外国人労働者受け入れ、衆院選候補4割が消極的な理由
はじめに
2026年衆議院選挙において、外国人労働者の受け入れ政策が重要な争点として浮上しています。日本経済新聞社が実施した候補者アンケートでは、37%の候補者が外国人労働者の受け入れを「抑制」または「中止」すべきだと回答しました。
一方で、日本は深刻な人口減少に直面しており、民間シンクタンクの試算によれば2040年には1100万人の労働力が不足すると予測されています。人手不足の解消と外国人受け入れへの懸念という相反する課題に、日本社会はどう向き合うべきでしょうか。
本記事では、衆院選における候補者の意識調査結果と、外国人労働者政策を取り巻く現状、そして今後の展望について解説します。
候補者アンケートが示す政治家の意識
4割近くが「消極的」という現実
日本経済新聞社が第51回衆議院選挙の候補者に実施したアンケート調査によると、外国人労働者の受け入れに関する回答は以下のような結果となりました。
- 「いまより受け入れを抑制すべき」:36%
- 「受け入れるべきではない」:1%
- 「いまのペースを続けるべき」:30%
- 「さらに積極的に受け入れるべき」:6%
- 「どちらともいえない」:27%
消極的な意見を持つ候補者が37%を占める一方、積極的な受け入れ拡大を支持する候補者はわずか6%にとどまっています。
政党間の温度差
NHKが各政党に対して行ったアンケートでは、高市内閣の外国人政策への評価について、11党のうち4党が「評価する」とした一方、7党が「評価しない」と回答しました。政党によって外国人政策に対するスタンスには大きな開きがあります。
与党側は治安維持や不法就労対策を重視する傾向があり、野党の一部は人権や共生社会の観点から政策を批判しています。ただし、労働力確保の必要性については与野党ともに一定の認識を共有しています。
深刻化する人手不足の実態
2040年に1100万人の労働力不足
日本の人口減少は加速の一途をたどっています。1995年のピーク時には約8700万人だった生産年齢人口(15〜64歳)は、2021年には約7400万人まで減少しました。
リクルートワークス研究所のシミュレーションによれば、2040年には1100万人の労働力が不足するとの予測が出ています。また、パーソル総合研究所と中央大学が2024年にまとめた推計では、2035年には384万人の労働力不足が生じるとされています。
外国人労働者は過去最高を更新
厚生労働省の統計によると、令和6年(2024年)10月末時点の外国人労働者数は約230万人(2,302,587人)で、前年同期比12.4%増となり、過去最高を更新しました。
国籍別ではベトナムが約57万人(24.8%)で最多、次いで中国が約41万人(17.8%)、フィリピンが約25万人(10.7%)となっています。すでに日本経済は外国人労働力なしには成り立たない構造になりつつあります。
業種別の深刻度
特に人手不足が深刻なのは、介護、建設、農業、飲食、宿泊といった分野です。これらの業種では国内労働者の確保が困難なため、外国人材への依存度が年々高まっています。
政府の試算では、労働力不足43万人を外国人材で補完する必要があるとしており、育成就労と特定技能を合わせて123万人程度の受け入れを計画しています。
政府の外国人政策と新制度
2027年から「育成就労」制度スタート
政府は2027年4月から、現行の技能実習制度に代わる新たな在留資格「育成就労」を導入します。この制度は外国人の人材育成と国内の人材確保を両立することを目的としています。
育成就労制度の特徴は以下の通りです。
- 対象分野:農業、建設、介護、外食、宿泊など17分野
- 在留期間:原則3年
- 転籍:一定条件下で可能(技能実習との大きな違い)
- 移行先:要件を満たせば特定技能への移行が可能
受け入れ上限については、2027年度から2028年度までの2年間で育成就労が約43万人、特定技能が約80万人、合計で約123万人と設定されています。
高市政権による厳格化方針
一方で、高市早苗政権は外国人政策の厳格化を進めています。2026年1月23日に取りまとめられた基本方針では、以下のような施策が盛り込まれました。
- 永住資格取得時に日本語能力要件を新設
- 帰化(国籍取得)の居住要件を5年から10年へ延長を検討
- 医療費不払いと入国審査の連動
- 不動産登記における国籍把握
高市首相は「一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し、国民が不安や不公平を感じている」と述べ、「排外主義とは一線を画しつつ、毅然と対応する」姿勢を示しています。
選挙戦で問われる論点
経済合理性と社会不安の狭間で
今回の衆院選では、外国人労働者政策について明確な対立軸が形成されています。
受け入れ拡大派は、人口減少下での経済成長維持には外国人材が不可欠であり、「選ばれる国」になるための環境整備が急務だと主張します。企業の生産活動や社会インフラの維持には、外国人労働力が欠かせないという現実論です。
一方、受け入れ抑制派は、治安悪化への懸念、社会保障制度への負担増、文化的摩擦などを理由に、慎重な対応を求めています。地域によっては外国人住民の急増により、ごみ出しルールや騒音問題などで摩擦が生じているケースも報告されています。
有権者の意識
朝日新聞が2025年11月に実施した世論調査では、在留外国人や外国人観光客について「増えた方がいい」が26%、「減った方がいい」が56%という結果でした。高市政権の外国人政策については「期待の方が大きい」が66%を占めています。
この結果は、多くの国民が外国人の増加に不安を感じていることを示しています。候補者の意識と有権者の意識には一定の相関があるといえるでしょう。
注意点・今後の展望
「総量規制」の議論は継続
自民党と日本維新の会の連立合意では、外国人受け入れの数値目標を含む「人口戦略」を2026年度に策定するとしています。ただし、外国人の上限枠設定は労働需給の逼迫を招く可能性があるため、短期的には結論を急がないとみられています。
バランスの取れた議論の必要性
外国人労働者政策は、経済、社会保障、治安、人権、国際関係など多岐にわたる論点を含んでいます。感情的な排外主義でも、無制限の受け入れでもない、現実的で持続可能な制度設計が求められます。
特に重要なのは、すでに日本で働いている外国人労働者の権利保護と、地域社会との共生促進です。技能実習制度で問題となった労働環境の劣悪さや失踪問題を繰り返さないためにも、制度の透明性と実効性を高める必要があります。
まとめ
2026年衆院選において、外国人労働者政策は重要な争点として浮上しています。候補者の37%が受け入れ抑制・中止を主張する一方、2040年には1100万人の労働力不足が予測されており、政策判断は容易ではありません。
2027年からスタートする育成就労制度は、技能実習制度の問題点を克服しつつ、外国人材の確保と育成を両立させることを目指しています。高市政権は厳格化の方針を示しつつも、人手不足への対応という現実にも向き合わざるを得ません。
有権者としては、各候補者・政党の外国人政策を比較検討し、短期的な感情論ではなく、長期的な国家戦略としてどのような選択が望ましいかを考える必要があるでしょう。
参考資料:
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