KFCデリバリー刷新、店頭価格で単品注文も可能に
はじめに
日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)が、自社の宅配サービス「KFCデリバリー」を2026年2月4日から大幅にリニューアルすることを発表しました。最大の変更点は、これまで店頭価格に上乗せしていたデリバリー専用価格を撤廃し、店頭と同一価格で購入できるようになることです。
さらに、従来は1,500円以上の注文が必要だった最低注文金額も撤廃され、オリジナルチキン1ピース(310円)からでも宅配が可能になります。フードデリバリー市場が拡大する中、KFCはなぜこのタイミングで大幅な制度変更に踏み切ったのでしょうか。本記事では、今回の改定内容と、その背景にあるフードデリバリー市場の競争環境について詳しく解説します。
KFCデリバリー改定の全貌
店頭価格との統一と最低注文金額の撤廃
今回のリニューアルで最も注目すべき点は、デリバリー専用価格の廃止です。これまでKFCデリバリーでは、店頭価格に一定額を上乗せした「デリバリー価格」が設定されていました。2月4日以降はこの上乗せ分がなくなり、すべてのメニューが店頭と同じ税込価格で購入できるようになります。
あわせて、従来設定されていた最低注文金額1,500円も撤廃されます。これにより、オリジナルチキン1ピースやドリンク1杯といった少額の注文でもデリバリーが利用可能です。単身世帯やランチタイムの軽食需要など、これまで取りこぼしていた利用シーンの開拓が期待されます。
配送手数料の改定と価格競争力
一方で、配送手数料は従来の300円(税込)から860円(税込)に引き上げられます。商品の上乗せ価格をなくした分、配送コストを手数料に転嫁する形です。
KFCの試算によると、約2,000円以上を購入した場合、Uber Eatsや出前館などの配達代行サービスと比較してKFCデリバリーの方がお得になります。つまり、チキン数ピースとサイドメニューを組み合わせるような一般的な注文であれば、自社デリバリーの方が総額で安くなる設計です。
注文可能メニューの大幅拡大
デリバリーで注文できるメニューも大幅に拡大されます。従来は全体の約6割だった対象メニューが、改定後は約9割にまで広がります。これまでデリバリーでは注文できなかった「創業記念パック」などのバリューパックや、毎日10時から15時限定の「ケンタランチ」も対象に加わります。
店舗限定メニューもデリバリーで購入可能になるため、近くに店舗がない地域のユーザーにとっても利便性が大きく向上します。対象店舗は全国約850のKFC店舗です。
フードデリバリー市場とKFCの戦略
拡大する日本のデリバリー市場
日本のフードデリバリー市場は着実に成長を続けています。2023年の市場規模は8,622億円に達し、前年比11%増を記録しました。コロナ禍前と比較すると106%増という大幅な伸びです。
しかし、日本におけるフードデリバリーの浸透率はまだ5%未満にとどまっています。韓国や中国では30%、アメリカでも10%以上に達しており、日本市場にはまだ大きな成長余地が残されています。
自社デリバリー強化の狙い
KFCが自社デリバリーの価格競争力を強化する背景には、配達代行プラットフォームへの依存度を下げたい意図があります。Uber Eatsや出前館などのプラットフォームでは、飲食店側が売上の一定割合を手数料として支払う必要があります。
自社デリバリーで直接注文を受ければ、この中間手数料を削減できます。今回の改定で「自社デリバリーの方がお得」という明確なメリットを打ち出すことで、ユーザーを自社アプリへ誘導する戦略です。なお、Uber Eats、出前館、Wolt、Rocket Nowなどの配達代行サービスでの販売価格は、今回の改定の対象外です。
他のファストフードチェーンの動向
フードデリバリー市場の競争が激化する中、各ファストフードチェーンも自社デリバリーの強化に力を入れています。マクドナルドは「マックデリバリー」を展開し、独自の配達網を構築しています。ドミノ・ピザも自社配達を主力とするビジネスモデルで成長を遂げてきました。KFCの今回の改定は、こうした競合に対抗する動きとも位置づけられます。
