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by nicoxz

2026年日本経済展望—AIとロボットが成長を牽引

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はじめに

2026年の日本経済は、人工知能(AI)関連投資に牽引される形で緩やかな回復が続くとの見方が広がっています。1月26日に開催された日本経済新聞社と日本経済研究センター主催の「新春景気討論会」では、AIとロボット分野の成長可能性、実質賃金のプラス転化、そして衆院選で争点となっている消費税減税の課題などが議論されました。

本記事では、討論会で示された2026年の経済見通しと、日本経済が直面する構造的な課題について解説します。

AI投資が景気回復を牽引

国内外での成長期待

討論会では、2026年の国内外の景気はAI関連の投資需要がけん引する形で回復が続くとの見方が相次ぎました。日本政府も国産AI開発に向けた大規模な支援策を打ち出しており、ソフトバンクなど日本企業十数社による新会社設立構想に対し、経済産業省が5年間で1兆円規模の支援を計画しています。

2026年度予算案には関連経費として3000億円程度が計上される予定で、AIが日本企業の利益に本格貢献する年になるとの期待が高まっています。

企業向けAIエージェントへの期待

特に注目されているのが、企業の業務効率化を支援する「AIエージェント」です。これは単なる生成AIの活用を超え、ソフトウェアが人間の作業を自動化し、業務そのものを代行する技術です。

野村総合研究所のエコノミストは「日本経済を約30年見てきたが、生産性が本当に上がると感じたことはこれほどなかった」と述べており、AI技術が日本の構造的な課題である低生産性を解決する可能性を示唆しています。

日本のロボット産業の潜在力

フィジカルAIと労働力不足対策

討論会では「日本はロボットに高い潜在力がある」との指摘がありました。人型ロボットやフィジカルAI(現実世界で作動するAI)は、労働力不足や高齢化といった日本の社会課題を解決するキー技術として位置づけられています。

日本政府は2026年以降に官民で30万人規模がAIロボットを活用する体制の構築を目指しており、2027年までに国産ヒト型ロボットの量産を開始するプロジェクトも動き始めています。

自動化がもたらすプラス効果

歴史的に移民政策に慎重な日本では、高齢化と人手不足に対処するため、自動化への依存が他国より進んでいます。IMFの分析によると、日本における製造業のロボット導入密度の上昇は、生産性向上だけでなく、地域の雇用と賃金の増加にもつながっているとの実証結果が出ています。

労働者を置き換えるのではなく、労働者の生産性を高め、より付加価値の高い業務に集中させることで、全体としての雇用と所得を増やすというのが日本型のアプローチです。

最低賃金と実質賃金の行方

賃上げの重要性

討論会では「最低賃金の引き上げが急務」との意見も出されました。2026年の春闘(春季労使交渉)では、5%近い賃上げが実現する見通しで、これが実質賃金のプラス転化につながると期待されています。

日本銀行の1月展望レポートでも、物価上昇率は2026年度以降に2%の目標を下回り鈍化する一方、賃上げ効果が実質所得に反映されやすくなることで、長く停滞していた個人消費が徐々に回復することが期待されています。

中小企業への波及が課題

ただし、大企業での賃上げが中小企業にまで十分に浸透するかどうかは依然として課題です。日本の雇用の約7割を占める中小企業で賃上げが進まなければ、消費回復の力は限定的なものにとどまる可能性があります。

経済産業省は、AIを導入して生産性を向上させつつ最低賃金を引き上げる中小企業に対する補助金制度を設けており、テクノロジーと賃上げの両立を後押ししています。

消費税減税をめぐる議論

衆院選の争点に

2月8日投開票の衆議院選挙を控え、消費税減税が大きな争点となっています。各党の主な政策は以下の通りです。

  • 自民党・維新の会:食料品について2年間限定で消費税ゼロ
  • 中道改革連合:食料品について恒久的にゼロ
  • 国民民主党:一時的に一律5%
  • 共産党:一律5%、その後廃止を目指す
  • れいわ新選組:速やかに廃止

自民党にも消費税減税論が波及しており、2024年10月に日本維新の会と交わした連立政権樹立の合意書には「飲食料品については2年間に限り消費税の対象としないことも視野に法制化の検討を行う」と明記されています。

財源確保の課題

消費税を減税した場合の財源確保が最大の課題です。日本共産党は「大軍拡を止めて、富裕層や大企業への課税を強める」としている一方、国民民主党などは「期限付きの減税で経済を回し、税収全体を増やす」というシナリオを描いています。

維新の会の藤田文武共同代表は「無制限な減税は論外だ。市場から信認を得られない」と指摘し、期限を設ける必要性を強調しています。金融市場が財政への目配りが乏しいと判断すれば、金利上昇や円安に拍車がかかるリスクがあるためです。

地政学リスクと注意点

外部環境の不確実性

2026年の日本経済には、複数のリスク要因も存在します。トランプ米政権の関税政策、グリーンランド問題に端を発する西側同盟の亀裂、中国の軍事的動向など、地政学的リスクが世界経済を下押しした場合、日本の景気回復シナリオは容易に崩れる可能性があります。

討論会でも「穏やかな成長が見込まれるが、様々な地政学リスクが出ている」との指摘があり、今のところ経済への影響は限定的ながらも、注視が必要な状況です。

AI投資バブルへの警戒

世界的に見ると、巨額のAI投資が「リスク表面化」の年になる可能性も指摘されています。AIへの投資が期待通りのリターンを生まなかった場合、投資の巻き戻しが景気を下押しするリスクがあります。

また、AI技術が労働市場に与える影響についても慎重な見方が必要です。一部の専門家は、2026年はAIが人間の労働を本格的に代替し始める年になると予測しており、事務職を中心に雇用への影響が懸念されています。

まとめ

2026年の日本経済は、AI投資とロボット技術の進展、実質賃金のプラス転化を原動力として、緩やかな回復が期待されています。「脱デフレ宣言」が現実のものとなれば、長年続いた経済停滞から脱却する歴史的な転換点となる可能性があります。

一方で、消費税減税をめぐる財源問題、中小企業への賃上げ波及、地政学的リスクなど、課題も山積しています。2月8日の衆院選の結果と、その後の経済政策の方向性が、日本経済の行方を大きく左右することになりそうです。

参考資料:

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