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by nicoxz

アジア諸国が「二人っ子政策」を撤廃、人口減少危機で多子世帯奨励へ

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はじめに

ベトナムの首都ハノイで企業幹部として働くブー・ティ・フエン・チャンさんは、3歳の息子に弟や妹ができることはないだろうと話します。「子どもは1人だけにしたい。出産後は体力が大きく落ちたと感じたし、仕事では出張も多く、もう1人産んでもちゃんと面倒をみられない」。

このような個人の選択が積み重なった結果、アジア各国は深刻な人口減少に直面しています。かつて人口爆発を恐れて実施した「二人っ子政策」は今や過去のものとなり、各国政府は出生率向上へと舵を切りました。本記事では、アジアにおける人口政策の劇的な転換と、その背景にある社会・経済的課題を詳しく解説します。

ベトナムの政策大転換——37年間の制限撤廃

二人っ子政策の歴史と終焉

2025年6月、ベトナム国会は家族規模の制限を撤廃する法改正を可決しました。これにより、1988年から37年間続いた「二人っ子政策」が正式に終了し、夫婦は望むだけの子供を持つことができるようになりました。

ベトナムが二人っ子政策を導入したのは1988年のことです。当時、女性1人あたりの平均出生数は4人を超えており、急速な人口増加が経済発展を阻害すると懸念されていました。1993年には、統一ベトナムとして初めて「1〜2人の子供政策」を正式な国家政策として法制化しました。

この政策は一般市民への強制は緩やかでしたが、政府職員や共産党員には厳格に適用され、違反すれば政府補助金や支援を失うリスクがありました。

出生率の急降下

しかし、政策の「成功」は予想を超えるものでした。1999年から2022年まで、ベトナムの出生率は人口維持に必要な水準である2.1人前後を保っていましたが、2022年に2.01人へ低下。2023年には1.93人、そして2024年には過去最低の1.91人を記録しました。

特に都市部での低下が顕著で、ホーチミン市では1.39人、首都ハノイでも全国平均を大きく下回っています。生活費の高騰が主な要因です。

急速な高齢化への懸念

ダオ・ホン・ラン保健相は、「将来の人口減少は、ベトナムの持続可能な経済・社会発展、さらには長期的な国家安全保障と防衛を脅かす」と警告しています。

国連人口基金によると、ベトナムでは2011年に人口高齢化が始まり、「高齢化社会」から「高齢社会」への移行がわずか20年で完了するという急速なペースで進行しています。これは日本やヨーロッパ諸国よりもはるかに速い変化です。

アジア全域での政策転換——台湾・日本・中国・韓国

各国の深刻な状況

ベトナムだけでなく、アジア全域で同様の人口危機が進行しています。

韓国: 世界最低の出生率を6年連続で記録し、2023年には0.81人という驚異的な低水準に達しました。これは人口維持に必要な水準の4割未満です。

日本: 数十年にわたる人口減少に直面し、65歳以上の人口が全体の約30%を占めています。政府は2026年4月にも出産費用の完全無償化を目指し、公的医療保険ですべての出産費用を全国的にカバーする予定です。

中国: かつての「一人っ子政策」を完全撤廃し、現在は最大3人までの子供を奨励。天門市では第3子出産に対して最大**4万9,107ドル(約720万円)**の補助金を提供しています。

財政支援策の拡充

各国は出生率向上のため、多額の財政支援を投入しています。

韓国の支援策:

  • 第1子出産時: 200万ウォン(約1,519ドル)
  • 第2子出産時: 300万ウォン(約2,279ドル)
  • 子供が2歳になるまでの総額: 最大1,800万ウォン(約13,674ドル)
  • 育児休業手当の増額、勤務時間の柔軟化、保育・学童保育プログラム、税制優遇など

日本の政策: 財政的インセンティブ、育児休業の延長、保育補助金、職場改革などの包括的な少子化対策を実施。

中国: 3人までの出産を認め、地方政府ごとに独自の財政支援を展開。一部地域では数百万円規模の補助金も。

支援策の限界——なぜ効果が出ないのか

一時金の限定的効果

研究によると、出産一時金などの現金給付は短期的な効果しかないことが明らかになっています。これは子育ての総費用のごく一部しかカバーしないためです。

対照的に、親が働き続けられるよう支援する政策(保育サービス、育児休業、柔軟な労働環境など)は、より持続的な効果を示しています。

根深い構造的・文化的問題

専門家は、低出生率が「大きな制度的、文化的、構造的問題の反映」だと指摘しています。具体的には以下のような要因があります。

経済的負担: 教育費、住宅費、生活費の高騰により、多くの若い夫婦は複数の子供を持つ余裕がありません。

ワークライフバランス: 長時間労働や硬直的な職場文化が、子育てと仕事の両立を困難にしています。

ジェンダー規範: ピュー研究所の2024年調査によると、東アジアの成人の多くは「女性に子供を産む社会的義務がある」という考えを支持していません。伝統的な家族観が変化し、個人の選択が優先されるようになっています。

晩婚化・非婚化: 結婚年齢の上昇や結婚しない人の増加も、出生率低下の大きな要因です。

ベトナム特有の課題——性比の不均衡

男児選好の影響

ベトナムでは新たな問題も浮上しています。2024年の出生性比は女児100人に対して男児111人と、自然な比率(約105対100)を大きく上回っています。

この不均衡は2006年の103対100から徐々に悪化し、2024年には111対100に達しました。これは超音波技術の普及により、性別選択的な人工中絶が行われている可能性を示唆しています。

男児過剰は将来的に結婚市場の歪みや社会不安を引き起こす恐れがあり、ベトナム政府は是正策を検討しています。

注意点と今後の展望

政策変更だけでは不十分

専門家は、単に出産制限を撤廃するだけでは出生率向上につながらないと警告しています。実際、中国は2016年に二人っ子政策を、2021年には三人っ子政策を導入しましたが、出生率は低下し続けています。

必要なのは、包括的な社会システムの改革です。

求められる多面的アプローチ

出生率回復には以下のような施策が不可欠です。

経済的支援の継続: 一時金ではなく、長期的・継続的な財政支援(児童手当、教育費補助など)。

労働環境の改善: 育児休業の充実、柔軟な勤務形態、男性の育児参加促進。

保育インフラの整備: 質の高い保育サービスの拡充とアクセス改善。

ジェンダー平等の推進: 家事・育児の男女平等な分担を促す文化的変革。

住宅政策: 若い世代が家族を持ちやすい住宅支援。

移民政策という選択肢

一部の国では、移民受け入れによる人口維持も議論されています。しかし、文化的・政治的な課題もあり、アジア各国での本格的な導入は限定的です。

まとめ

ベトナムをはじめとするアジア諸国は、かつての人口抑制政策から一転し、出生率向上へと政策を大きく転換しています。しかし、財政支援だけでは効果が限定的であることが明らかになりつつあります。

低出生率の背景には、経済的負担、労働環境、ジェンダー規範、価値観の変化など、複雑に絡み合った構造的問題があります。これらを解決するには、単なる金銭的インセンティブを超えた、社会システム全体の変革が必要です。

アジア各国は今、人口維持と経済発展の両立という難題に直面しています。各国の取り組みとその成果は、今後の世界的な少子化対策のモデルケースとなるでしょう。私たち一人ひとりも、子供を持つことの意味、働き方、社会のあり方について、改めて考える時期に来ています。

参考資料:

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