高度外国人材の45%が大卒初任給以下、制度と実態のずれ
はじめに
政府が「イノベーションをもたらす」として積極的に受け入れを進めてきた「高度外国人材」。しかし、その約45%は所定内給与が大卒初任給の平均(24万8,000円)を下回る実態があることが、賃金構造基本統計調査のデータ分析から明らかになりました。
専門的な知識や技術を持つはずの外国人材が、人手不足の現場で単純労働の穴埋めとして働かされている現状が浮き彫りになっています。制度の趣旨と実態のずれが生じているのです。
本記事では、高度外国人材の定義と在留資格制度、賃金の実態、そして制度改善に向けた課題について詳しく解説します。
高度外国人材とは何か
在留資格の種類
日本で働く外国人は、その在留資格によって分類されます。「高度外国人材」とは、一般的に「専門的・技術的分野」の在留資格を持つ外国人を指します。
代表的な在留資格として「技術・人文知識・国際業務」があります。これは、理学・工学などの自然科学分野や法律学・経済学などの人文科学分野の知識を必要とする業務、あるいは外国の文化に基盤を持つ思考や感受性を必要とする業務に従事する外国人に付与されるものです。
取得には大学や短期大学、専門学校を卒業するか、一定年数の実務経験が必要とされ、本来は高スキル人材として位置づけられています。
在留者数の急増
「技術・人文知識・国際業務」の在留者数は急速に増加しています。2013年末には115,357人でしたが、2024年末時点では約418,706人と、約3.6倍に膨れ上がりました。2024年末には技能実習(47万人)に迫る規模となっています。
政府は高度外国人材の受け入れを積極的に推進しており、高度専門職ビザやポイント制度による優遇措置も設けています。
制度の趣旨
高度外国人材の受け入れは、日本経済の成長や国際競争力の強化を目的としています。専門的な知識や技術を持つ外国人が日本で活躍することで、イノベーションの創出や技術移転が期待されています。
しかし、現実には制度の趣旨とは異なる形で在留資格が活用されているケースが指摘されています。
賃金の実態と課題
大卒初任給を下回る給与
賃金構造基本統計調査のデータを分析すると、「専門的・技術的分野」の在留資格を持つ外国人の約45%が、大卒初任給の平均(24万8,000円)を下回る給与で働いていることがわかりました。
2024年の調査では、専門的・技術的分野(特定技能を除く)の外国人労働者の平均賃金は29万2,000円となっています。平均値は一定の水準を保っていますが、その内実は二極化しています。
日本人との賃金格差
内閣府の分析によると、高技能外国人についても、職種ごとに差はあるものの、日本人労働者よりも賃金が低いことが確認されています。
特に技能実習では、いずれの職種においても日本人労働者より20%強から30%強ほど賃金が低くなっています。専門的・技術的分野でも同様の傾向があり、外国人というだけで賃金が抑えられている実態が浮かびます。
在留資格別の賃金比較
外国人労働者の在留資格別平均賃金を見ると、以下のような格差があります。
- 身分に基づくもの(永住者等):30万0,300円
- 専門的・技術的分野(特定技能除く):29万2,000円
- その他:22万6,500円
- 特定技能:21万1,200円
- 技能実習:18万2,700円
最も高い「身分に基づくもの」と最も低い「技能実習」では、月額で約12万円の開きがあります。
人手不足の穴埋めとしての実態
制度の趣旨との乖離
政府は一部の在留資格において、本来の趣旨とは異なる形で在留資格が取得されている事例があると認識しています。「技術・人文知識・国際業務」のような高度人材向けの資格を持ちながら、実際には単純労働に従事しているケースが問題視されています。
企業側が人手不足を補うため、本来は高度な業務を想定した在留資格を持つ外国人を、単純作業の現場に配置している実態があります。
労働相談の急増
外国人労働者からの労働相談は急増しています。賃金の未払いや不当な労働条件、契約内容と実際の業務の相違など、様々な問題が報告されています。
特に問題となっているのは、採用時に提示された業務内容と実際の業務が異なるケースです。専門職として採用されながら、実際には現場作業に従事させられる例が後を絶ちません。
日本の魅力度低下
OECDの「Talent Attractiveness 2023」によれば、日本の魅力度は高学歴労働者、外国人起業家、スタートアップ創業者にとって、国際比較で低位となっています。
特に賃金水準の低さが問題です。日本はG7の中で最下位であり、OECD平均より低い水準にとどまっています。優秀な外国人材が日本ではなく他国を選ぶ傾向が強まっています。
制度改革の動き
育成就労制度の創設
政府は2027年4月から、現行の技能実習制度に代わる「育成就労」制度を開始します。受け入れ枠は2028年度までの2年間で43万人とする方針です。
育成就労は外国人の人材育成と国内の人材確保を目的とし、原則3年働いた後、より技能レベルが高い「特定技能」に移行できる道筋をつけます。日本での長期就労を可能にすることで、キャリア形成を支援する狙いがあります。
特定技能との連携
特定技能制度と合わせて123万人まで外国人労働者を受け入れられる体制を整備します。パーソル総合研究所と中央大学の推計によると、2035年には384万人の労働力が不足すると見込まれており、外国人就業者数は2023年の205万人から2035年には377万人に増加すると予測されています。
適正運用の徹底
経団連は、適切な在留資格の運用を徹底し、現場人材については技能や日本語能力等を適切に測る制度設計により質の担保を図るべきと提言しています。
在留資格の趣旨に沿った適正な雇用が行われるよう、企業への監督強化と外国人労働者の相談体制の充実が求められています。
今後の展望と課題
同一労働同一賃金の徹底
外国人を雇用する場合、日本人と同一の賃金水準でなければなりません。2020年4月から「同一労働同一賃金制度」が施行され、外国人にも適用されています。
しかし、実際には外国人であることを理由に低い賃金が設定されるケースが散見されます。法令遵守の徹底と監督体制の強化が不可欠です。
外国人材の活躍促進
外国人材が本来の専門性を活かして活躍できる環境整備が必要です。日本語教育の充実、キャリアパスの明確化、社内での昇進機会の確保など、企業側の取り組みが求められます。
また、高度人材ポイント制度を活用し、真に高度な専門性を持つ外国人に対しては、永住許可の緩和など優遇措置を講じることで、優秀な人材の確保を図る必要があります。
受け入れ体制の見直し
人手不足を理由とした安易な外国人活用ではなく、制度の趣旨に沿った適正な受け入れが求められます。専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人が、その能力を十分に発揮できる職場環境を整えることが、日本の国際競争力強化につながります。
まとめ
高度外国人材の約半数が大卒初任給を下回る給与で働いている実態は、制度の趣旨と現実の大きな乖離を示しています。政府が「イノベーションの担い手」として期待する外国人材が、実際には人手不足の穴埋めとして低賃金で働かされているのです。
2027年からの育成就労制度の開始など、制度改革の動きは進んでいます。しかし、外国人労働者の権利保護と適正な処遇を確保するためには、企業への監督強化と相談体制の充実が不可欠です。
日本が外国人材にとって魅力的な働き先となるためには、賃金水準の改善とキャリア形成支援が急務となっています。制度と実態のずれを解消し、外国人材が真の意味で活躍できる社会の実現が求められています。
参考資料:
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