円152円台突入、トランプ発言でドル4年ぶり安値
はじめに
2026年1月27日、ニューヨーク外国為替市場で円相場が対ドルで一時152円台前半まで上昇しました。トランプ米大統領がドル安を容認する姿勢を示したことがきっかけとなり、ドル売りが加速しています。
ドルの総合的な強さを示すドル指数(DXY)は96.2まで低下し、2022年2月以来約4年ぶりの安値を記録しました。この動きは単なる円高ではなく、グローバルなドル安トレンドの表れです。
本記事では、今回の為替変動の背景、日米当局の対応、そして今後の見通しについて詳しく解説します。
トランプ発言がドル安を加速させた背景
「ドル安は素晴らしい」発言の衝撃
トランプ大統領は以前からドル安論者として知られています。その背景には、米国製造業の国際競争力を高めたいという意図があります。強いドルは米国からの輸出品を割高にし、貿易赤字の拡大につながるためです。
今回の発言を受け、投資家はトランプ政権がドル高を是正する方向で動くと判断しました。その結果、ドルの売り圧力が一気に高まりました。
ドル安を促進する複合要因
ドル安の背景には、トランプ発言以外にも複数の要因が絡み合っています。
まず、FRB(米連邦準備制度理事会)の独立性への懸念があります。トランプ大統領が次期FRB議長にハト派の人物を指名するとの観測が広がっており、金融緩和が進むとの見方がドル売りにつながっています。
また、拡大する財政赤字や政治的な二極化も、投資家のドルに対する信認を揺るがせています。グリーンランド取得への言及など、予測困難な政策決定も市場の不安材料となっています。
日本当局の対応と日米協調介入の可能性
片山財務相の一連の発言
片山さつき財務相は1月以降、為替市場に対して繰り返し警告を発してきました。14日には「投機的な動きを含めて行き過ぎた動きに対しては、あらゆる手段を排除せずに適切な対応をとる」と明言しています。
16日には日本記者クラブでの会見で、昨年9月の日米共同声明について言及し、「為替介入に向けて制約や制限はついていない」との見解を示しました。これは介入に向けた布石とも受け取れる発言です。
日米協調介入への警戒感
26日には、日米がレートチェック(為替水準の確認)を行ったとの観測が浮上しました。片山財務相は日米財務相共同声明に沿って「対応している」と述べ、協調介入の可能性については明言を避けました。
市場関係者の間では、日米当局が円を支えるために協調介入を実施する可能性が高まっているとの見方が広がっています。実際、23日には円相場が157円台前半まで急伸する場面があり、介入観測が強まりました。
FRBの金融政策と次期議長人事
1月FOMCは据え置き予想
FOMCは1月27日から28日にかけて開催され、結果は日本時間29日午前4時に発表されます。市場ではFRBが4会合ぶりに政策金利を据え置くことがほぼ確実視されており、FF金利先物に基づくFedWatchでは据え置き予想が約83%となっています。
現在の政策金利は3.50〜3.75%で、FRBは昨年12月に3回連続の利下げを実施しましたが、ここで一旦様子見に転じる見通しです。
注目される次期FRB議長人事
パウエル議長の任期は2026年5月15日に満了します。トランプ大統領は後任として「2人のケビン」(ハセット、ワーシュ)を有力候補として挙げています。ウォラーFRB理事やブラックロックのリーダー氏なども候補に挙がっています。
誰が就任しても、トランプ大統領の意向を意識してハト派色の強い金融政策が予想されます。これもドル安圧力の一因となっています。
注意点・今後の展望
テクニカル面からの分析
テクニカル分析では、ドル円は週足で2週連続で上ヒゲを伸ばし、ダブルトップのような形状を形成しています。次のサポートは153円、さらに下抜けた場合は152円付近が目処とされていましたが、すでにこの水準に到達しています。
今後の見通し
2026年のドル円相場については、目先はボラティリティの高い展開が続く見通しです。専門家の間では、時間の経過とともに徐々にドル安・円高方向へ向かうとの見方が有力です。
年末の着地点については150円を予想する声もあり、日米当局の介入姿勢やFRBの金融政策次第では、さらなる円高が進む可能性もあります。
一方で、注意すべき点もあります。トランプ大統領が目指すのは米製造業の競争力強化であり、基軸通貨としてのドルの地位を揺るがすようなドル売りは望んでいません。急激なドル安が進めば、政策スタンスが変化する可能性もあります。
まとめ
今回の円高・ドル安は、トランプ大統領のドル安容認発言をきっかけに、FRB議長人事への不安、財政赤字の拡大など複合的な要因が重なって起きています。ドル指数は4年ぶりの安値を記録し、市場のドルに対する見方は大きく変化しています。
日本の投資家や企業にとっては、為替変動リスクへの備えがこれまで以上に重要になります。日米当局の発言や介入動向、FOMCの結果に注目しながら、慎重に市場を見守る必要があるでしょう。
参考資料:
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