首都圏マンション9182万円で過去最高、郊外に変調の兆し
はじめに
不動産経済研究所が2026年1月26日に発表した首都圏新築マンションの2025年データによると、平均価格は前年比17%増の9,182万円と、過去最高を更新しました。もはや1億円の大台が目前に迫っています。
しかし、この数字の裏側では、首都圏の不動産市場に大きな二極化が進んでいます。東京23区では旺盛な需要が続く一方、郊外では「売れ残り」「値下げ」という言葉が聞かれるようになりました。
さらに日銀の利上げにより住宅ローン金利も上昇局面に入っています。郊外マンション市場に何が起きているのか、今後どうなるのかを詳しく解説します。
2025年マンション市場の実態
過去最高を更新した平均価格
2025年の首都圏新築マンション市場は、価格面で記録的な年となりました。年間平均価格9,182万円は、前年から1,300万円以上の上昇です。
特に東京23区は突出しています。2025年度上半期(4〜9月)の平均価格は1億3,309万円と、1億円を大きく超えました。前年同期比で20%以上の上昇であり、もはや一般的なサラリーマン世帯には手が届かない水準に達しています。
1平方メートルあたりの単価も、東京23区では200万円を突破。首都圏平均でも135万円と、過去最高を記録しました。
価格上昇の背景
価格上昇の主な要因は、建築費と人件費の高騰です。土地代も含めた開発コストの上昇に歯止めがかからず、デベロッパーは価格に転嫁せざるを得ない状況が続いています。
また、供給戸数の減少も影響しています。2024年の首都圏新築マンション発売戸数は前年比14.4%減の2万3,003戸と、1973年以降で最少を記録。2026年の予測も2万3,000戸と、過去50年で最低水準にとどまる見通しです。
供給が絞られる中で、都心の好立地物件には富裕層やパワーカップルの需要が集中。希少性が価格をさらに押し上げる構図となっています。
郊外で顕在化する「顧客離れ」
売れ残りと値下げの現実
華やかな都心の数字とは対照的に、郊外マンション市場には変調の兆しが見えています。不動産経済研究所の松田忠司上席主任研究員は「売れ残りが出ており、値下げをしているケースもある」と指摘しています。
2024年の初月契約率は66.9%と、4年ぶりに70%を割り込みました。これは業界の好不況の目安とされる70%を下回っており、市場全体の販売苦戦を示しています。
郊外の価格下落兆候
具体的な数字も出始めています。例えば埼玉県では、中古マンションの成約件数が前年同月比45.3%増と急増した一方、成約単価は前年同月比マイナス4.2%と下落しています。
件数が増えて単価が下がる。これは購入者の予算が限界に達し、「高額な都心物件を諦め、価格の落ち着いた郊外の広めの物件を選ぶ」という行動変容が起きていることを示唆しています。
大手デベロッパーの姿勢変化
こうした状況を受け、不動産大手の間では郊外開発を見送る動きも出始めています。都心や駅近の再開発エリアでは供給減と富裕層需要により価格は高止まりする一方、郊外の各停駅周辺や築年数が進んだ物件では、実需層の購買力が限界に達しつつあります。
専門家は「全体が下がるという期待は捨てるべき」と警告します。価値のない物件は売れ残り、価値のある物件はさらに遠い存在になる。二極化が最も残酷に進む局面に入っています。
金利上昇が追い打ちをかける
日銀の利上げと住宅ローン
日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的に利上げを実施してきました。2025年12月の金融政策決定会合では0.25%の追加利上げを決定し、政策金利は0.75%と約30年ぶりの水準に達しています。
これを受けて、住宅ローン金利も上昇局面に入りました。変動金利は従来の1%未満から徐々に上昇し、1%台に達する可能性が高まっています。
固定金利タイプの代表例である「フラット35」は2026年1月時点で約2.08%と、2%の大台を突破。3メガバンクの10年固定も軒並み引き上げられ、三菱UFJ銀行は2.68%、三井住友銀行は2.65%となっています。
返済額への具体的影響
金利上昇は返済負担に直結します。仮に5,000万円を借りた場合、金利0.75%だと毎月の返済額は約13万5千円ですが、金利1%になると約14万1千円と、月約6千円増加します。
借入4,000万円、返済期間35年で金利が1%上がると、月々の返済額はおよそ2万円前後増え、総返済額では700万円前後の差が生じます。
金利が上がると「買える範囲」は確実に縮みます。これまで郊外なら手が届いたという層が、金利上昇によって購入を見送るケースが増えることが懸念されています。
今後の金利見通し
日銀の追加利上げは今後も続くと見られています。基本シナリオでは、年2回のペースで利上げが続き、政策金利は2026年度に1.25%、2027年度には1.5%程度になると予想されています。
円安が続く場合は、円売りを牽制するためにさらに早いペースでの利上げもあり得ます。その場合、最終的に2%を超える水準まで政策金利が引き上がる可能性も指摘されています。
注意点・展望
二極化はさらに進む
今後の首都圏マンション市場は、二極化がさらに深化すると予想されます。都心・駅近・再開発エリアでは、供給減と富裕層需要により価格は高止まりまたは上昇を続けるでしょう。
一方、郊外・各停駅周辺・築年数の古い物件では、成約価格は頭打ちとなり、緩やかな調整局面へ向かう可能性があります。立地と物件の選別が、これまで以上に重要になります。
購入検討者への示唆
これからマンション購入を検討する方は、いくつかの点に注意が必要です。まず、無理のない借入額の設定が重要です。金利上昇を見込んで、返済負担が過度にならない範囲で計画を立てるべきでしょう。
また、変動金利と固定金利それぞれの特性を理解した上で、自分のリスク許容度に合った選択をすることが大切です。金利上昇局面では、繰り上げ返済の余力を持っておくことも有効な対策となります。
中古市場への需要シフト
新築マンション価格が過去最高を更新する中、相対的に割安感のある中古マンションへ需要がシフトする動きも強まっています。中古であれば、同じ予算でより広い物件や好立地を選べる可能性があります。
ただし、中古マンションも価格上昇傾向にあり、物件の見極めが重要です。管理状態や修繕計画など、新築にはない確認ポイントも押さえておく必要があります。
まとめ
2025年の首都圏新築マンション平均価格9,182万円という数字は、市場全体の好調さを示しているわけではありません。その内実は、東京23区の高騰と郊外の苦戦という二極化の進行です。
金利上昇という追い風を受け、郊外マンション市場の変調はさらに顕在化する可能性があります。「全体が下がる」という期待は現実的ではなく、むしろ物件選びの重要性がこれまで以上に高まっています。
購入を検討する方は、立地・物件の将来性を冷静に見極め、金利上昇にも耐えられる資金計画を立てることが重要です。首都圏マンション市場は、選別の時代に入っています。
参考資料:
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