注意点・展望
今回の改定で注意すべき点は、配送手数料の値上げです。少額の注文では、商品価格が下がっても配送手数料860円の負担が相対的に大きくなります。例えば、オリジナルチキン1ピース(310円)だけを注文する場合、支払総額は1,170円となり、手軽に利用できるかどうかは消費者の判断が分かれるところです。
一方で、ファミリー向けのセットメニューや複数人での注文では、従来のデリバリー価格より明確にお得になります。KFCとしてはランチや軽食の需要を取り込みつつ、まとめ買いの促進も狙っていると考えられます。
今後の展望としては、フードデリバリー市場の成長に伴い、自社デリバリーと配達代行サービスの競争がさらに激しくなることが予想されます。配達エリアの拡大や配送時間の短縮など、サービス品質での差別化も重要な課題です。
まとめ
KFCデリバリーの2月4日からのリニューアルは、店頭価格との統一、最低注文金額の撤廃、注文可能メニューの拡大という3つの柱で構成されています。配送手数料は860円に引き上げられますが、約2,000円以上の注文では配達代行サービスよりもお得になる設計です。
フードデリバリー市場が拡大を続ける中、KFCは自社デリバリーの競争力を高めることで、プラットフォーム依存からの脱却とユーザー基盤の拡大を目指しています。消費者にとっては、利用シーンに応じて自社デリバリーと配達代行サービスを使い分けることが、最もお得な選択になるでしょう。
参考資料:
関連記事
サブウェイ63カ月連続増収の秘密、ワタミ流改革の4つの変化とは
ワタミ傘下入りから1年、サブウェイが63カ月連続で既存店売上増を達成。セルフレジ導入やスキマバイト活用など、成功の鍵を解説します。
ロッテリア54年の歴史に幕、ゼンショーの統一ブランド戦略
ゼンショーホールディングスがロッテリア全店をゼッテリアに転換。M&Aで成長してきた外食最大手のブランド統廃合戦略と、ハンバーガー市場での競争力強化の狙いを解説します。
サンマルクカフェ新業態、注文後に焼くパンで差別化
サンマルクHDが発表した注文ごとにパンを焼く新業態カフェの戦略を解説。レジ陳列廃止の狙いと、スターバックスなど競合との差別化ポイント、2030年までの成長計画を詳しく分析します。
食品消費税ゼロで外食店が身構える理由と仕入控除の落とし穴
衆院選の争点となっている食料品の消費税ゼロについて、外食店が懸念する中食との価格差拡大、仕入税額控除消失による資金繰り悪化の仕組みを詳しく解説します。
すかいらーくがM&Aで成長加速、資さんうどん内製化の狙い
すかいらーくHDが資さんうどんの買収後、メニュー内製化を進め出店拡大へ。マレーシアのしゃぶしゃぶ店買収でアジア展開も。外食大手のM&A戦略を解説します。
最新ニュース
ビットコイン7万ドル台急落、テック株売りが暗号資産に波及
ビットコインが約1年3カ月ぶりの安値となる7万2000ドル台に急落しました。米ハイテク株の売りが暗号資産市場に波及した背景と、MicroStrategyの含み損問題について解説します。
日銀の量的引き締め出遅れと円安の関係を解説
日銀のマネタリーベース縮小が米欧に比べ緩やかな理由と、それが円安に与える影響について解説します。FRB新議長候補ウォーシュ氏の金融政策姿勢にも注目が集まっています。
書店600店の在庫を一元化|返品率30ポイント削減の新システム
紀伊国屋書店、TSUTAYA、日販が出資するブックセラーズ&カンパニーが、56社603店の在庫を横断管理するデータベースを始動。返品率6割減を実現した事例と、出版業界の構造改革を解説します。
中国海警局の尖閣周辺活動が過去最多に、日中の緊張続く
2025年、中国海警局の船舶が尖閣諸島周辺の接続水域に357日出没し過去最多を更新。日本の対応策と偶発的衝突防止の課題を解説します。
中国の土地売却収入がピーク比半減、地方財政に深刻な打撃
中国の地方政府の土地売却収入が2025年も前年比14.7%減少し4年連続の減少を記録。ピークの2021年から52%減となり、不動産不況が地方財政を圧迫し続けています。