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by nicoxz

トランプ大統領、機関投資家の戸建て住宅購入を禁止する大統領令に署名

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はじめに

2026年1月20日、トランプ米大統領は大規模機関投資家による戸建て住宅の取得を禁じる大統領令に署名しました。ウォール街の大手金融資本による住宅投資が価格を押し上げているとの批判に応え、「手ごろな」住宅価格の実現を目指す政策です。

この大統領令は、11月の中間選挙を前に住宅問題に苦しむ国民にアピールする狙いがある一方、金融業界からの支持を失うリスクも伴います。

本記事では、大統領令の具体的な内容、米国住宅市場における機関投資家の影響、そして今後の見通しについて詳しく解説します。

大統領令の内容

政策の基本方針

トランプ大統領は大統領令の中で、「アメリカの家庭向け戸建て住宅の供給を維持し、住宅所有への道を広げるため、大規模機関投資家が家庭が購入できるはずの戸建て住宅を買うべきではないというのが私の政権の方針である」と述べています。

大統領令は連邦政府機関に対し、60日以内に制限措置に関するガイダンスを発行するよう指示しています。

具体的な規制内容

大統領令は機関投資家による住宅購入を全面的に禁止するものではありませんが、連邦政府の支援を受けた融資や承認に制限を設けます。主な内容は以下の通りです。

財務省、住宅都市開発省、農務省、退役軍人省、連邦調達庁、連邦住宅金融庁に対し、大規模機関投資家による戸建て住宅取得を連邦機関や政府支援企業が支援することを禁止するよう指示しています。これには、そのような購入の承認、保険、保証、証券化、その他の「法律で許される最大限の範囲での」支援が含まれます。

また、司法省と連邦取引委員会は、地域の戸建て住宅市場における大規模機関投資家による大規模な取得について、反競争的影響がないか審査し、必要に応じて独占禁止法の執行を優先するよう指示されています。

重要なポイント

大統領令はポートフォリオの強制売却を求めるものではなく、賃貸用に建設されたコミュニティ(ビルド・トゥ・レント)については例外が設けられています。また、今後数週間で財務省が「大規模機関投資家」の定義を発表する予定であり、その内容が実際の影響を大きく左右することになります。

機関投資家による住宅市場への影響

2008年金融危機以降の台頭

ブラックストーン、アメリカン・ホームズ・フォー・レントなどのウォール街の機関投資家は、2008年の金融危機で大量の住宅差し押さえが発生して以来、数千戸の戸建て住宅を買い集めてきました。

政府会計検査院(GAO)の2024年の調査によると、2022年6月時点で機関投資家は約45万戸の住宅を所有しており、これは全戸建て賃貸住宅の約3%に相当します。

ブラックストーンの巨大な存在感

世界最大級の資産運用会社であるブラックストーンは、運用資産1兆ドル以上を擁し、米国で最大級の賃貸住宅ポートフォリオを静かに構築してきました。

2008年の金融危機後、ブラックストーンはインビテーション・ホームズを通じて戸建て住宅の最大所有者となり、後にこの事業を売却しました。2021年には再び市場に参入し、ホーム・パートナーズ・オブ・アメリカを買収、2024年にはトライコン・レジデンシャルも取得し、数万戸を追加しました。現在、同社の戸建てポートフォリオは約5万8,000戸に上ります。

住宅価格への影響をめぐる議論

機関投資家による土地取得競争が激化した結果、一部の都市圏では住宅価格に占める土地の割合がかつての15〜20%程度から、現在では30〜50%に達しているという指摘があります。

一方、ブラックストーンは米国の賃貸住宅の1%未満しか所有しておらず、市場家賃のトレンドに影響を与える能力は事実上ないと主張しています。同社によれば、家賃が上昇しているのは世界的に住宅供給が需要を大幅に下回っているためだとしています。

株式市場への影響

関連銘柄の急落

トランプ大統領の発表を受け、関連銘柄は急落しました。ブラックストーン株は一時前日比9%安、アポロ・グローバル・マネジメント株は同6%安となりました。不動産投資信託(REIT)のインビテーション・ホームズは一時10%下落しました。

金融業界からの反発

この政策は、トランプ政権の経済政策を支持してきた金融業界との関係に亀裂を生じさせる可能性があります。大手投資会社は長年にわたり戸建て賃貸住宅を収益源として活用してきており、規制強化は彼らのビジネスモデルに直接影響を与えます。

住宅問題の構造的背景

深刻な住宅不足

米国では世帯数の増加に住宅建設が追い付かず、需給がひっ迫しています。足元の平均住宅価格は1人当たり年間可処分所得(中央値)の5倍超にあたる約36万ドルに上昇しており、住宅取得は多くの人々、特に若いアメリカ人にとってますます手の届かないものになっています。

住宅建設労働者の不足などに起因する供給制約が建設促進の足かせになっており、需給ひっ迫の解消には時間がかかる見通しです。

在宅勤務の影響

サンフランシスコ連邦準備銀行のレポートによると、住宅価格上昇の6割以上は新型コロナ禍をきっかけとした在宅勤務の普及が寄与しているとされています。より広い居住空間を求める需要が、特に郊外の住宅市場を押し上げました。

賃貸市場への波及

住宅ローン金利や住宅価格の上昇により、持ち家購入を断念して賃貸を選択する人が増えています。賃貸市場の空室在庫は2009年頃をピークに年々減少傾向にあり、賃貸需要の高まりが家賃上昇に直結しやすい構造になっています。

注意点・今後の展望

政策の実効性への疑問

一部の投資家は、ウォール街の大家への規制がかえって住宅価格を押し上げる可能性があると指摘しています。機関投資家が市場から撤退すれば、一時的に供給が減少し、価格上昇圧力が生じる可能性があるためです。

議会での法制化

共和党のバーニー・モレノ上院議員(オハイオ州選出)は、トランプ大統領の大手投資家禁止措置を実施するための法案を議会に提出すると表明しています。大統領令には限界があるため、恒久的な政策とするには議会での法制化が必要です。

定義の重要性

今後数週間で財務省が発表する「大規模機関投資家」の定義が、政策の実際の影響を大きく左右します。定義が広すぎれば市場への影響は大きくなり、狭すぎれば効果は限定的になります。

まとめ

トランプ大統領による機関投資家の戸建て住宅購入禁止は、住宅価格高騰に苦しむ国民へのアピールであると同時に、金融業界との関係を複雑にする政策です。

大統領令自体は連邦政府の支援を制限するものであり、機関投資家の住宅購入を完全に禁止するものではありません。政策の実効性は、今後発表される具体的な規制内容と議会での法制化の行方に左右されます。

住宅問題の根本的な解決には、供給不足の解消や建設労働者の確保など、より包括的なアプローチが必要です。機関投資家の規制だけで住宅価格が大幅に下がるかどうかは、専門家の間でも意見が分かれています。

参考資料:

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