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by nicoxz

Z世代・大企業で賃金伸び、中高年・中小に格差拡大

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はじめに

内閣府が2026年2月10日に公表した日本経済リポート(通称「ミニ経済白書」)は、日本の賃金構造に生じている明暗を浮き彫りにしました。Z世代を中心とした20〜30代の若年層や大企業では賃金が着実に上昇している一方、40〜50代の中高年層や中小企業では賃金上昇率にばらつきが拡大しているという分析です。

少子化が進む中、企業間の人材獲得競争が激化し、若年層の待遇改善が進んでいます。しかし、賃上げの恩恵がすべての働き手に行き渡っているわけではありません。内閣府は、労働者のリスキリング(学び直し)やM&A(合併・買収)による生産性向上が不可欠だと提言しています。本記事では、賃金格差の実態と解消に向けた課題を詳しく解説します。

若年層と大企業で進む賃金上昇

Z世代の賃金が伸びる理由

内閣府の分析によると、20〜30代の若年層はおおむね賃金が上昇しています。この背景には少子化による労働力不足があります。新卒採用市場は完全な「売り手市場」となっており、企業は初任給の大幅引き上げを競うようになりました。

2025年の春闘では、大企業を中心に「10代・20代」の賃上げを重視する企業が32.2%に達しました。新卒社員や成長中の若手を確保するために、企業は待遇面での競争を繰り広げています。初任給30万円を超える企業も珍しくなくなり、Z世代の労働市場での交渉力は歴史的に高い水準にあります。

大企業の賃上げ余力

大企業の賃上げが顕著なのは、そもそもの収益力と賃上げ余力の差が背景にあります。2025年春闘では大手企業の賃上げ率が5%を超え、33年ぶりの高水準を記録しました。ベースアップを実施した大企業は約70%に上ります。

円安による輸出企業の好業績や、価格転嫁の進展が大企業の賃上げを支えています。加えて、人的資本経営への注目が高まる中、優秀な人材の確保・定着のために積極的な報酬戦略をとる企業が増えています。

中高年・中小企業に広がる格差

中高年層の賃金が伸びにくい構造

一方で、40〜50代の中高年層は賃金の伸びが鈍い傾向が見られます。内閣府の分析では、中高年層の中でも高所得層の方が上昇幅が大きく、所得階層による格差も広がっていることが示されました。

中高年の賃金が伸びにくい背景には、年功序列型の賃金体系から成果主義への移行があります。従来は年齢とともに自動的に上昇していた賃金が、スキルや成果に応じた評価へと変わりつつあるのです。デジタル化やAI活用など、企業が求めるスキルセットが急速に変化する中、中高年層はスキルのミスマッチに直面しやすい状況にあります。

中小企業の賃上げの壁

中小企業の賃上げ率は大企業と比べて低い水準にとどまっています。2025年春闘では中小企業の賃上げ率が4.35%と、前年から上昇はしたものの大手企業との差は1%以上開いています。ベースアップ実施率も大企業の約70%に対し中小企業は約59%と、約10ポイントの差があります。

中小企業の賃上げが難しい最大の要因は、労働分配率の高さです。中規模・小規模企業の労働分配率はすでに約80%に達しており、さらなる賃上げの余力は大企業に比べて厳しい状況です。原材料費や人件費の上昇を価格に転嫁しきれない企業も多く、利益を圧迫しながら賃上げを行っているのが実情です。

格差解消の処方箋

リスキリングの推進と課題

内閣府はリポートの中で、賃上げの継続には労働者の能力開発(リスキリング)が不可欠だと指摘しています。企業が求めるスキルと労働者のスキルにずれがあれば、生産性向上に結びつかず賃金は継続的に上がらないという分析です。

政府はリスキリング支援に力を入れており、2025年10月からは「教育訓練休暇給付金」制度が開始されました。雇用保険の被保険者が無給の教育訓練休暇を取得した際、最大150日間の給付金を受けられる制度です。

ただし課題もあります。厚労省による職業訓練では修了者の約3割が就職に至っていないとの報告があり、訓練内容と企業の採用ニーズのミスマッチが指摘されています。内閣府も「労働者と企業の意思疎通が求められる」と訴えており、企業が必要とするスキルを的確に把握した上での学び直しが重要になっています。

M&Aによる生産性向上

中小企業の賃上げ余力を高めるために、内閣府はM&A(合併・買収)による生産性向上の重要性も強調しています。規模の拡大によるスケールメリットの獲得や、経営資源の効率的な活用が賃上げの原資を生み出すという考え方です。

中小企業庁も「事業承継・M&A補助金」を通じてこの動きを後押ししています。M&Aを事業承継の手段としてだけでなく、中小企業が成長を実現するための戦略的手段として位置づける動きが広がっています。一定の賃上げを実施する場合に補助上限額が引き上げられる特例も設けられており、M&Aと賃上げを連動させる政策設計がなされています。

注意点・今後の展望

賃上げの持続可能性

2025年春闘の高い賃上げ率が今後も続くかは不透明です。世界経済の減速リスクや、為替動向による企業業績への影響次第では、賃上げペースが鈍化する可能性もあります。特に中小企業は外部環境の変化に対する耐性が低く、景気後退局面では真っ先に賃上げが止まるリスクがあります。

世代間格差への対応

若年層の賃金上昇は人材確保の観点から合理的ですが、中高年層のモチベーション低下を招く恐れもあります。企業は若手偏重の賃金政策に陥らず、全世代のスキル開発と公正な評価制度の構築に取り組む必要があります。

まとめ

内閣府のミニ経済白書は、日本の賃金構造に世代間・企業規模間の格差が広がっている実態を明らかにしました。Z世代や大企業は人材争奪戦の恩恵を受けて賃金が上昇していますが、中高年や中小企業は取り残されるリスクに直面しています。

この格差を埋めるためには、労働者のリスキリングとM&Aによる中小企業の生産性向上が不可欠です。働き手は自身のスキルを市場ニーズに合わせて更新し、企業は評価制度の見直しや事業の効率化に取り組むことが求められます。賃上げの好循環を社会全体に広げられるかが、日本経済の重要な分岐点です。

参考資料:

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