが背景にあります。
変動が少ないとされてきた家賃の本格的な上昇は、新たなインフレ圧力となり、働く世代の家計を圧迫しています。本記事では、東京23区の家賃高騰の現状と原因、今後の見通しについて解説します。
家賃高騰の現状
所得の4割を超える負担
東京23区ではファミリー層向けマンションの募集家賃が可処分所得の4割を超える水準に達しています。一般的に、家賃は月収の3割以内が適正とされ、3割を超えると「家計に余裕がない状態」、4割を超えると「危険水域」と言われています。
2024年までの約4年間で、可処分所得に対する平均家賃の割合は各都市で1〜5ポイント上昇し、東京23区では特にファミリー向け物件で負担が重くなっています。
12四半期連続で過去最高値
2025年第3四半期の東京23区の賃料は、前年同期比で7.8%上昇し、12四半期連続で過去最高値を更新しました。タイプ別では、シングル向けが前年同期比7.6%増、コンパクトが6.9%増、ファミリー向けが11.7%増と、全タイプで強い賃料上昇が続いています。
特にファミリー向け物件の上昇率が高いのは、分譲マンション価格の高騰で購入を諦めた層が賃貸に滞留し、需給が逼迫しているためです。
平均家賃10万円の大台に
東京23区のシングル向け賃貸物件は、平均募集家賃が10万円の大台に達しました。ファミリー向けでは、池袋、御茶ノ水、浜松町など都心駅周辺で月額40万円前後に上昇している物件も珍しくありません。
品川駅周辺のファミリー向け物件は、1年で約17.2万円も上昇し、月額約43.6万円に達しています。上昇率は165.5%と、昨年から1.6倍以上になった計算です。
家賃高騰の原因
マンション価格高騰の波及
家賃高騰の最大の要因は、新築マンション価格の高騰です。東京23区の新築マンション平均価格は1億円を超える水準となり、一般的な共働き世帯でも手が届きにくくなっています。
購入を諦めた層が賃貸市場に流れ込んだ結果、特に都心部のファミリー向け物件で需要が急増しています。供給が追いつかない中で、家賃の上昇圧力が高まっています。
コロナ後の都心回帰
新型コロナウイルスの感染拡大期には、テレワークの普及により郊外への移住が進みました。しかし、コロナ禍の終息に伴い、出社を求める企業が増え、都心回帰の動きが強まっています。
職住近接を求める働く世代が都心部の賃貸物件に集中し、需給バランスが崩れています。
物価高と維持管理費の上昇
インフレにより物件の維持・管理費が上昇していることも、家賃に転嫁されています。建築資材の高騰や人件費の上昇で、新築物件の建設コストも上がっており、新規供給される物件の家賃は高めに設定される傾向にあります。
不動産投資需要の増加
低金利環境が続く中、不動産投資への関心が高まっています。投資用物件としての人気上昇が、賃貸市場の需給に影響を与えています。投資家は利回りを確保するため、家賃を高めに設定する傾向があります。
エリア別の家賃相場
都心部は突出して高い
2025年の最新データによると、東京23区内でも家賃相場には大きな差があります。港区(14〜17万円台)、千代田区、渋谷区などの都心部が最も高く、足立区、葛飾区(5.5〜6.5万円台)などの東部エリアが最も安くなっています。
同じ単身者向け物件でも、港区と葛飾区では家賃相場に2倍以上の開きがあります。
郊外エリアも上昇傾向
都心部だけでなく、葛飾区や足立区といった郊外エリアでも家賃は上昇傾向にあります。都心の家賃高騰を受けて、より家賃の安いエリアに移る人が増えた結果、これまで比較的割安だったエリアでも家賃が上がり始めています。
家計への影響
可処分所得の圧迫
家賃負担の増加は、可処分所得を直接圧迫します。特に若年層や子育て世代にとって、住居費の増加は生活全般に影響を与えます。食費や教育費、貯蓄に回せる金額が減り、将来設計にも支障が出る可能性があります。
住宅選択肢の縮小
家賃の高騰により、都心部で手ごろな賃貸物件を探すことが難しくなっています。希望する広さや立地の物件に住めず、通勤時間の増加や住環境の妥協を余儀なくされるケースも増えています。
新たなインフレ圧力
変動が少ないとされてきた家賃の本格的な上昇は、消費者物価指数にも影響を与えます。家賃は消費者物価指数の構成要素の中で大きなウェイトを占めており、家賃上昇が続けば、インフレ率を押し上げる要因となります。
今後の見通し
上昇傾向は継続か
専門家の分析では、経済環境に大きな変化がなければ、23区内のマンション賃料はまだ上昇する余地があるとされています。2026〜2027年にかけても、じわじわと上昇が続く見通しです。
ただし、上昇ペースは一律ではなく、すでに高水準にある都心の一等地ではさらなる上昇が見込まれる一方、郊外エリアでは相対的に穏やかな上昇となる可能性があります。
供給増加の期待
大規模再開発プロジェクトの完成などにより、一部エリアでは賃貸物件の供給が増える可能性があります。供給増加が進めば、需給バランスが改善し、家賃上昇に歯止めがかかることも期待されます。
政策対応の必要性
住宅費負担の増加は社会問題化しつつあり、政策対応を求める声も高まっています。住宅手当の拡充や、賃貸住宅供給の促進など、多角的な対策が求められています。
まとめ
東京23区のマンション家賃が可処分所得の4割を超え、働く世代の家計を圧迫しています。新築マンション価格の高騰で購入を諦めた層が賃貸市場に流入し、需給が逼迫していることが主な原因です。
12四半期連続で過去最高値を更新する家賃は、新たなインフレ圧力ともなっています。今後も上昇傾向が続くと予想される中、住宅問題への政策対応が急務となっています。都心で働き暮らす人々にとって、住居費の負担軽減は切実な課題です。
参考資料:
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