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by nicoxz

BYD減益が映す中国車の低価格化と利益なき成長構図の実態

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はじめに

中国の自動車市場は、数量だけ見ればなお世界で最も力強い市場です。2025年の中国自動車販売は3440万台に達し、新エネルギー車の販売は1649万台、国内新車販売に占める比率は47.9%まで上がりました。ところが、車が売れているのに、主要メーカーの収益はむしろ苦しくなっています。これが2026年春の中国車業界の最大の逆説です。

象徴がBYDです。世界最大の新エネルギー車メーカーである同社は、2025年通期の純利益が19%減の326.2億元となり、4年ぶりの減益になりました。Li Autoも2025年通期純利益が85.8%減の11.2億元へ落ち込み、長城汽車も増収の一方で純利益は22.07%減でした。この記事では、中国車大手の減益がなぜ起きているのかを、低価格車シフト、商品ミックス、業界全体の利益率低下という3つの軸から読み解きます。

売れても儲からない中国車市場

記録的な販売拡大と歴史的な低収益の同居

中国自動車工業協会によると、2025年の中国の自動車販売は3440万台で前年比9.4%増、うち新エネルギー車は1649万台で同28.2%増でした。数量の拡大だけを見れば、市場はまだ成長局面にあります。しかし、崔東樹・乗聯会秘書長が公表した2025年通年データでは、自動車業界の利益率は4.1%と歴史的低水準に沈み、12月単月では1.8%まで落ち込みました。

売上高は11.18兆元で前年比7.1%増えたのに、営業コストは8.1%増とそれ以上のペースで伸び、利益総額は4610億元、伸び率はわずか0.6%にとどまりました。つまり中国車市場は、需要が弱いから苦しいのではありません。値引き、装備競争、研究開発、販促費が同時に膨らみ、台数増加が利益へ結びつきにくい市場へ変質しているのです。

BYDでも逃げ切れない価格戦争

その構図を最もよく示すのがBYDです。BYDの2025年通期純利益は326.2億元で前年比19%減、売上高は8040億元で3.46%増にとどまりました。売上高の伸びとしては6年で最も低い水準です。

しかも2026年に入ってからも楽ではありません。ロイター計算を引用したETAutoによると、BYDの3月販売は30万0222台で前年同月比20.5%減、1〜3月期の販売は前年同期比30%減でした。BYDは150,000元超の新ラインアップ投入で巻き返しを図っていますが、同記事はこの価格帯が中国市場で特に競争の厳しいゾーンだと指摘しています。数量の王者であっても、価格と商品力の両面で追い上げを受ければ、利益は簡単に削られるわけです。

減益を広げる低価格車シフト

消費者は「安いが賢い」車へ移動

中国EV市場では、低価格化は単なる値引きではありません。より安い価格帯でも、運転支援、音声操作、コネクテッド機能を備えた“スマート車”が当たり前になりつつあります。South China Morning Postは2025年2月、吉利や小鵬の低価格モデルが中間所得層を引きつけており、消費者は経済見通しや雇用不安を背景に、より安いモデルを選好していると報じました。

この需要変化は平均販売単価を押し下げます。Li Autoの2025年通期決算でも、車両売上は23.0%減、車両マージンは19.8%から17.9%へ低下しました。会社側は四半期ベースで、Li i6投入後の「異なる商品ミックス」と平均販売価格低下が利益率に影響したと説明しています。これまで高価格帯PHEVで稼いできた企業ですら、価格帯が下がれば利益率は守れないのです。

低価格化が厄介なのは、単価だけでなく競争の土俵まで変える点です。従来なら高級車にしか載らなかった機能が量販価格帯へ下りてくるため、メーカーは値段を下げながら装備を増やさなければなりません。その結果、販売拡大がコスト削減を上回る速度で利益を削る現象が起きます。

増収減益が示す「利益なき成長」

長城汽車の2025年決算は、この「利益なき成長」をよく表しています。2025年売上高は2228.24億元で前年比10.2%増、販売台数も7.23%増でしたが、帰母純利益は22.07%減の98.65億元でした。新浪財経の決算解説では、整車事業の粗利率が19.47%から17.29%へ低下し、販促や販売費増加が利益を圧迫したとしています。

つまり、中国車大手は「台数を増やすほど儲かる」段階を過ぎています。価格競争が激しい市場では、値下げや販促でシェアを守っても、利益の取り分はむしろ縮みます。かつては成長企業の証しだった増収が、いまは構造的な収益悪化を覆い隠す数字になりつつあります。

勝ち残りを分ける条件

例外としての吉利と、問われる規模の質

もっとも、中国車大手がすべて同じように苦しいわけではありません。吉利汽車は2025年販売が302万4567台と過去最高を更新し、新エネルギー車販売は168万7767台で前年比90%増でした。Geelyは高級EVのZeekr、大衆向けのGalaxy、Lynk & Coなど複数ブランドを使い分けながら、量販と高付加価値の両立を進めています。低価格化そのものより、どの価格帯をどのブランドで取りにいくかの設計力が差を生んでいると言えます。

この点でBYDの苦しさは示唆的です。BYDは量で勝っても、国内での値下げ圧力が大きい限り、利益率は守りにくい。逆にGeelyのようにブランド階層と商品ポートフォリオを細かく分けられる企業は、低価格帯の拡大をそのまま全社利益率の崩れにしない余地があります。今後の勝敗は、単純な販売台数より「どの台数を、どの粗利で売るか」に移っています。

海外展開は逃げ道になるか

その意味で、海外販売は大手各社にとって重要な逃げ道です。BYDは2026年1〜3月期の海外販売が32万0673台で全体の45.8%を占めたとロイターが報じています。中国国内より価格維持がしやすい市場を広げれば、利益率を下支えできます。長城汽車も2025年の海外売上が国内を上回る伸びを記録しました。

ただし、海外が万能薬になるわけではありません。各国の関税、現地生産投資、販売網整備、政治リスクが伴うため、短期的にはむしろ費用先行になりやすいからです。中国国内の価格戦争が長引くほど、海外展開は必要になりますが、同時に資金負担も増します。

注意点・展望

中国車市場を読むときに避けたいのは、「安い車が売れているから中国メーカーは強い」という単純化です。実際には、安さは強みであると同時に収益圧迫要因でもあります。2025年の業界利益率4.1%という数字は、世界最大市場がもはや高収益市場ではないことを示しています。

今後の焦点は三つあります。第一に、価格競争をどこまで抑えられるか。第二に、低価格帯でもソフトやADASを含めた装備競争を続けられるか。第三に、海外展開で国内依存をどこまで薄められるかです。2026年は販売台数ランキング以上に、粗利率と商品ミックスの改善が企業価値を左右する年になるでしょう。

まとめ

BYDなど中国車大手の減益は、一時的な販売不振というより、市場構造の変化を映しています。中国では2025年に自動車販売が過去最高を更新した一方、業界利益率は4.1%へ沈みました。BYD、Li Auto、長城汽車の決算は、低価格車シフトと価格競争が収益を削っていることをはっきり示しています。

中国車の次の勝負は、何台売るかではなく、どれだけ利益を残せるかです。量産力だけでは勝ちにくくなり、ブランド設計、海外展開、価格帯ごとの粗利管理がより重要になります。中国EVの時代は続きますが、その内部ではすでに「成長の質」をめぐる淘汰が始まっています。

参考資料:

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