マツダ、8年ぶり刷新のCX-5に社運を賭ける背景
はじめに
マツダが世界販売で苦戦を強いられています。2025年10〜12月の販売台数は前年同期比8%減の31万台にとどまりました。米国の高関税政策が業績を直撃し、2025年4〜9月期は5年ぶりの最終赤字に転落しています。
こうした厳しい経営環境の中、マツダは8年ぶりにフルモデルチェンジした旗艦車種「CX-5」に社運を再び賭けます。累計販売450万台超を誇る最量販車種の全面刷新は、業績回復の切り札となるのでしょうか。本記事では、マツダの現状と新型CX-5の戦略的意義を解説します。
マツダの業績悪化と米国関税の影響
中間決算で赤字転落
マツダの2025年4〜9月期連結決算は、売上高が前年同期比6.5%減の2兆2,385億円、営業損益は539億円の赤字(前年同期は1,030億円の黒字)、最終損益は452億円の赤字(前年同期は353億円の黒字)でした。
この急激な業績悪化の最大の要因は、米国の自動車関税です。マツダは世界販売の約33%を米国市場に依存しており、米国向け車両の約8割を日本とメキシコから輸出しています。関税による営業利益への影響額は971億円に上り、これに円高の影響(341億円の減益要因)が加わりました。
世界販売の減少
2025年4〜9月期のグローバル販売台数は、前年同期比2万1,000台減の60万9,000台でした。欧州での1万5,000台減が目立ちますが、米国では関税発動後も前年同期比2%減の20万9,000台と比較的底堅く推移しました。
ただし、グローバル生産台数は8%減の55万5,000台に抑制されており、米国市場の不透明な状況を踏まえた慎重な在庫管理が行われています。
通期黒字確保への道筋
マツダは2026年3月期通期で営業利益500億円、純利益200億円の従来予想を維持しています。下期に巻き返すため、米国での販売台数目標を1万5,000台上積みして41万5,000台に引き上げ、1台あたり6〜10万円程度の値上げも実施する方針です。
新型CX-5の全容
8年ぶりのフルモデルチェンジ
3代目となる新型CX-5は、2025年7月に欧州で世界初公開されました。開発コンセプトは「新世代エモーショナル・デイリーコンフォート」で、日常の快適性と走る喜びの両立を目指しています。
ボディサイズは全長4,690mm、全幅1,860mm、全高1,695mm(欧州仕様)で、従来型より全長が115mm、全幅が15mm拡大されました。室内空間の拡大により、ファミリー層の取り込みを狙っています。
パワートレインの進化
新型CX-5には、2.5Lガソリンエンジンにモーターとバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドシステム「e-スカイアクティブ G 2.5」が搭載されます。燃費性能と走行性能を両立させる新世代パワートレインです。
さらに、2027年にはマツダ独自の新ハイブリッドシステム「スカイアクティブZ」の投入も予定されています。理想的な燃焼を追求するこの技術は、マツダの技術的アイデンティティを示す重要な要素です。なお、世界販売に占める日本国内比率が約10%にとどまることから、ディーゼルエンジンの刷新は見送られました。
日本市場への投入時期
欧州では2025年末から販売が開始され、日本を含むその他の市場では2026年中の発売が予定されています。日本国内での発売は2026年7月から11月頃になる見通しです。
CX-5がマツダにとって特別な存在である理由
マツダの屋台骨
CX-5は2012年の初代発売以来、世界100以上の国と地域で販売され、累計販売台数は450万台を超えています。現在もマツダの世界販売台数の約3分の1を占める最量販車種であり、まさに「屋台骨」と呼べる存在です。
マツダはCX-60やCX-80などの「ラージ商品群」に経営資源を投入してきましたが、販売の中心はあくまでCX-5です。この最量販車種のフルモデルチェンジは、ブランド全体の販売テコ入れに直結します。
競合環境の変化
しかし、CX-5を取り巻く競合環境は8年前と大きく変わっています。トヨタ「RAV4」やホンダ「CR-V」といった従来の競合に加え、中国メーカーの台頭や電気自動車(EV)の普及により、ミドルサイズSUV市場の競争は激化しています。
価格面では、ベースグレードで300万円台後半、上位グレードでは400万円台後半から500万円超になる可能性が指摘されており、コストパフォーマンスが消費者の選択に影響を与える可能性があります。
注意点・展望
新型CX-5に過度な期待を寄せることにはリスクもあります。SUV市場は成熟しており、一車種の刷新だけでブランド全体の販売を劇的に押し上げることは容易ではありません。特に、米国関税という外部環境の問題は、車種の魅力向上だけでは解決できません。
マツダは米国市場への依存度の高さという構造的な課題を抱えています。関税政策が長期化した場合、米国での現地生産拡大や、アジア・欧州市場での販売強化といった戦略の見直しが必要になる可能性があります。
新型CX-5が販売拡大の起爆剤となるかどうかは、2026年後半の日本・北米市場での初動にかかっています。
まとめ
マツダは米国関税の直撃で業績が悪化する中、8年ぶりにフルモデルチェンジしたCX-5に反攻を託しています。累計450万台超の実績を持つ旗艦車種の刷新は、ブランドの命運を左右する重要な一手です。
ただし、激化する競合環境や米国市場への高い依存度など、構造的な課題への対応も同時に求められます。新型CX-5の成功がマツダの反転攻勢の出発点となるか、注目が集まります。
参考資料:
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